「いまだに手入力をしている」
「現場の職人がタブレットを使えそうにない」
建設業DXは、人手不足と2024年4月からの残業上限規制に、少ない人数で対応するための仕組みづくりです。何から始めるか迷ったら、写真整理や日報のように現場の負担が軽い業務を1つ選び、1つの現場で試すのが近道です。必要度チェックと33の技術の早見表で、自社が最初に手を付ける業務を見つけましょう。
業務管理のDX化を、3社の実例とともに網羅的に解説
CONTENTS
建設業DXとは?現場をラクにする仕組み
建設業DXとは、現場で発生する無駄や手間を「SaaS・AI・IoT」などのデジタル技術でなくし、効率的に業務ができるようになる取り組みです。人手不足や働き方改革といった課題を解決し、利益を出し続ける会社を作るために、今や欠かせない経営戦略となっています。
1. 人手不足と2024年問題が背景にある
建設業の就業者は、1997年の685万人から2024年には477万人まで減りました。55歳以上が36.7%を占める一方、29歳以下は11.7%にとどまり、ベテランの技術を引き継ぐ人が足りていません。
※ 国土交通省「国土交通省の取組について」2025年5月8日(総務省「労働力調査」をもとに国土交通省が作成)
さらに2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。人を増やさずに残業を減らすには、移動や二重入力のような作業そのものを減らす必要があります。
2. BIM/CIMやICT施工などの技術を使う
国土交通省は「i-Construction 2.0」で、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、生産性を1.5倍にすることを目指しています。柱は「施工」「データ連携」「施工管理」の3つのオートメーション化です。
使われる技術は、3次元モデルで情報を共有するBIM/CIM、ドローン測量、ICT建機から、日報や見積もりをスマホで作る現場アプリまで幅広くあります。中小の建設会社は、現場アプリや写真管理から始めやすいです。主な33の技術は建設業DXのデジタル技術33項目早見表にまとめました。
※ 国土交通省「『i-Construction 2.0』の2025年度の取組予定をまとめました」2025年4月18日
3. SaaS導入で77.9%が業務改善
従業員50名以上の建設業でSaaSを導入した104名への調査では、77.9%が「業務が改善された」と答えています。「事務所に戻らないと作業ができない」といった建設業ならではの手間が減ったためです。
調査方法:リサピー®︎によるインターネット調査
調査期間:2025年7月8日〜7月9日
調査対象:建設業(従業員数50名以上)のSaaS導入者104名
同じ調査では、91.3%が月の業務時間を減らせたと答えました。減った時間は「10時間未満が13.5%、10〜30時間が36.4%、31〜50時間が32.7%、51〜70時間が5.8%、71時間以上が2.9%」です。
調査方法:リサピー®︎によるインターネット調査
調査期間:2025年7月8日〜7月9日
調査対象:建設業(従業員数50名以上)のSaaS導入者104名
4. 建設業IT化と建設業DXの明確な違い
建設現場において、IT化は「道具を変えるだけ」、DXは「仕組みごと変える」という大きな差があります。
| 比較項目 | 建設業IT化 | 建設業DX |
| 目指すゴール | 手書きやFAXなどの既存作業をスピードアップさせる | 働き方そのものを変え、利益率を高める |
| 現場での変化 | 紙の日報をExcel入力にし、図面をFAXではなくPDFで送る | 現場で内容が即座に共有されて、自動で原価管理や工程表に反映される |
| 情報の活かし方 | データの記録はデジタル化できたが、あとでメールするために1度事務所に戻る | スマホアプリで日報や写真を登録し、移動時間を別の本来の業務にあてる |
| 得られる成果 | 全体的な事務作業の時間が少し短縮されるが、手間は残っている | 無駄な移動や二重入力が消え、現場の利益が確実に残る |
IT化はアナログをデジタルに置き換えただけで、二重入力などの手間を増やすこともあります。建設業DXは「そもそも、その移動や打ち合わせが本当に必要か?」と疑い、現場の無駄を削ぎ落とします。浮いた時間を別の作業にあて、売り上げと利益を増やす仕組みです。
業務管理のDX化に成功した、
導入企業の変化と活用事例を公開
現場のリアルな悩みから、業務管理のDX化で起きる変化、3社の事例と必要な機能まで、1冊で網羅しています。
フォーム入力1分・即ダウンロード可
建設現場DX必要度チェック
自社の建設・工事現場がDXを必要としているかどうか、以下のチェックリストで確認してみましょう。12点以上当てはまる場合、DX推進が求められます。
現場の非効率・リスクを5段階で振り返り、DX推進の優先度を把握できます
※ 実際の状況は条件によって異なる場合があります。本診断結果はあくまでも目安としてご利用ください。
建設業DXの実施事例2選
CASE1. 個別の見積もりを一元化し、誰でも状況を把握できる形に

