「このラインがまた止まった……」
「定期巡回とベテランに頼っている」
突発的な故障の頻度が増えると、人手がすぐに足りなくなります。そこで設備保全管理DXの全体像から他社の成功事例、DX化の導入ステップ、自社に合った設備保全管理DX向けのツールまでを、一つひとつ紐解いていきましょう。
DXの事例や機能を1冊に、「DXまるわかりガイド」全67ページ
設備保全管理DXとは?実現できること
設備保全管理DXとは、SaaS、IoTセンサー、AI、クラウド技術を活用して、設備の状態監視から故障予測、保全計画の最適化まで、業務全体を大幅に改善する取り組みのことです。
現場の実例としては、振動センサーが24時間365日設備の異常振動を監視し、AIが過去のデータパターンから「3日後に軸受けが故障する可能性が80%」といった具体的な予測をしています。その情報を担当者がスマホで確認して、最適なタイミングで部品交換を実施できます。
| 項目 | DX導入前の設備保全 | DX導入後の設備保全 |
|---|---|---|
| 記録 | 紙やExcelでの記録管理 | クラウド上でのリアルタイムデータ共有 |
| 監視 | 定期的な巡回点検 | センサーによる24時間連続監視 |
| 予測 | 経験と勘に頼った故障予測 | AIによる高精度な故障予測 |
| ノウハウ | 属人的 | デジタル標準化 |
| 保全方式 | 事後保全中心 | 予知保全中心 |
1. 従来の設備保全との大きな違い
これまでの設備保全では、ベテラン技術者が機械の音や振動を五感で感じ取り、「そろそろ危ないかもしれない」という経験則で判断していました。点検記録は紙の帳票に手書きで記入され、月末にExcelに転記する作業をしている企業もあります。
設備保全管理DXでは、このようなアナログで属人的な業務プロセスが、データドリブンな意思決定プロセスへと変わります。例えば、温度、振動、電流値といった設備の状態データが自動的に収集され、過去の故障パターンと照合することで、微細な異常も検知できるようになりました。
2. 突発故障を未然に防ぐ予知保全
予知保全とは、設備の劣化傾向を継続的に監視し、故障が起きる前にメンテナンスする保全手法です。従来の時間基準保全(TBM)では、まだ使える部品を定期交換で廃棄したり、想定より早く劣化した部品が突発故障を引き起こしたりすることがありました。
予知保全システムでは、振動解析や油分析、サーモグラフィーといった診断技術をIoTセンサーで自動化します。例えば、モーターの振動データを「1秒間に1,000回」という高頻度で取得し、周波数解析によって軸受けの摩耗進行度を数値化し、具体的な交換推奨レベルを予測してくれます。
3. 属人化したノウハウを資産に変える
設備保全管理DXでは、「あの人ではないと直せない」といった暗黙知を形式知へと変換し、組織共有の資産にします。ARグラスを装着したベテランの視点を録画し、「ここの音を聞き分ける」「この部分の色の変化に注目」といった映像で共有する動画マニュアルは、その一例です。
AIによる診断支援では、過去の故障事例と対処法をデータベース化し、症状を入力すると最適な対処法を提案するシステムを構築できます。デジタル作業指示書では、タブレット上で手順を確認しながら作業を進め、完了項目をチェックすることで作業品質を標準化してくれます。
脱アナログから一元管理まで、
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設備保全管理リスク診断
設備保全管理DXが「うちの会社には本当に必要なのか」と疑問に思うかもしれません。以下のリスク診断で、現在の設備保全管理の課題を見える化してみましょう。16点以上は要対策、23点以上は早急対応となり、設備保全管理DXの導入を検討すべきタイミングです。
あなたの工場・施設の保全管理が抱えるリスクを可視化します
※ 実際の状況は条件によって異なる場合があります。本診断結果はあくまでも目安としてご利用ください。
設備保全管理DXの成功事例3選
CASE1. 遡れなかった過去の作業を、現場ですぐ確かめられる形に

導入前の悩み
1つは顧客管理が十分にできていなかった点です。お客様に「昔やってもらったけど」と言われた場合に、情報を遡れないため何のことかわからないことがありました。申し訳ないと思いつつも住所を再度聞き直すこともありました。
代表 浅岡様
導入後の変化
顧客情報の管理・共有がすごく楽になるところです。案件ごとに情報や資料の保存・確認も可能で、現場でプロワンを見ればすぐに確認できるのが良いです。
代表 浅岡様

現場で起きた主な出来事
- 現場作業者がスマホですぐに次の現場の情報がわかるので、便利だと感じている
- 住所情報からそのままマップを開ける機能は従業員に好評
- 予定のダブりがなくなって、担当者の割り当てがすぐにできる
※ プロワン導入事例「株式会社浅岡メンテナンス」2025年7月
CASE2. 施工履歴を顧客にひも付け、10年点検を提案できる形に

