「過剰在庫が倉庫を圧迫している」
「月末は必ず欠品が出て指摘される」
そこでAI在庫管理でできることから、他社の導入事例、中堅製造業向けの選び方、主要ツールの比較、失敗回避のポイントまで、社内提案で使える導入検討のロードマップを見ていきましょう。
DXの事例や機能を1冊に、「DXまるわかりガイド」全67ページ
CONTENTS
AI在庫管理とは?3つのポイント
AI在庫管理とは、在庫の見える化、入出庫の自動計測、需要予測にもとづく発注、異常検知などを自動化する仕組みです。属人化した運用を置き換え、在庫管理の負荷を大きく下げることができます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 1. 数量管理の省力化 | 画像認識・重量センサーで棚卸や入出庫の手入力・目視カウントを削減 |
| 2. 需要予測の精度向上 | 気象・販促・曜日など複数のデータをAIが解析し、需要変動を予測 |
| 3. 異常を検知して通知 | 発注推奨や滞留・欠品・偏りといった異常サインを自動通知 |
1. 数量管理の省力化
棚卸や入出庫の数量の記録は、目視でのカウントとExcelへの転記に多くの時間を取られる作業です。AI在庫管理は、画像認識やIoTの重量センサーで数量を自動で計測し、手入力を減らします。
自動化される作業
- 入出庫時の数量記録
- 棚卸のカウントとExcel台帳との照合
- 期限切れ・破損品の目視確認と写真での記録
- 発注書作成の起点となる残量判定と担当者への通知
2. 需要予測の精度向上
従来の発注では、担当者が過去の売れ行きをもとにデータを分析し、数量を決めていました。AIは販売実績・販売価格に加えて気象・イベント・販促・SNSトレンドまで学習対象にできる点が大きな違いです。過去の平均から数量を出す従来のやり方では捉えにくい突発的な需要変動も、複数のデータを組み合わせて予測します。
| 項目 | 従来の在庫管理 | AI在庫管理 |
|---|---|---|
| 使うデータ | 過去の出荷実績中心 | 実績に加え、気象・販促・カレンダー・SNSなど |
| 粒度 | 月次・カテゴリ単位が中心 | 日次・週次、拠点ごと・SKU(色やサイズ違いまで分けた品目の単位)ごとまで対応 |
3. 異常を検知して通知
従来は全SKUの動きを都度追えず、品切れや過剰在庫に気づいたときには手遅れという事態も発生していました。AI在庫管理では動きのおかしい品目をAIが拾い、アラートで知らせます。
| 検知する兆候 | 判定の考え方 | 通知後に取れる手 |
|---|---|---|
| 発注点割れ | 実在庫が安全在庫を下回った時点で検出 | 緊急発注、他拠点からの在庫振り替え |
| 滞留在庫 | 一定期間出庫がない品目を抽出してお知らせ | 値引き販売、セット販売、廃棄判断 |
| 需要の急変 | 予測値と実績のずれが、あらかじめ決めた基準を超えた品目を通知 | 発注量の手動修正、予測モデルの見直し |
| 在庫差異の異常 | 理論在庫と実在庫のズレが基準を超えた品目を特定 | 入出庫記録の遡り調査、作業手順の是正 |
月初にまとめて突き合わせても原因がわからないまま終わる、という作業から抜け出す糸口になります。
脱アナログから一元管理まで、
現場が変わった24社のリアルを公開
業種や機能ごとのDX成功事例を1冊に。自社に合うヒントがきっと見つかります。
フォーム入力1分・即ダウンロード可
AI在庫管理の操作イメージ
AI在庫管理の主要機能を、以下の無料デモ画面でそのまま操作できます。
※ 表示されているデータはすべてサンプルです。実際の動作・画面はサービスにより異なります。
AI在庫管理の導入事例3選
CASE1. AIで食材を発注し、1店舗で月最大12.5時間を削減

導入前の悩み
自動発注システムを導入した背景についてダンダダンは「酒類をメインに提供する業態では、夜のピーク後に発注業務に取りかからなければ、適正な発注量の精度を向上できず、発注作業は負担が重かった」と説明する。
株式会社ダンダダン
導入後の変化
食材の発注をAIで自動化するシステムを全77店舗(当時時点、FC加盟店を除く)に導入した。発注業務にかかる時間を、1店舗あたり最大で月間12.5時間削減している。
株式会社ダンダダン
現場で起きた主な出来事
- 2021年12月には首都圏3店舗で完全自動発注の実証を行い、選出した食材(各店舗平均67品目)の91.7%で、適正量での完全自動発注を実現した
- インフォマートのクラウドサービス「BtoBプラットフォーム受発注」に発注データを連携させる形で利用している
※ 株式会社ダンダダン「居酒屋『肉汁餃子のダンダダン』全77店舗でAI自動発注、1店舗あたり最大で月12.5時間を削減」2022年3月16日
CASE2. 自動発注を試し、1日約30分の発注作業が約2分に