業務グループ 砂山様
導入前の悩み
以前は、10人以上が個別に見積もりを作成し、システムとリンクしていなかったため、情報の管理が煩雑でした。
業務グループ 砂山様
導入後の変化
プロワンを導入したことで、見積データが一元化され、業務の効率化につながっています。結果として、業務負担が軽減され、誰でもすぐに状況を把握できるようになり、よりスムーズな運営が可能になりました。
業務グループ 砂山様

現場で起きた主な出来事
- これまで属人化していた業務が大きく改善された
※ プロワン導入事例「JFEプロジェクトワン株式会社」2025年5月
CASE2. 手書きの見積もりをアプリに集約し、外出先でも確認

千葉営業所 渡部様
導入前の悩み
導入前は、見積もりなどの業務はほとんどが紙媒体で、手書きが主流でした。
千葉営業所 渡部様
導入後の変化
1つのアプリで見積もりまでを集約して確認できる点が非常に便利です。以前は外出先で確認することができませんでしたが、今では必要なときに必要なタイミングで確認が可能になりました。
千葉営業所 渡部様

現場で起きた主な出来事
- 結果的に見積もりの見栄えが向上し、お客様からの受け止め方にも良い変化が見受けられた
- 部下の見積もりをチェックしやすくなり、より効果的に管理できるようになった
- 効率が向上したことで、これまで手が回らなかった部分にも目を配ることができるようになった
※ プロワン導入事例「一級建築事務所 ROY株式会社」2025年5月
建設業DXのデジタル技術33項目早見表
現場やバックオフィスで導入が進んでいる主要な建設業のデジタル技術を、具体的に整理しました。すべて個別に導入する必要はなく、複数の機能が統合されたシステムを採用する方法もあります。既存の仕組みと外部連携させるなど、自社の課題に合わせて選べます。
| 技術名・項目 | 概要 |
| 3Dスキャナ | レーザーで構造物の形状をミリ単位の精度で立体データ化する |
| AI OCR | 手書きの帳票や図面内の文字を、自動でデジタルデータ化する |
| AI画像解析 | 現場写真から危険挙動や進捗状況を、AIが自動で判別する |
| AI自動設計 | 過去データから最適な構造計算や図面をAIが自動生成する |
| AR・MR(拡張・複合現実) | 現実の視界に設計図を重ね、施工ミスや干渉を防ぐ |
| BIM・CIM | 設計・施工・維持管理の情報を、3Dモデルに集約する |
| ERP(基幹システム) | 経営資源を統合管理し、工事原価をリアルタイムに把握する |
| ICT建機 | 重機を自動制御し、経験の浅い人でも精密な施工を可能にする |
| ICT測量 | 3次元データを用いて、広範囲の測量を迅速かつ精密にする |
| IoTウェアラブル | 作業員の心拍数等を管理し、熱中症や事故を未然に防ぐ |
| IoTセンサー | 現場の温湿度やコンクリート硬化状態を遠隔から監視する |
| RFID(ICタグ) | 資材にタグを付け、入出荷や在庫位置を非接触で一括管理する |
| VR(仮想現実) | 360度の仮想空間で、臨場感のある安全教育や疑似体験をする |
| アシストスーツ | 身体への負担を軽減し、重い資材の搬送などの作業を補助する |
| 営業支援(案件管理) | 営業活動を可視化し、フォロー漏れ防止と成約率向上を図る |
| 機器・資材管理 | 現場ごとの機器使用状況を正確に把握し、保守点検からアフターまで管理する |
| クラウドサービス | 資料や写真をネットで共有し、場所を問わず更新できる |
| 契約管理 | 顧客・案件情報をデータベース化し、過去の経緯を踏まえた最適な提案に繋げる |
| 現場アプリ | スマホで最新予定の確認や見積作成を可能にし、現場と事務の連携を強化する |
| 顧客管理 | 顧客情報を全部署でリアルタイム共有し、継続的な関係構築と売上拡大を支援 |
| 作業日報アプリ | 現場で日報をスマホ入力し、報告書作成と共有の工数を大幅に削減する |
| 写真・ファイル管理 | 現場写真や書類を案件に紐づけてクラウド管理し、即座に共有する |
| 申請・承認ワークフロー | 見積もりや請求をスマホから申請し、業務の停滞と属人化を防ぐ |
| 自動化ルール | 請求や入金などの定型業務に自動処理を設定し、ミス防止と省人化を実現する |
| スケジュール・作業管理 | 現場の工程や作業員の配置を可視化し、リアルタイムでの進捗調整を可能にする |
| 施工管理システム | 工程や図面を一括管理し、現場事務のペーパーレス化を推進する |
| 請求・入金管理 | 見積書や原価と連動した請求書発行から、入金消込や会計連携までを一元化する |
| センシング技術 | センサーで目に見えない構造物の変化や劣化を数値化する |
| デジタルツイン | 現実を仮想空間に再現し、施工工程を高度にシミュレーションする |
| ドローン | 高所点検や空中測量を、安全かつスピーディに実施する |
| 発注管理 | 見積書から発注書までを連携し、進捗の可視化と原価への自動反映を行う |
| 見積作成 | マスタ情報で誰でも高品質な見積もりを作成し、発注業務へデータを繋ぐ |
| レポート・ダッシュボード | データをリアルタイムで可視化し、多角的な状況把握と迅速な経営判断を支援 |
※ 2026年5月時点
建設業DXを始める3ステップ
何から始めるかは、現場の負担が軽く、効果が数字で見える業務から選びます。写真整理・日報・見積作成のように毎日くり返す作業なら、減った時間をすぐに確かめられます。
STEP1. 現場の課題洗い出しと優先順位
DX推進の第一歩は、現場の生の声を集めることです。経営層が一方的に決めるのではなく、実際に業務を担当する社員が何に「足かせ」を感じているかを明確にしましょう。
| フェーズ | 具体的なアクション | 重点チェックポイント |
| ヒアリング | 現場が抱える悩みや無駄を直接聞き取る | 建設現場特有の見えない課題を徹底的に掘り起こす |
| 課題評価 | 二重入力などツールで解決できる課題を絞る | 現場ならではの悩みに対しデジタル化が有効か分析する |
| 優先度決定 | 写真整理など負担の軽いものから始める | 現場の声が反映されていると実感してもらい足かせを取り除く |
STEP2. 操作が簡単なツールの選定
どれだけ高機能なツールでも、現場で活用されないと進みません。特にITに不慣れな社員でも、「使い慣れたスマートフォンのように」直感的に操作できることが定着の分かれ道となります。
操作が簡単なツールの調べ方
- 説明書なしで直感的に使いこなせる画面を選ぶ
- 現場のルールに合わせ柔軟に設定を変えられる
- 無料体験で現場の担当者が使い心地を確かめる
- 選定から定着まで手厚い支援があるか確かめる
- 現場と経営を繋ぎ情報をまとめて管理できる
STEP3. 特定現場でのスモールスタート
一斉に広めるのではなく、小さな成功体験を積み重ねることで、最終的な全社導入がスムーズに進みます。
| 実施内容 | 意識したいポイント |
| 新しい取り組みに抵抗が少ない現場から始める | 心理的なハードルを下げやすい前向きなチームを選ぶ |
| 入力の決まりを最小限にして現場の負担を抑える | 現場の社員がシステムを使い慣れる環境作りを最優先する |
| 業務の改善度合いを定期的に数字で確かめる | 導入者の約8割が改善を実感した調査を目安にする |
| 残業の減少や嬉しい変化を社内で伝える | 約40%が大幅な時間削減に成功した例を出しメリットを伝える |
建設業DXを推進させる総合システム3種
1. 大手・中堅向け建設業総合ERP(基幹業務システム)

