「書類の転記ミスをなくしたい」
「昔OCRを試したけど、精度が悪かった」
そこでAIデータ入力で任せられる作業から導入事例、中小企業向けの選び方、役割別のおすすめツールまで、手動の転記作業を減らす段取りを見ていきましょう。
AIデータ入力の課題を解決する現場向けシステムとは?
AIデータ入力とは?改善できること
AIデータ入力とは、紙やPDFの書類をAIが読み取り、必要な項目を抜き出してシステムへ登録する仕組みです。人が書類を見ながら打ち直していた作業を、AIが引き受けます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 1. AIに任せられる4つの作業 | 読み取り・項目の振り分け・表記の統一・システムへの登録をAIが受け持つ |
| 2. AIでデータ入力をするメリット | 入力の時間や打ち間違いが減り、少ない人数でも締めを早められる |
| 3. 人が確認すべきところ | 金額や品番など、間違えると請求に響く項目は人の目で確かめる |
1. AIに任せられる4つの作業
これまでのデータ入力は、目視で顧客名や数量を探し、システムの欄に打ち込むやり方でした。AIデータ入力では、書類のどこに何が書いてあるかをAIが判断して登録します。
| 作業 | AIがすること |
|---|---|
| 書類の読み取り | 紙やPDF、写真の書類から文字を読み取ってデータにする |
| 項目の振り分け | 読み取った文字を、顧客名・品番・数量などの項目に分ける |
| 表記の統一 | 顧客台帳や商品マスタと照らし合わせ、名称やコードをそろえる |
| システムへの登録 | 整えたデータをCSVに書き出すか、システムへ登録する |
従来のOCR(書類の文字を読み取ってデータにする技術)は手書きや書式がバラバラな書類には弱い技術でした。AIを組み込んだAI-OCRなら、書式がそろっていない注文書や、クセのある手書き文字でも前後の文脈から推測して読み取れます。
2. AIでデータ入力をするメリット
入力をAIに任せると、時間やミス、人手の悩みがまとめて軽くなります。現場で起きる変化は、次の4つに整理できます。
| メリット | 現場で変わること |
|---|---|
| 入力時間の削減 | 人がデータを打ち込む作業が減り、結果を確かめるのが中心になる |
| 入力品質の安定 | 打ち間違いや転記漏れを減らせる |
| 人件費の削減 | 入力にかけていた人手を減らし、少ない人数でも業務を回せる |
| 処理スピードの向上 | 読み取ったデータをすぐに次の業務へ回せ、処理の遅れを防げる |
3. 人が確認すべきところ
AIの読み取り精度は上がったとはいえ、100%ではありません。そのため運用は「AIが下読みし、人が確認して直す」形になります。多くの製品は、AIが自信を持てなかった文字に色を付けて表示するため、人はその箇所だけを確認すれば済みます。
人の目で確かめたい項目
- 金額・数量・品番など、請求額に直結する数字
- AIが「読み取りに自信がない」と印を付けた欄
- 二重線や書き足しで訂正された手書きの箇所
- 初めて取引する会社から届いた、見慣れない書式の書類
AIデータ入力の課題を解決する現場向けシステムとは?
AIデータ入力の導入事例
CASE1. パレット伝票の入力を、ある工場で約74%省力化

ある工場の伝票入力の工数
導入前の悩み
伝票情報をシステムへ手入力しており、ある工場では月200時間の業務が発生していた……管理精度は高いものの、入力ミスは依然として発生しており、棚卸時の差異確認など、追加工数が発生していた。
花王株式会社
導入後の変化
「route-D AIデータ入力」の導入や業務フローの改善を実施し、ある工場において月147時間、約74%の省力化を実現しました。
花王株式会社
現場で起きた主な出来事
- 伝票をデータ化したことで、業務の集約性やデータ保全性も向上した
※ 花王株式会社「花王株式会社、『route-D AIデータ入力』を導入し帳票のシステム入力工数を70%以上削減」2026年6月30日
CASE2. FAX注文の入力時間が半分、人手も1〜2人で回る形に

