「他社のペーパーレス化の事例を参考にしたい」
「実際にどのような効果が出るのか?」
そこで、ペーパーレス化で解決できる5つの課題と、課題別のペーパーレス化の10社の事例、よくある失敗パターンをまとめました。
DXの事例や機能を1冊に、「DXまるわかりガイド」全67ページ
CONTENTS
ペーパーレス化で解決できる5つの課題
紙運用が抱える非効率は、コスト・時間・情報共有・ガバナンス・業務品質という5つの領域に広がっています。ペーパーレス化は、これらをまとめて解消する打ち手です。
| ペーパーレス化の効果 | 詳細 |
|---|---|
| 1. コスト削減 | 印刷費・製本費・郵送費に加え、保管スペースや外部倉庫のコスト、書類の仕分け、発送にかかる人件費を削減する |
| 2. 時間短縮 | 手入力・回覧・押印待ち・ファイリングといった紙作業の工数が大幅に圧縮され、コア業務に時間を振り向けられる |
| 3. 即時共有 | ファイル名・日付・取引先名などで書類を検索できて、場所を問わず必要な情報にアクセスできる |
| 4. 法令対応 | 電子帳簿保存法やインボイス制度への対応基盤が整い、書類の紛失や信用力低下といったリスクを削減される |
| 5. 品質向上 | データのリアルタイム分析による異常の早期発見や、資料の表現力向上など、業務の質そのものが引き上がる |
1. コスト削減
紙ベースで業務を進めている企業は、印刷費や郵送費を無駄にしていますし、さらに次のような隠れた人件費が積み上がった状態です。これらはペーパーレス化で削減できます。
| 業務項目 | 月間工数(目安) | 見落とされがちなコスト |
|---|---|---|
| 請求書の仕分け・回覧 | 30〜50時間 | 担当者の人件費 |
| 書類の保管・検索 | 15〜25時間 | 担当者の人件費、保管スペースの賃料 |
| 押印のための出社 | 5〜15時間 | 担当者の人件費、交通費、機会損失 |
2. 時間短縮
紙業務の最大のボトルネックは、待ち時間です。「承認印をもらうために出社する」「誰の机で止まっているかわからない回覧がある」こうした待機が組織全体の意思決定を遅らせます。これを電子承認に切り替えれば、スマホ1台で承認が完結します。
3. 即時共有
紙の書類は「どこにあるか」を知っている人しか取り出せず、担当者不在のときに業務が止まります。電子化すれば、取引先名や日付で誰でも数秒で目的の書類を呼び出せ、在宅勤務や出張先からも同じスピードで参照できます。
4. 法令対応
2024年1月、改正電子帳簿保存法が完全義務化されました。電子で受け取った請求書や領収書は、電子データのまま一定の要件を満たして保管する必要があります。求められる主な保存要件は、次の3点です。
改正電子帳簿保存法の保存要件
- タイムスタンプの付与や訂正・削除履歴が残るシステムなど、改ざんを防止する仕組み
- 取引年月日・金額・取引先で書類を検索できる体制
- ディスプレイやプリンタの備付けと、システム概要書などの整備
取引先からメールやクラウドサービス経由で届く書類を印刷してファイリングする運用は、これらの要件を満たさず法的に認められません。ペーパーレス化は「やりたいかどうか」ではなく「やらなければならない」状況に変わっています。
5. 品質向
電子化された書類は、誰がいつ承認・修正したかの履歴がデータとして残ります。これにより不正の抑止やミスの早期発見につながり、過去の処理データをもとに業務改善のPDCAを回せるようになります。
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ペーパーレス化の事例(コスト削減)
CASE1. 電子報告書でムダな移動コストをゼロに

株式会社佐々木プラントは、紙の報告書の持参忘れや、図面受け取りのために事務所へ戻る「移動のムダ」が多発していました。ペーパーレス化により現場で完結するフローを構築し、交通費や移動時間を大幅に削減しています。
| Before | After |
| 報告書の持参忘れで、遠い現場への再訪問が発生していた | 電子報告書により再訪問がゼロになった |
| 図面をコピーして紙で手渡ししていたため、事務所へ戻る必要があった | クラウドで図面を確認可能になり、事務所への往復移動がなくなった |
| 人によって書類のフォーマットが全然違っていた | フォーマットを統一し、転記作業を削減した |
CASE2. 業務効率化によって残業代を抑制

