「押印のために帰社したくない」
「電子契約に法的効力はある?」
紙の契約書にかかる印紙代や郵送費は、年間で想像以上のコストになります。そこで、電子契約システムの仕組みから、導入企業の成功事例、電子契約システムの選び方、目的別のおすすめツールまで、導入を進められるように1つずつ紐解いていきましょう。
DXの事例や機能を1冊に、「DXまるわかりガイド」全67ページ
電子契約システムとは?改善できること
1. 紙と電子契約の違い
電子契約システムとは、紙の契約書に印鑑を押す代わりに、PDFなどの電子ファイルに電子署名とタイムスタンプを付与して契約を締結する仕組みです。契約の作成から締結、保管までをシステム上で管理できます。
| 比較項目 | 紙の契約 | 電子契約システム |
|---|---|---|
| 締結までの日数 | 紙のやり取りなどで5〜10営業日 | 最短で当日〜数分で完了 |
| 印紙税 | 契約金額に応じて200円〜数万円 | 電子データのため不課税 |
| 保管方法 | 原本をファイリングして保管 | クラウド上に自動保存、検索も即時 |
| 法的効力 | 民法・印紙税法に基づく書面契約 | 電子署名法・電子帳簿保存法に準拠 |
電子契約システムの流れはシンプルで、5つのステップで締結が完了します。
電子契約の流れ
- 契約書のPDFをシステムにアップロードする
- 相手方に送信する
- 相手方が内容を確認し、署名する
- 双方の合意が記録された契約書に、電子署名と認定タイムスタンプが自動付与される
- クラウド上に保管される
2. 契約締結の工数を短縮する
紙に頼った契約書のフローは、非常に時間がかかる作業です。以下は、電子契約システムの主要機能を簡易的に搭載したデモ画面であり、実際の契約書作成や署名依頼での動きがわかります。
※ 画面とデータはデモ用であり、実際の製品とは異なります。
紙の契約書では、印刷・押印・郵送・返送待ちといった作業工数がかかります。月末に契約処理が集中する企業だと、総務担当者が封筒の開封と押印回覧だけで半日以上を費やしているケースも珍しくありません。電子契約システムなら、この作業がすべてオンラインで完結します。
削減できる工数
- 印刷・輸送の作業がゼロになり、担当者の負担が軽減
- 紙の往復にかかる日数がなくなり、締結スピードが上がる
- 外出先からスマホやノートPCで承認できるため、押印のための出社が不要
3. 印紙代と保管コストの削減する
紙の契約書は印紙税法上の課税文書に該当しますが、電子契約では物理的な文書が作成されないため印紙税は不課税です。月間数十件の契約がある企業なら、年間で数十万〜数百万円の固定費を削れるでしょう。
さらに、保管コストの圧縮も見逃せません。紙の原本はファイリングして保管し、必要なときには段ボールや棚から探すという手間が発生します。電子契約ならパソコンからすぐにキーワード検索が可能です。ただし、電子契約システムには月額利用料や1件あたりの送信料が発生します。
| コスト | 紙契約 | 電子契約 |
|---|---|---|
| 印紙代 | 契約金額に応じた収入印紙の購入費 | 0円 |
| 郵送費 | レターパック・書留などの送料 | 0円 |
| 印刷関連費 | 用紙代・インク代などの消耗品費 | 0円 |
| 保管費 | 外部倉庫の賃料・ファイリング用品の購入費 | 0円 |
| 人件費 | 押印回覧・封入・発送・原本管理にかかる作業工数 | オンライン完結で大幅削減 |
| 月額料金 | 0円 | 440円〜 |
また、2024年1月から、電子取引データの電子保存が完全義務化されました。メールやクラウド上で受け取ったデジタルの契約書は、以下の要件に従って保存する必要があります。多くの電子契約システムは、この2つの要件を標準機能としてカバーしています。
| 項目 | 要件 |
|---|---|
| 真実性の確保 | タイムスタンプの付与や訂正・削除の履歴が残る仕組みを整えること |
| 可視性の確保 | 取引先名・日付・金額で検索できる状態にしておくこと |
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電子契約システムの成功事例2選
CASE1. 脱紙をしたテレワークが推進できた事例

数万件に及ぶ契約業務のDXを、電子契約システムの導入によって実現したソフトバンク株式会社の事例です。コロナ禍によるテレワークの導入に伴って、従来の紙の申込プロセスによる業務効率の悪さや作業工数の多さが課題となっていました。
| 導入前 | 導入後 |
|---|---|
| 原本保管に膨大な手間と費用がかかった | 契約締結にかかる工数、コスト、日数を大幅に短縮した |
| 原本紛失のリスクがあった | 原本の回収、倉庫への発送、保管という業務がなくなった |
| テレワーク下でも出社が必要だった | 自社だけでなく取引先もテレワークで作業が可能になった |
導入にあたっては、電子帳簿保存法への準拠を最初に確認したうえで、社内の関連部門から「紙の脱却」に意欲のあるメンバーを集めて推進チームを編成。法令順守、セキュリティ、内部プロセス、顧客への説明といった多角的な観点で対策を整え、段階的に電子化を進めています。
※ ソフトバンク株式会社「契約締結プロセスの『脱・紙面』で、テレワークでのビジネスをスピードアップ」2021年8月時点
CASE2. グループ横断の契約管理プロセスを刷新