受注業務の作業時間
導入前の悩み
導入前の受注業務では、FAXによる受注が全体の約30%を占め、手作業での受注データ入力にかなりの作業時間をかけていました……さらに、基幹システムに入力する際には、コードの記入、入力、見直しと最低3人の人員が必要で、ミスやトラブルがあった場合には更なる人員が必要でした。
営業統括本部 特販営業部
導入後の変化
現在では全体で月間約3万枚のFAXのうち、4000〜5000枚を「発注書AI-OCR(invox)」で基幹システムに取り込んでいます。手作業による入力が大幅に削減されて作業時間は半分になり、これまで3人以上の人員が必要だったのが、実質1〜2人でも対応できるようになりました。
営業統括本部 特販営業部
現場で起きた主な出来事
- 業務担当者から「このFAXはOCR処理できるのでは」という提案をいただく機会が増え、デジタル化に前向きな風潮を作ることができた
- AIの学習効果を積極的に試す人も多くなり、EDI比率は導入前の70%から80%に向上した
※ 株式会社シモジマ「シモジマ、『発注書AI-OCR(invox)』導入で手入力をなくし、受注業務にかかる時間を半減」2025年6月10日
CASE3. 生成AIで発注の入力を試し、1日約75分が15分に

実証での発注内容の入力時間(1日あたり)
8割削減
導入後の変化
車両手配や実運送体制管理簿の作成につながる情報蓄積に必要な、荷主からの発注内容を配車管理システムに入力する作業を、本システムのβ版にて代替しました。その結果、従来手作業で1日あたり約75分かかっていた業務が15分で完結可能になり、当該業務にかかる時間を8割削減することに成功しました。
ハコベル株式会社
※ ハコベル株式会社「ハコベル、生成AI活用の『AIデータコンバーター』で社内の帳票データ入力業務時間の80%削減に成功」2026年5月15日
AIデータ入力の課題を解決する現場向けシステムとは?
中小企業向けAIデータ入力の選び方
STEP1. 入力したい書類の種類で絞る
同じデータ入力でも、自社の職人が書く報告書と、取引先から届く注文書では、合う仕組みが違います。まずはAIで入力したい書類を決め、次の表から候補を絞り込みましょう。
| 入力したい書類 | 向いているツール | その仕組みが得意なこと |
|---|---|---|
| 手書きの作業報告書・点検表 | 手書きに強いAI-OCR | 癖のある手書き文字を読み取り、データに変えられる |
| 取引先から届くFAXの注文書・納品書 | 受発注に特化したAI-OCR | 注文書を読み取り、商品マスタと照らして受注データにできる |
| 仕入先からの請求書・領収書 | 請求書の読み取りサービス | 読み取った請求書を、支払いや会計の処理につなげられる |
| 枚数は少ないが書式がばらばらの書類 | 生成AI | 書式が違っても、必要な項目を文脈から抜き出せる |
| 営業担当が集めた名刺 | 名刺管理サービス | 名刺を撮影するだけで、社名や連絡先を顧客リストに登録できる |
STEP2. 手書きをどこまで正確に読めるかを確認
各社が公表する認識率は、用意したデータでの測定値です。自社の書類でもそのまま出るとは限りません。実際の書類でトライアルを行い、次の観点を確かめましょう。
| 確認する観点 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 手書き文字 | 字のクセが強い職人の報告書を、実際に何枚か読ませて誤読の数を数える |
| 書式の違い | 取引先ごとに違う注文書を、事前の設定なしでどこまで読めるか |
| 読み取りにくい記入 | 枠からはみ出た数字、訂正線、チェック欄に対応しているか |
| 確認画面 | 自信の低い文字を色分けし、人がすぐ見つけられる作りか |
| 学習機能 | 人が直した内容を覚え、使うほど読み間違いが減っていくか |
トライアルでは、きれいな書類より普段困っている読みにくい書類を優先して試すのがコツです。
STEP3. 既存システムへの連携方法を確認
読み取ったデータを既存システムに流せず、結局手で打ち直すなら、打ち直しの手間が残ります。今の販売管理や会計ソフトへの連携方法を確認しておきましょう。
1. CSVで書き出して取り込む
多くのツールが対応する方法です。取り込み画面が求める列の並びに合わせて出力できるかを見ておきます。
2. API連携
API(システム同士が自動でデータを受け渡す仕組み)でつなぐと、読み取った結果がそのまま登録されます。使っているツールが連携先に入っているかを確かめます。
3. RPAで画面に打ち込ませる
RPAは、決まった手順の画面操作をロボットが代わりに行う仕組みです。CSVもAPI連携もできない場合の手段になります。
システムに詳しい社員がいない場合は、導入時に取り込み設定まで手伝ってくれるサポートがあるかも見ておきましょう。
STEP4. 無料トライアルで確認の手間を測る
AIデータ入力で減るのは打ち込みの時間で、読み取り結果を確かめる時間は残ります。確認と修正に何分かかるかを実際に計っておくと、導入効果がどれだけあるのかを、根拠を持って説明できます。
| 測る項目 | 測り方 |
|---|---|
| 1枚あたりの確認時間 | いつもの書類を20〜30枚読ませ、確認し終わるまでの時間を計る |
| 直した項目の数 | 金額・品番・顧客名など、手で直した欄の数を書類ごとに記録する |
| 月あたりの費用 | 毎月の枚数を料金表に当てはめ、超過分の料金まで含めて計算する |
AIデータ入力ツールおすすめ13選
1. 汎用型AI-OCR