導入前の悩み
特に顧客情報は単なるリストでしかなく、「このお客様に10年前に設置したエアコンの交換提案をしよう」と思っても、過去の膨大な資料をさかのぼる必要がありました。事実上、戦略的な営業活動ができていませんでした。
東京支店 石川様
導入後の変化
おかげで、これまで単なるリストでしかなかった顧客情報が、案件と紐づけて管理できるようになりました。お客様ごとの施工履歴が簡単に確認できるので、「そろそろ10年経つので点検はいかがですか」といった提案型の営業も可能です。
東京支店 石川様
現場で起きた主な出来事
- 最近連絡がないお客様の把握もできるようになり、既存顧客のフォロー体制が格段に向上した
- お客様からの引き合いから見積作成、受注、施工完了まで、一連の業務フローをすべてプロワンで管理している
- 東京と神戸で同じ画面を見ながら状況確認ができるようになったのは革命的だった
※ プロワン導入事例「株式会社太陽プラント」2025年12月
CASE3. 修理依頼をフェーズで分け、差配が要る案件が一目で

導入前の悩み
月400件ものメンテナンス案件があると、どうしても管理が煩雑になります。実際、「部品を注文したと聞いたのにまだ来ない」「3カ月前に依頼したのに連絡がない」といったお客様からのご連絡で、対応が滞っていたことに気づくケースも稀にありました。
取締役常務 呉屋様
導入後の変化
メンテナンス部では案件の進捗管理に使っています。お客様から依頼が来たら案件を作成して、フェーズで分けて管理しています。「担当者未定」といったフェーズを設けることで、差配が必要な案件が一目でわかるようになりました。
取締役常務 呉屋様
現場で起きた主な出来事
- 業務用エアコンを設置した2年後にアラート通知が出るよう設定している
- 場所や担当者を問わず、誰もが常に最新の統一された価格にアクセスできるため、業務の属人化が解消され、精度の高い見積もりを迅速に作成できる体制が整った
※ プロワン導入事例「アゲダ空調食品設備株式会社」2025年12月
設備保全管理DXを始める3ステップ
STEP1. 現場の課題と目的を明確化
設備保全管理DXの第一歩は、「なぜDXが必要なのか」を明確にすることです。そのため、実施すべきは現場の保全業務の棚卸しになります。保全担当者が1日をどのように過ごしているか、1週間の業務時間記録を取ってみましょう。「点検に3時間、記録作成に2時間、会議に1時間……」といった具体的な数字がわかります。
| チェック項目 | 記入例 |
|---|---|
| 突発故障の発生頻度と影響度 | 月何回、1回あたりの損失額 |
| 保全作業の内訳 | 事後保全、予防保全、改良保全の比率 |
| 保全コストの内訳 | 人件費、部品費、外注費の割合 |
| 保全KPIの現状値 | MTBF、MTTR、稼働率など |
| 技能レベル別の人員構成 | ベテラン、中堅、若手の比率 |
STEP2. スモールスタートで費用対効果を検証
全設備にセンサーを設置するような大規模投資は避けて、最も効果が期待できる1つの設備やラインから始める「スモールスタート」が、設備保全管理DXの鉄則です。特に故障頻度が高い、または故障時の影響が大きい設備を選ぶことで、短期間で成果を実感できるでしょう。
スモールスタートの進め方
- 重要度と実現可能性で評価し、最適な1設備を選定する
- 既存のセンサーデータや点検記録を収集し、故障パターンを分析する
- 必要最小限の機能でシステムを構築し、実際の運用でテストする
- 定量的な効果を測定し、システムの調整と最適化を実施する
STEP3. 全社展開に向けた体制づくり
全社展開のフェーズでは、DX推進チームの組織化をして、IT部門と現場の橋渡し役となる「DX推進リーダー」を任命しましょう。部門横断的なプロジェクトチームを編成すると、技術導入だけでなく、外部ベンダーとの窓口も一本化できて、スムーズな導入が可能になります。
| 期間 | 実施内容 | 達成目標例 |
|---|---|---|
| 1期(6カ月) | 主要設備へのセンサー設置、基本システム構築 | 主要設備の稼働率5%向上 |
| 2期(6カ月) | 全設備への展開、AI診断機能の追加 | 突発故障50%削減 |
| 3期(12カ月) | 保全業務の完全デジタル化、予知保全の本格運用 | 保全コスト20%削減 |
設備保全管理DXにおすすめのサービス
1. 紙の点検表から脱却する設備保全管理システム