実証での各店舗の発注作業(1日)
導入前の悩み
従来、ワークマンではこれらの発注業務に1日あたり約30分を費やすとともに、適切な在庫の確保やタイムリーな商品入れ替えに課題がありました。
株式会社ワークマン
導入後の変化
ワークマンの3店舗、31品目を対象に本システムのシミュレーションを行ったところ、現状の店舗棚割に即した平均在庫量を維持しながら、こまめな補充による欠品抑制が実現できるとともに、各店舗で毎朝、システムにより推奨された発注量を確認し確定ボタンを押すのみで発注作業を完了でき、約30分を費やしていた作業を約2分に短縮できることを確認しました。そして、2021年3月から2店舗への先行導入を開始しました。
株式会社ワークマン
現場で起きた主な出来事
- 在庫回転率に応じて「自動補充型」と「AI需要予測型」のアルゴリズムを動的に切り替える機能を今回新たに追加した
※ 株式会社ワークマン「ワークマンが日立との協創を通じ、先進のデジタル技術で約10万品目の発注業務を自動化する新システムを全店舗に導入開始」2021年4月19日
CASE3. 生産・在庫・輸送の計画づくりの時間を約70%削減

生産・在庫・輸送の計画立案にかかる時間
導入後の変化
AIを活用して、生産能力など40を超える制約条件を考慮し、約10個の相反するKPIを最適化した計画を立案し、季節変動により需要が大きく左右される、ニチレイ・アイスの包装氷の生産・在庫・輸送の計画立案にかかる時間を、約70%削減することを確認。また、詳細な内訳や分析が困難であったコストなどのKPIの可視化も実現した。
ニチレイ・アイス
現場で起きた主な出来事
- システムへの入力データを見直すだけで、計画修正ができるため、変化の速い需給にもより柔軟かつ迅速に対応する
- 欠品発生アラートや生産量不足アラートなどの異常検知機能も組み合わせることで、現場における運用効率を高めている
※ ニチレイ・アイス「日立製作所、ニチレイ・アイスの生産・在庫・輸送の計画立案時間70%削減」2025年10月15日
AI在庫管理の選び方3ステップ
STEP1. 既存システムとの連携範囲を確認する
予測に必要な販売実績や在庫データを毎回手作業でアップロードする運用では、新たな手間が発生します。既存の販売管理システムや基幹システムとの連携可否を最初に確認します。
連携範囲のチェックポイント
- 自社の販売管理・生産管理と標準コネクタで接続できるか
- SKUマスタ・取引先マスタ・BOM(部品表)を取り込めるか
- 予測結果を発注データとして基幹に書き戻せるか
- CSVの取り込み・書き出しで、足りない部分を補えるか
- 複数倉庫・複数拠点の在庫データを一元管理できるか
API(システム同士を自動でつなぐ仕組み)連携に対応しているか、CSVの自動取り込みが可能かで、担当者の負担は大きく変わります。
STEP2. UI・サポート体制を見る
AIの精度が高くても、現場が使わなければ元の運用に戻ります。スタッフが操作する画面は、説明書を読まずに触れるものでなければ定着しません。無料トライアルで実際の発注担当者に触ってもらい、日常操作でストレスがないかを確かめましょう。
| チェックポイント | 詳細 |
|---|---|
| UIの見極め | 発注推奨量が根拠と一緒に表示されるか Excel感覚で修正・上書きできるか SKUごとのグラフが一画面で見られるか |
| 導入支援の手厚さ | 初期のデータ整備・パラメータ調整をベンダーが伴走してくれるか |
| 運用開始後のサポート | 問い合わせの対応時間や方法(電話・メール・チャット) 予測精度が落ちた際のモデル再学習・見直しの対応 |
STEP3. 同業種の導入実績を確認する
業界ごとに特有の需要パターンがあります。そのため、同業種での導入実績があるサービスは、最初から精度が出やすい傾向があります。導入企業の一覧に、自社と近い規模・業種の事例があるかを確かめましょう。
実績のチェックポイント
- 同程度の規模での導入実績が公開されているか
- 同業種(食品・化学・部品加工・卸売など)の事例があるか
- 導入後に「在庫◯%削減」「欠品率◯%改善」といった具体数値が示されているか
- 初期費用・月額費用・データ量による従量課金の有無がわかるか
AI在庫管理おすすめサービス6選
1. 需要予測を行う在庫管理AI