株式会社ソーデン社は、顧客システムと自社システムへの二重入力や、配送員が持ち歩く「紙の束」による情報反映の遅れが課題でした。デジタル化により、残業時間の削減という形でのコストカットを実現しています。
| Before | After |
| 二重入力が発生し、事務作業に多大な手間を要していた | システム統合により二重入力が解消、、事務員の入力・集計工数を削減した |
| 複数のシステムを現場担当者が使いこなせず、紙の束を持って配達していた | 現場アプリでの報告により、事務作業の効率化と残業時間の削減につながった |
| 売上計上の作業での情報反映の遅れ | 各拠点の状況を複数人で情報共有し、リアルタイムに可視化した |
ペーパーレス化の事例(時間短縮)
CASE3. 半日かかっていた書類探しを解消

株式会社大阪マルカンは、膨大な紙のマニフェスト管理により、膨大な書類を一枚一枚めくって探すという、非効率な作業が発生していました。デジタル化と検索機能の活用により、事務作業の劇的な効率化とコストカットを実現しました。
| Before | After |
| 書類探しに半日を要し、顧客を待たせていた | デジタル検索により数分で完了、顧客へのレスポンス速度も向上した |
| アナログな業務が重なり、多大なストレスと事務負担が生じていた | 徒労感から解放され、業務も効率化した |
| 事務作業に追われ、売上を伸ばすための施策や組織改善に時間を割けなかった | 浮いた時間で売上120%成長を実現し、組織全体の最適化が進んだ |
CASE4.写真管理アプリで直行直帰の働き方へ

株式会社フロンティアは、写真アップロードのための帰社対応や二重転記の発生といった負担が続いていました。ペーパーレス化で現場完結型のフローを構築し、直行直帰を実現。売上の可視化も進んでおり、人材定着とさらなる成長を目指しています。
| Before | after |
|---|---|
| 報告書に載せる現場写真アップロードのために帰社が必要だった | 現場で写真をアップロードできるようになり、直帰できる体制になった |
| 見積書から毎回転記して依頼書を作成していた | 見積書のデータから手配書をスムーズに作成、二重入力がなくなった |
| 集計データに基づいた客観的な考察ができていなかった | ダッシュボードによる売り上げ可視化で、売り上げ減少の原因追及した |
ペーパーレス化の事例(即時共有)
CASE5. 情報管理を一元化しリアルタイム共有へ

真弓興業株式会社は、紙とExcelを中心とした書類管理で情報の行き違いや書類の紛失といったリスクを抱えていました。DXによって、紙でやり取りしていた内容もデータとしてクラウド上で管理できる体制を構築しています。
| Before | After |
| 見積書や実行予算、各種資料もExcelで作成し、紙で回覧していた | 情報の伝達や共有がリアルタイムでできた |
| 机の上で書類が行方不明になる問題が発生していた | 情報管理をデジタル化したことで、書類紛失のリスクが解消された |
| 書類の作成方法や情報のやり取り、管理方法は担当者ごとにバラバラだった | 対面や紙でやり取りしていた内容がシステム上で一元管理した |
CASE6. 組織全体での情報共有を実現

大芝水工株式会社は、月100件を超える案件管理が紙やExcel、ホワイトボードに頼った状態になっていました。情報をクラウドで一元管理することで、どこからでも最新の現場状況を把握でき、現場と事務所の間の情報共有をスムーズにする体制を整えました。
| Before | After |
| 案件管理が個人の記憶に頼った状態になり、情報の共有に支障が出ていた | 全社員がリアルタイムに検索・参照可能になった |
| 案件を紙に書き出して修正テープで消しながらスケジュール調整していた | ドラッグ&ドロップで簡単に変更できた |
| 抜け漏れが頻発し、顧客に迷惑をかける事態も発生した | 抜け漏れのない業務サイクルを回すことで、顧客満足度を向上した |
ペーパーレス化の事例(法令対応)
CASE7. 上場企業を機に管理体制を刷新
株式会社ランドネットは、2021年の上場に伴いJ-SOX法やIT統制への対応が厳格化し、それに伴う事務負担の増大が課題となっていました。内部監査での具体的な指摘をきっかけにシステム導入を決断し、ガバナンスと業務効率の両立を実現しています。
| Before | After |
| J-SOX法やIT統制対応で、1つの工事が完了するごとに社内の連携用も含めて最低3つの書類に同じような内容を記載していた | 簡易的にJ-SOX法の基準に則ったフローができるようになった |
| 残業しても終わらない状況でアナログな管理方法が限界に達していた | 新人指導、顧客対応、オーナー対応もおざなりにならなくなった |
| 協力会社との見積りのやり取りで内部監査から管理上の不備を指摘された | システム上で簡易的に見積りを作れて、簡易的に提案できた |
CASE8. 法改正への対応をクリアし、管理物件数拡大