日々の点検記録や作業報告書をデジタル化する保全管理システム(CMMS)は、設備保全管理DXの基盤となる重要なツールです。点検スケジュールの自動生成、部品在庫との連携、作業指示書の配信、KPIの自動集計など、保全業務全体を効率化する機能を備えています。
スマホやタブレットでの入力に対応していることは必須条件で、作業現場で手袋をしたまま操作できるか、オフライン環境でも使えるかといった、現場の使い勝手を確認しましょう。音声入力やバーコード読み取り機能があれば、さらに作業効率が向上します。
| サービス名 | 月額料金(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| MONiPLAT | 16,500円〜 | 20設備まで永久無料。TBM・CBMを一元管理できる点検DXの入口として試しやすい |
| ミロクルカルテ | 55,000円〜 | 補修業務・予備品在庫・コストを見える化。QRコードで設備情報にすぐアクセスできる |
| MENTENA | 110,000円〜 | 保全計画〜履歴まで包括管理。10IDまで含むサブスク型で中堅製造業に対応 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
2. 実績豊富なIoT連携予知保全システム

IoTセンサーで設備の振動・温度・電流などを継続計測し、AIが正常パターンと照合して故障の予兆を自動検知するシステムです。「壊れてから直す」事後保全から「壊れる前に気づく」予知保全への転換を支援します。
IoT連携予知保全システムには「振動診断に特化したタイプ」「画像解析を活用したタイプ」「複合的なセンサーデータを統合分析するタイプ」などがあります。月数百件規模の設備を管理する中堅〜大手製造業での導入が加速しています。
予知保全システムを選ぶポイント
- 故障予測の的中率などの診断精度
- 故障何日前に検知できるか
- 回転機械、静止機器、制御機器などの対応範囲
- センサー設置から運用開始までの期間
- 24時間対応、オンサイト対応の有無などのサポート体制
- 将来的な機能追加やカスタマイズの柔軟性
| サービス名 | 月額料金(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| Maintenance Station | 要問い合わせ | 保全作業の計画・実績・突発故障対応データを蓄積し、設備をキーにした直感的なUIで定型業務を省力化。IoTデータと組み合わせた予知保全にも対応 |
| eServ | 1名あたり12,100円 | 25年超の実績を持つクラウド型CMMS。「やりたいことをシンプルに、見やすく、使いやすく」をコンセプトに、国内外360サイト・5,000ユーザーが利用する業種を問わない汎用システム |
| UNIVEAM4 | 要問い合わせ | 約580社の導入実績を持つ総合保全管理システム。TBM・CBMによる計画保全に対応し、多言語対応と高いカスタマイズ性で海外拠点を含む統一管理を実現 |
| SmartF | 要問い合わせ | IoTセンサーで稼働状況をリアルタイム監視し停止原因を自動集計。スモールスタートで段階拡張可能 |
| SUKKHA | 要問い合わせ | IoTセンサーで設備データをリアルタイム収集。故障予兆の可視化とアラート通知を実現 |
| CollaboView Factory | 要問い合わせ | SCSKのAI×IoTで音・振動データを分析。既設センサーに後付けでき改造不要 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
3. 現場作業を支援するスマートグラス

AR(拡張現実)技術を搭載したスマートグラスは、ハンズフリーで情報確認や遠隔支援を受けられるツールです。選定時は「バッテリー持続時間、装着時の快適性、防塵防水性能」などを重視しましょう。長時間の装着でも疲れにくい軽量モデルがおすすめです。
特に両手を使う作業が多い保全現場では、その真価を発揮します。スマートグラスの視界には、設備の配線図や過去の故障履歴、作業手順書などが表示されますし、グラスに搭載されたカメラで現場の様子を共有し、遠隔地の専門家からリアルタイムでアドバイスを受けることも可能です。
| サービス名 | 月額料金(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| RealWear Navigator 500 | 要問い合わせ | 完全音声操作のハンズフリー産業用スマートグラス。防爆認証取得で危険区域の作業にも対応 |
| MOVERIO BT-45CS | 要問い合わせ | エプソン製両眼シースルー型。IP52防水・MIL-STD-810H準拠の耐久性。AR手順書と遠隔指示に対応 |
| Vuzix M400 | 買い切り価格1,499.99ドル | 産業用スマートグラスとして世界的に最も豊富な導入実績。IP67防水防塵で片眼OLEDを採用 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
設備保全管理DXで業務効率化と人材定着へ
設備保全管理DXは、単なる流行りの概念ではありません。人材不足と設備老朽化という避けられない課題に対する、現実的な解決策です。現場の声に耳を傾け、一緒に課題を解決していく姿勢こそが、設備保全管理DXの成功につながります。