手書きの伝票や報告書、書式の違う帳票を読み取り、CSVなどに書き出すタイプです。書類の種類を選ばないため、社内のさまざまな入力作業をまとめて任せたい会社に向いています。読み取り枚数に応じた料金体系が多いため、毎月の枚数を数えてから費用を比べましょう。
| サービス名 | 月額料金(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| AIよみと~る | 33,000円〜 | 手書き帳票の読み取りに対応したAI-OCR。NTT東日本が提供し、スキャナーがあれば初期費用なしで始められる。最低利用期間は12カ月 |
| LINE WORKS PaperOn | 33,000円〜 | 非定型や手書きの帳票に対応し、スマホで撮った書類をそのまま読み取れる。抜き出したデータはCSVで出力できる。年額契約で月800回まで |
| DX Suite | 44,000円〜 | 読み取り精度99.6%をうたい、手書きの書類からFAX、写真までデータ化できる。項目の設定、読み取り結果のチェックもAIが自動で行う |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
2. 生成AI型AI-OCR

読み取る範囲を細かく設定しなくても、欲しい項目を日本語で指示すれば抜き出してくれるタイプです。取引先ごとに書式がばらばらで、帳票の設定を作りきれない会社に向いています。
| サービス名 | 月額料金(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| ジンベイGenOCR | 27,500円〜 | 生成AIが帳票のレイアウトや文脈を読み取り、書式の違う書類からも必要な項目を抜き出す。帳票フォーマットごとの設定や事前の学習データが不要 |
| PATPOST | 33,000円〜 | 生成AI-OCRが文書から指定した項目を抜き出し、CSVで外部システムへ渡せる。手書きや縦書きも読め、容量無制限の文書保管も |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
3. 書類特化型

注文書・請求書・名刺など、特定の書類に特化しその後の業務までつなげるタイプです。受注の登録や支払いの処理、顧客リストへの登録など、書類ごとの業務に合わせた機能がそろっています。
| サービス名 | 月額料金(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| zaico受注管理 | 9,878円〜 | 受注情報を一元管理できるサービス。FAXやPDFの注文書を読み取り、在庫の情報とひも付けて管理できる |
| 発注書AI-OCR | 要問い合わせ | FAXやPDFの注文書に特化したAI-OCR。マスタと照らして商品を特定し、基幹システムへつなげる。読み取りと同時に返信FAXも送れる |
| invox受取請求書 | 1,078円〜 | 請求書を数秒でデータ化し、仕訳や振込データの作成までつなげられる。50種類以上の会計システムと連携し、オペレーターの確認付きも選べる |
| Bill One請求書受領 | 要問い合わせ | 請求書をオンラインで一元管理できるサービス。請求書を紙やPDFなど形式を問わず代理で受け取り、AIとオペレーターの組み合わせでデータ化する |
| Eight Team | 21,780円〜 | 中小企業向けの名刺管理サービス。名刺をスマホで撮るだけでデータになり、同じ人の名刺は1つにまとめられる。アカウント料は10名まで無料 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
4. RPA