株式会社ユーミーClassは、すでにペーパーレス化は進めていましたが、旧システムの廃止で法改正への対応ができないという課題に直面しました。電子帳簿保存法やインボイスなどの法改正に対応できるシステムに切り替え、法令遵守の体制を確立しました。
| Before | After |
| 現行のシステムをアップデートできず、法改正に対応できなかった | 自社の業務フローを再現でき、法改正にも対応できるシステムを探して導入した |
| 消費税枠を追加することができないため、FAXの枠を使って対応した | 電子帳簿保存法やインボイスといった法改正への対応がスムーズになった |
ペーパーレス化の事例(品質向上)
CASE9. 点検時期を逃さない「攻めの営業」営業活動を実現

株式会社太陽プラントは、紙やExcelベースの管理で過去の顧客対応履歴を追えず、戦略的な営業活動ができていませんでした。情報をシステムで一元管理することで、過去の履歴を「会社の資産」へと変え、効率的な営業と現場対応の基盤を構築しています。
| Before | After |
| 顧客情報と施工履歴が紐づいておらず、アフターフォローの営業機会を逃していた | 既存顧客のフォロー体制が格段に向上した |
| 担当者の記憶や手がかりを頼りに提案していたため、適切な点検時期に合わせた提案が難しかった | 過去の履歴から点検時期を把握し、提案型の営業ができるようになった |
| 拠点間の情報共有で、情報伝達の漏れが発生するリスクがあった | 同じ画面を見ながら状況確認ができるようになり、業務効率がアップした |
CASE10. 手書きの見積作成から脱却

一級建築事務所 ROY株式会社では、見積作成が手書きの紙媒体で行われており、営業担当者のデスクワーク負担が課題でした。ペーパーレス化へのシフトにより、営業マンの行動量アップやこれまで手が回らなかった部分にも目を配ることが可能になりました。
| Before | After |
| 見積もり業務が紙媒体であり、外出先から内容を確認することができなかった | アプリで見積もりを一元管理し、外出先からでも内容を確認できるようになった |
| 部下の見積もりチェックが難しく、マネジメントや指導に時間を要していた | 見積もりを容易にチェック可能になり、効率的な管理と指導が実現した |
| 手書き部分で、見た目に改善の余地があった | 見積もりの見栄えが向上し、お客様からの反応にも良い変化が見られた |
ペーパーレス化でよくある失敗パターンと対策
1. 全社一斉導入で現場が混乱した
全部署・全業務を同時に電子化しようとして、現場が混乱するケースは少なくありません。新しいツールの操作を覚えながら通常業務もこなすのは、現場にとって大きな負担です。
対策
1つの業務・1つの部門に絞って段階的に始めるスモールスタートにする。効果を実証してから社内に拡大すれば、混乱は防げる、
2. 年配層・現場の抵抗で頓挫した
「今のやり方で問題ない」「パソコンの操作が苦手だから無理」という反発はよくあります。これを押し切ろうとすると、導入後に使われないツールが残るだけです。
対策
使いやすさを優先で選び、進捗を見える化する。ツール選定の段階で「シンプルで操作しやすいこと」を重要基準にした事例も多い。ツールの使いやすさは定着を大きく左右する。
3. システム導入だけでは改善されなかった
「紙でやっていた作業をそのままデジタルに置き換えただけ」で終わってしまうケースです。例えば紙の稟議書をPDFに変えただけで、回覧・承認のフロー自体は変わっていなければ、改善効果があまりありません。
対策
ツール導入の前に業務フローを問い直す。例えば、東京都のペーパーレス化事例では同時にハンコレスやFAXレスも推進し、押印文化や紙の回覧といった業務プロセスそのものを見直している。