「求人を出しても若手が来ない」
「ベテランが辞めたらこの仕事は受けられなくなる」
そこで、職人不足の対策から、現場の職人不足リスク診断、職人不足を乗り越えた会社の成功事例、具体的な改善ステップ、活用できるITツールまで、少人数でも現場が回るロードマップを見ていきましょう。
DXの事例や機能を1冊に、「DXまるわかりガイド」全67ページ
CONTENTS
職人不足の対策とは?今すぐできる改善
職人不足の対策には「採用力強化」よりも、1人あたりの生産性を上げるほうが着実に成果が得られます。その理由は、次の2つです。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 1. 職人不足は深刻化が続く | 有効求人倍率5倍超・高齢化・採用費増大の三重苦。採用だけでこの大きな流れは解決できない |
| 2. DXで生産性を向上できる | 属人化を防ぎ、段取りロスを抑え、技術を組織で共有して生産性を20〜30%引き上げる |
1. 職人不足は深刻化が続く
全職種の有効求人倍率は1.02倍ですが、「建設・採掘従事者=4.69倍、建設躯体工事従事者=7.46倍、建設従事者=4.04倍」であり、深刻な人手不足が続いています(※)。現場では新しく入ってくる人が減る一方、ベテランは定年で退職する人が増えて、職人不足が顕著になっています。
| 項目 | 10年前の状況 | 現在の状況 |
|---|---|---|
| 採用市場 | 職業訓練校・口コミ・紹介で一定数確保できた | 有効求人倍率が高止まりで応募がない |
| 年齢構成 | 20〜60代が比較的均等に在籍していた | 50〜60代が主力であり、30代以下は20%未満に |
| 技術継承 | 若手に自然に引き継がれていた | 若手が来ずにベテランが退職し、現場ノウハウが失われる |
※ 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)について」2026年3月時点
2. DXで生産性を向上できる
人手不足を採用だけで補おうとすれば、採用費・育成費の負担が膨らみ続けます。発想を「人を増やす」から「今いる人で成果を最大化する」へと切り替えることが、これからの現場に求められています。
1. 間接業務の自動化
段取り・発注・報告書作成などを自動化し、職人が実作業に集中できる時間を確保する
2. 技術のデータ化
作業手順書や動画マニュアルで技術を蓄積し、ベテランが退職しても仕事が回る体制を構築する
3. 現場管理の効率化
進捗・稼働状況をリアルタイムで把握し、1人の管理者が複数現場を同時に管理する
こうしたDXの取り組みによって1人当たりの生産性が向上し、現状の人員のままで受注量を維持できたという現場事例も出始めています。
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あなたの現場の職人不足リスク診断
自社の職人不足がどの程度経営に影響しているか、以下のチェックリストで確認してみましょう。
現場の職人不足が経営にどう影響するか、10項目で診断できます
診断結果のスコアに応じて、最初に着手すべき対策が異なります。Lv.3以上の場合は、3〜6ヶ月内に対策着手することが望ましい水準です。各レベルの優先課題は次のとおりです。
| レベル | 優先課題 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| Lv.1 安定(0〜5点) | 予防的な準備段階 | 技術継承のルール整備 |
| Lv.2 注意(6〜11点) | 業務の見える化 | 作業手順書の整備と現場報告のデジタル化に着手 |
| Lv.3 危険(12〜17点) | 属人化解消とIT本格導入 | 現場管理ツール導入と動画マニュアル化を進める |
| Lv.4 緊急(18〜23点) | 受注スコープと体制の再設計 | 業務範囲の見直しと全社業務改革を同時着手する |
※ 実際の状況は条件によって異なる場合があります。本診断結果はあくまでも目安としてご利用ください。
職人不足を乗り越えた会社の事例3選
CASE1. ビルメンテナンスにおける株式会社ラ・ユニークの事例

ビルメンテナンスを軸に清掃・警備・設備・建設の総合管理サービスを手がける株式会社ラ・ユニークはは、業務管理システムを導入し、社員の退職のたびに失われていた情報を蓄積し、品質の低下を改善しました。このシステムの特徴は以下のとおりです。
| 特徴 | 活用方法 | 効果 |
|---|---|---|
| カンバン方式の案件管理 | リードから受注まで案件状況を可視化 | 営業進捗のブラックボックスがなくなった |
| モバイル見積作成 | 外出先からスマホで見積を作成 | 事務所に戻らず提案できる |
| 経営データの自動集計 | ダッシュボードで経営指標をリアルタイム確認 | 社長のExcel集計作業がなくなった |
属人化していた業務情報は誰でも見られる仕組みに切り替わり、ITに不慣れな40〜50代の社員も自分で案件を登録できるようになりました。人手不足の対策として「業務のやり方を変える」を選んだ結果が、営業利益200%以上という成果として返ってきています。
ビルメンテナンス業務での具体的な変化
- 担当者が変わっても契約書や作業履歴をすぐ確認できるようになった
- 営業の進捗が共有され、社内のサポート体制が整ってきた
- 残業時間が約20%減り、社員の負担感が大きく下がった
CASE2. 設備工事におけるヤンテック株式会社の事例