財務会計、原価管理、人事労務など、企業の基幹業務すべてを建設業の商習慣に合わせて統合したシステムです。各部署が独自のツールで管理する状態から脱却し、全社で正しい1つの数字を共有できます。
| サービス名 | 主な機能 | 業務改善ポイント |
| PROCES.S | 統合会計、工事原価管理、販売、給与、JV管理、支払、電子承認など | 全業務が財務会計に直結。現場の動きを経営数字に即時反映し、透明性の高い経営を実現できる |
| OBIC7 | 会計、人事、給与、就業、販売、工事原価管理など | 複雑な組織や雇用形態、外部連携に柔軟に対応。大手企業のDXを根底から強力に支える |
| ガリバーPro | 工事管理、支払管理、債権管理、電子保存、ワークフローなど | 注文から支払までをデジタル化。法改正への対応と業務効率化を高いレベルで両立する |
2. 現場特化型プラットフォーム

図面やBIM、さらにはAIを活用した検査など、現場のあらゆる情報をデータプラットフォームとして集約する仕組みです。現場で発生する情報が自動的に整理される仕組みにより、現場監督が品質管理などの付加価値の高い業務に専念できます。
| サービス名 | 主な機能 | 業務改善ポイント |
| Photoruction | 写真、図面、タスク、工程、検査、書類作成、AI自動解析など | データを一括集約。自動化やBPO活用により、技術者が本来の業務に集中できる環境を作ります |
3. 現場・事務一貫型ビジネス管理システム

建設業界のDXにおいて、個別のアプリ導入はデータの分断を招くリスクがあります。現場、事務、経営を1つの仕組みでつなぎ、二重入力や情報のタイムラグをゼロにする統合的なシステム導入が重要です。顧客管理から見積、施工、請求までを一気通貫で管理しましょう。