20社近いグループ会社を抱えるグリー株式会社が、契約管理業務の基盤を統合し、プロセス全体のデジタル化を実現した事例です。以前は複数のシステムを併用していたため、システム間のデータ連携ができず、手作業によるミスや業務の滞留が大きな課題となっていました。
| 導入前 | 導入後 |
|---|---|
| 複数ツールの併用でデータの転記や添付ミスが頻発した | 電子契約やチャットツールと連携し、ミスを徹底排除 |
| 承認ステップが手動設定で、確認漏れのリスクがあった | 所属情報に基づき最適なルートを自動設定しルールを徹底 |
| 法務の審査状況などが外部から見えにくかった | 全社の申請状況が一目で把握でき、滞留の早期検知が可能に |
単なる契約締結の電子化にとどまらず、過去の契約データの再利用や、所属情報に連動した自動フロー構築など、複雑な業務ルールをシステム化することで、法務・事業部双方の負担軽減とガバナンス強化を同時に成し遂げています。
※ 株式会社ドリーム・アーツ「既存の CLM システムでは対応できない業務プロセス全体のデジタル化」2024年6月13日
電子契約システムの選び方
1. 電子署名の種類を把握する
電子署名には「当事者署名型」と「立会人型」の2種類があり、仕組みと法的効力が異なります。
| 署名タイプ | 仕組み | 法的根拠 | 向いている契約 |
|---|---|---|---|
| 当事者署名型 | 契約当事者が自身の電子証明書で署名 | 電子署名法第3条に基づく推定効 | 不動産売買契約、金融取引契約、M&A関連契約など |
| 立会人型 | サービス事業者が当事者の指示で署名 | 電子署名法第2条・第3条の解釈に基づく | 業務委託契約、秘密保持契約、雇用契約など |
当事者署名型は推定効(ある事実が法律上、真実であると推定される効力)が強く、高額契約や訴訟リスクの高い取引向き、立会人型は相手方のアカウント不要で導入しやすいのが特徴です。契約書の種類と金額帯に応じて使い分けましょう。
立会人型に不安を感じる方もいますが、デジタル庁は「署名プロセスに十分な固有性があれば電子署名法第3条の推定効が適用される」との見解を示しています。主要なサービスなら安心して利用できます。
※ デジタル庁・法務省「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法第3条関係)」
2. 自社の契約形態や種類を確認する
電子契約システムは製品によって対応できる契約形態や書類の種類が異なるため、導入後に「この契約は電子化できなかった」と気づくケースがあります。特に建設業や製造業のように、現場ごとに契約条件が変わる非定型の請負契約が多い業種では要確認です。
| 確認項目 | チェックすべき内容 |
|---|---|
| 複数社間契約への対応 | 3社以上の署名者を設定できるか、署名順の制御が可能か |
| 契約書タイプ | 定型契約だけでなく、秘密保持契約などの非定型契約にも対応しているか |
| テンプレート機能の柔軟性 | 自社の契約書フォーマットをそのまま登録・利用できるか |
3. 既存ツールとの連携性を見る
電子契約システムを入れても、社内の稟議や承認プロセスが紙のままでは効率化の効果は半減します。すでにワークフローシステムやグループウェアを導入している場合、API連携やシングルサインオンへの対応状況を確認しましょう。
確認ポイント
- ワークフローシステムと連携し、承認完了後に契約書が自動送信される仕組みを組めるか
- 会計ソフトと連動して、契約データを手入力なしで取り込めるか
- 契約書のテンプレート管理や通知がスムーズに行えるか
4. 迷わず操作できるUIを試す
受信する側の負担が軽いかどうかは、製品選定で見落とされやすく、定着率に最も影響するポイントです。自社の担当者だけでなく、取引先の担当者の立場も考えて選定しましょう。
| 確認ポイント | チェック内容 |
|---|---|
| アカウント登録の要否 | 取引先がアカウントを作らなくても署名可能 |
| スマホ対応 | 署名画面がスマホでも操作に支障がないレスポンシブ対応 |
| UIのわかりやすさ | 日マニュアルなしで操作手順が直感的にわかる操作性 |
| 多言語対応 | 日本語以外の言語対応有無 |
電子契約システムおすすめ8選
1. コスト重視でスモールスタートできる