人がパソコンで行うクリックやキーボード入力を記録し、ソフトのロボットに代わりに実行させるツールです。AI-OCRが出力したデータを読み込み、自社システムの入力画面へ1件ずつ打ち込む作業を任せられます。システムがCSV取り込みに対応していない場合や、入力件数が多い場合に検討しましょう。
| サービス名 | 料金(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| Power Automate | 1名あたり月額2,473円〜 | 画面操作を記録して、Excelやシステムへの転記の手順を作れる。無人での実行などにはより上位の有料プランが必要 |
| RoboTANGO | 1名あたり月額71,500円〜 | パソコン作業を録画するだけでロボットを作れ、AI-OCRとの連携にも対応する。1つのライセンスを複数のパソコンで使える。別途初期費用が11万円必要 |
| WinActor | PC1台あたり年額1,098,680円〜 | マウスでフローを描いて自動化の手順を作れる。請求書処理などのシナリオのテンプレートもそろう。国産で画面もマニュアルも日本語 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
AIデータ入力でよくある質問
── 費用対効果は?
費用に見合うかは、削れる作業時間と比べて判断します。例えば次のように試算できます。
費用対効果の試算例
- 1日35枚の書類で、1枚あたり2分短縮できれば、1日約70分の削減
- 月20日稼働なら、月約23時間の削減
- 事務員の時給を1,500円とすると、月約35,000円分の人件費に相当
この額がツールの月額料金を上回るかで判断します。自社の枚数と1枚あたりの時間を当てはめて提案に使ってください。
── 書式のない手書きの報告書も読み取れる?
数年前のOCRで手書きが読めなかった会社でも、今のAI-OCRなら癖のある字まで拾えるケースが増えています。ただし、精度をもう一段上げたいなら、報告書の書き方と撮り方を少しそろえるのが近道です。
手書き報告書の読み取り精度を上げる工夫
- 数量や品番の欄を枠で区切り、1マスに1文字ずつ書いてもらう
- 鉛筆ではなく、黒のボールペンで書くルールにする
- スマホで撮るときは、明るい場所で真上から撮る
- 現場ごとにばらばらの書式は1種類にまとめる
自社の職人が書く報告書なら、最初からスマホで入力してもらう方法も検討に値します。読み取りの工程そのものがなくなるため、事務所側の手間は大きく減ります。
── 読み取りミスはどれくらい出る?
ミスの出方はツールと書類の状態で大きく変わり、ゼロにするのは難しいのが実情です。ミスは出るものと考え、確認する場所をあらかじめ決めておくのが現実的な運用です。間違いが起きやすい書類と対策は次のとおりです。
| ミスが出やすい書類 | 起きやすい間違い | 対策 |
|---|---|---|
| かすれたFAX | 8と3、1と7を取り違える | 金額と数量の欄だけは必ず人が見る |
| 訂正のある手書き | 消した数字と書き直した数字を両方拾う | 訂正印や二重線のある書類に印を付けて確認する |
| 初めての取引先の書類 | 項目の位置がわからず別の欄に入れる | 最初の数回は全項目を確かめ、読み方を覚えさせる |
誤読の恐れがある項目を目立たせて知らせるツールを選べば、確認する範囲を絞り込めます。
── 通常の生成AIで代用できない?
1日に数枚なら、ChatGPTなどの生成AIに書類を読ませる方法でも回ります。ただし毎日数十枚をシステムへ入れる業務には向きません。違いは次のとおりです。
| 比べる点 | 生成AI | AIデータ入力ツール |
|---|---|---|
| 読み込み方 | 書類を1枚ずつ貼り付けて指示する | まとめて読み込み、同じ設定で処理する |
| 出力の形 | 同じ指示でも形が変わることがある | 決めた形式で出力できる |
| 結果の確認 | 誤読の箇所がわかりにくい | 画像と結果を並べ、怪しい欄を知らせる |
| システムへの登録 | 出てきた文字をコピーして貼り付ける | CSVや連携でそのまま取り込める |
| データの扱い | 入力内容の扱いを利用規約と設定で確認する必要がある | 業務利用を前提にしたセキュリティ対策を備える |
まず生成AIで自社の書類がどこまで読めるかを試し、手応えがあれば専用ツールを検討する、という順番で進める手もあります。