統計モデルと機械学習を組み合わせ、需要予測が可能なツールです。既存の在庫管理・発注業務は維持したまま、予測を高精度化して、適正在庫を保ちたい企業に向いています。
| サービス名 | 月額料金(税込) | 機能 |
|---|---|---|
| Forecast Pro | 要問い合わせ | 統計モデルと機械学習AIを搭載。世界2万社超の実績と大量SKUの予測に強く、不規則な需要データにも対応できる予測エンジン |
| UMWELT | 要問い合わせ | 需要予測、発注最適化、シフト最適化などのAIアルゴリズムを組み合わせられるノーコード基盤。今の運用を変えずに予測の機能だけを加えられる |
| sinops-CLOUD | 要問い合わせ | 販売実績、価格、気象、イベントなどのデータをAIで分析し、需要を予測。予測値からリードタイムと安全在庫を踏まえた推奨発注量を自動で算出 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
2. 在庫の可視化ができる在庫管理AI

重量センサー付きのマットや画像認識AIで在庫の残量を計測し、棚卸や入出庫の手入力を減らすタイプです。まず現場の見える化から始めたい中堅製造業や、複数拠点の消耗品・部品の在庫を把握したい企業に向いています。
| サービス名 | 月額料金(税込) | 機能 |
|---|---|---|
| スマートマットクラウド | 要問い合わせ | 重量センサー付きマットで残量を自動計測。在庫最適化AIエージェント機能により、担当者に発注量の見直し案を継続的に提示する |
| zaico | 9,878円〜 | スマホで撮った物品を見分ける画像認識AI、伝票を読み取るAI-OCR、ためたデータから最適な発注点を出すAI在庫分析などで、在庫管理の人手を減らせる |
| スマホde在庫管理 | 要問い合わせ | スマホの内蔵カメラで動く在庫管理ソリューション。AI-OCRで商品ラベルの文字を読み取り、AI類似画像検索で登録画像から商品の特定が可能 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
AI在庫管理でよくある3つの質問
── 過去データが少なくても使えるか?
需要予測は、過去の販売データが長い期間あるほど精度が出やすくなります。ただ、データが足りない段階でも打つ手はあります。
データが少ないうちの始め方
- 新商品は予測の対象から外し、既存品目で運用を固める
- 実在庫の自動取得と発注点管理から始め、データを蓄積する
- 出荷実績の多い上位品目に限定して予測を試す
- 同業他社の導入実績の多いツールを選ぶ
── 既存の販売・生産管理システムからデータ移行はできる?
多くのサービスが、既存基幹からのデータ取り込みに対応しています。移行作業は通常、以下のステップで進めます。
データ連携の実施手順
- 対象とするデータの範囲を決める(過去の出荷・在庫実績など)
- SKUマスタ・取引先マスタの重複や食い違いを、前もって整理する
- コネクタかCSVで日次の連携を組み、テスト運用する
- 予測結果を発注データとして基幹に書き戻す運用を設計する
移行の際にはSKUマスタの統一と、欠測・異常値の除去を徹底することが精度の分かれ目になります。ベンダーがデータ整備を手助けしてくれるかも合わせて確認しましょう。
── 導入後にうまく使えなかったケースは?
導入後につまずく原因として、運用体制の不足や現場に定着しないことが挙げられます。うまく回すための体制づくりのポイントは次のとおりです。
現場定着のためのポイント
- 主要SKUから段階的に適用範囲を広げる
- 発注担当者の裁量を残し、AIの推奨を上書きできる運用にする
- 在庫回転日数・欠品率など効果指標を月次でモニタリングする
- ベンダー・情報システム部門・現場の3者で、月1回の振り返りの場を設ける
- マスタ整備の責任者を社内に置き、データ品質を継続的に維持する
うまくいった例では、まず主要SKUに絞ったPoC(本格導入の前に小さく試す検証)で効果を出し、その数値を根拠に全社展開へ進めるパターンがよく見られます。一気に全SKUに広げると精度の検証が追いつかず、現場の信頼を失いやすくなります。