「まずは使ってみたい」「月間の送信件数がそれほど多くない」という企業には、基本料金や送信単価が抑えられているツールがおすすめです。
| サービス名 | 月額料金 | 特徴 |
|---|---|---|
| クラウドサイン | 12,100円~ | 国内導入社数250万社超で、国産の電子契約システムの代表格。相手型はアカウント不要で署名可能。AI契約書管理も |
| 契約大臣 | 2,020円~ | 機能を必要最低限に絞り込んだシンプル設計で低価格。操作画面が直感的で、契約相手が迷わないためのガイド機能が充実 |
| ベクターサイン | 1件440円〜 | 他社サービスで締結したPDFを取り込んで一元管理できる。保管文書数やユーザー登録数が「無制限」 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年5月時点
2. 既存ツールと連携して業務効率化できる

契約書を締結した後、情報を会計ソフトや販売管理ツールに連携でき、データ入力の無駄を省いて業務効率化を支援するツールです。
| サービス名 | 月額料金 | 特徴 |
|---|---|---|
| freeeサイン | 6,578円~ | クラウド会計ソフト「freee会計」との強力な連携で、契約から会計までを一気通貫。締結完了と同時にfreee会計側のデータも更新 |
| マネーフォワード クラウド契約 | 2,728円〜 | マネーフォワードのサービスとの親和性が抜群で、契約から債務管理までを一元化できる。契約完了後にそのデータを元にして請求書発行を自動化 |
| BtoBプラットフォーム 契約書 | 11,000円~ | 請求書や受発注システムとデータが直結。正確な発注や請求をシームレスに行える。契約の改ざん耐性を高めるブロックチェーン技術を採用 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年5月時点
3. 厳格な本人確認で当事者型に対応できる

実印相当の法的効力が求められる重要な取引や、改ざんリスクをできるだけ排除したい場合に適したツールです。
| サービス名 | 月額料金 | 特徴 |
|---|---|---|
| GMOサイン | 9,680円〜 | 自社で電子認証局を運営。当事者型と立会人型を1つの契約内で設定可。マイナンバーカード連携によりスマホにかざすだけで署名可能 |
| DocuSign | 3,630円〜 | 世界180ヶ国以上で利用される電子契約サービス。44言語に対応し、海外企業との契約をスムーズに締結できる。各国の身分証をAIで検証 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年5月時点
電子契約システムでよくある質問
—— すべての契約書が電子化の対象か?
企業が日常的に取り交わす契約書はほぼ電子化可能で、書面が必須だった不動産売買・賃貸借に関する契約書や重要事項説明書も、2022年5月の宅地建物取引業法改正で電子化が全面解禁されています。ただし、ごく一部、条件付きでの電子化や書面での作成が義務付けられている契約が残っています。
| 契約の種類 | 電子化の可否 |
|---|---|
| 事業用定期借地契約、企業担保権の設定・変更契約、任意後見契約、農地の賃貸借契約、訪問販売や電話勧誘販売などで、消費者に交付する書面 | 電子化できない |
| 建設工事の請負契約、下請との受発注書面 | 取引先の事前承諾を得れば電子契約が可能 |
| 労働条件通知書、派遣社員への条件明示書面 | 労働者が電子交付を希望すれば電子化が可能 |
—— 紙の契約書と同等の法的効力か?
結論から言えば、電子署名法によって紙の契約書と同等の法的効力が認められています。電子署名法第2条では、本人が作成したことを示す措置であること、そして改変が行われていないか確認できることの2つを要件としています。この要件を満たせば、法令上の「電子署名」として認められます。
電子署名法第3条では紙の押印と同じ「推定効」を電子署名に認めています。推定効とは、簡単に言えば「本人のハンコが押してあれば、本人が納得して作った書類だと裁判所が認めてくれる」というルールです。現在、主要な電子契約サービスは二要素認証などの仕組みで本人性を担保しています。
—— 電子印鑑は必要か?
電子契約では、電子署名とタイムスタンプによって本人性と改ざん防止を担保する仕組みになっているため、電子印鑑は必要ありません。混同されやすいですが、印鑑の画像を貼り付けるだけの「電子印鑑」と、電子契約システムの「電子署名」は別物です。
| 比較項目 | 電子印鑑 | 電子署名 |
|---|---|---|
| 仕組み | 印鑑の画像をPDFに貼り付ける | 暗号技術で本人性と非改ざん性を証明する |
| 法的な証拠力 | コピーや偽造が容易なため、証拠力が弱い | 電子署名法に基づく推定効が認められる |
| 改ざん検知 | できない | タイムスタンプにより改ざんがあれば検出できる |
| 電子契約システムでの扱い | 不要 | 標準機能として搭載されている |
—— 相手先が紙契約を希望した場合は?
電子契約を導入しても、取引先のなかには紙を希望する企業が残ります。無理に電子化を押し通すのは避けるべきで、現実的な対処法は、紙と電子の並行運用を前提にすることです。電子契約システムのなかには、紙の契約書をスキャンして取り込み、電子契約と一元管理できる機能を備えた製品があります。