電気・空調工事を主軸に事業を展開するヤンテック株式会社は、案件管理システムを使って、若手人材の登用を進めています。具体的なシステムの活用方法は主に3つです。
| 特徴 | 活用方法 | 効果 |
|---|---|---|
| 情報の集約管理 | 過去案件・顧客情報をシステムにまとめる | 担当者の記憶に頼らず情報を引き出せる |
| 現場アプリでの記録 | スマホで写真撮影と工事報告書を作成 | 現場から事務所に戻る回数が減った |
| 見積テンプレート | 最短1分で見積書を作成 | 事務作業の時間が短くなった |
同社は職人の高齢化と人手不足の課題に対し、煩雑な業務を効率化して労働時間削減しました。「DX化とそれを推進する若手人材の登用は必要不可欠」という方針のもと、DX化を進めています。
設備工事業務での具体的な変化
- 過去案件を担当者の記憶に頼らずシステムから引き出せるようになった
- 公共案件の膨大な書類対応に追われる時間が減ってきた
- 若手が任せられる業務範囲が広がり、世代交代の道筋が見えてきた
CASE3. 総合建築における一級建築事務所 ROY株式会社の事例

外構・エクステリア・総合リフォームで展開する一級建築事務所ROY株式会社は、オールインワンシステムによって、紙の見積書とをペーパーレス化し、営業マンのデスクワークを削減しました。システムによる主な効果は次のとおりです。
| 特徴 | 活用方法 | 効果 |
|---|---|---|
| 見積もり業務の効率化 | 手書きからツールでの作成に | 作成の手間が減り、見栄えも向上 |
| 外出先からの確認 | 営業先で見積もりの内容をその場で確認 | 事務所に戻らず提案できる |
| 見積の上司チェック | 部下が作成した見積を効率的に管理 | マネジメントの仕組みが整った |
建設業界全体の人手不足のなかで「人材の確保と育成が急務」というのが導入の出発点でした。システム導入が業務の効率化や指導育成の面でサポートになり、現場スタッフの昇進にも良い影響が出ています。
外構・エクステリア業務での具体的な変化
- 手書きで作っていた見積書が、見栄えのよいデジタル書類に切り替わった
- 営業マンが事務所に縛られず、客先や現場で過ごす時間が長くなった
- 部下の見積もりを上司が確認しやすくなり、若手の成長を支えやすくなった
職人不足の対策を進める3ステップ
STEP1. 依存リスクを可視化する
職人不足は「採用」「技術継承」「業務効率」「属人化」など複数の課題が同時に絡み合うため、バラバラに対策を始めるとリソースが分散します。まずは以下の手順でスキルマップを作り、インパクトの大きい順に優先順位を決めることがスタートラインです。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 工種の洗い出し | 自社が受注している工事の種類をすべてリストアップする |
| 2. 担当者の紐づけ | 各工種に対し、施工できる人・指導できる人を記入する |
| 3. リスク判定 | 施工できる人が1名しかいない工種を赤で塗る |
| 4. 優先順位づけ | 赤の工種のうち、売り上げへの貢献度が高い順に並べ替える |
作業はExcelで十分です。感覚ではなく数値で把握することで、対策の打ち手と順番を客観的に判断できるようになります。
STEP2. 技術継承の仕組みを整える
STEP1で赤く塗った工種は、「その人が抜けたら止まる」業務です。ベテランの頭の中にある段取り・判断・コツを組織の財産として蓄積し、不在でも仕事が回る状態を作ります。
| 具体的な施策 | 詳細 |
|---|---|
| 作業マニュアルの動画化 | スマホでベテランの作業を撮影し、若手がいつでも見て学べる教材として蓄積する。文書化より作業者の負担が小さい |
| 段取り・発注業務の標準化 | 「この場合はこう判断する」というルールを文書化し、特定の人の経験に頼らず判断できる業務範囲を広げる |
| 技術評価マップの整備 | 各職人の保有スキルを5段階で見える化し、誰が誰に何を教えるかという技術継承の経路を組織として設計する |
すべてを一気にマニュアル化しようとせず、属人化リスクの高い業務から優先して取り組みます。動画・写真・チェックリストなど、現場の負担にならない形式を選ぶことが定着のカギです。
STEP3. ツール導入で少人数体制を確立する
1人あたりの生産性を高め、限られた人数でも現場を回せる体制をつくることが、人手不足への現実的な対策になります。ツールの導入で間接業務を減らし、職人が実作業に集中できる環境を整えます。基本的な手順は以下です。
1. スモールスタートでの試行
まず一現場・一機能で導入し、現場の反応と効果を2〜3か月で確認します。最初から完璧を目指さず、現場の声を集めながら設定を磨いていくほうが結果として早く定着します。
2. 既存データの移行を進める
本格導入に向けて、これまでExcelや紙で蓄積してきた案件情報・顧客情報などをツールへ移していきます。すべてのデータを一度に移そうとせず、まずは現在進行中の案件など、よく使うデータから移すのが安全です。過去の古いデータは、必要になった時点で順次移す方法でも十分に運用できます。
3. 対象を広げて本格導入する
試行で手応えを得たら、対象の現場や機能を少しずつ広げ、全体へと展開していきます。一度にすべてを切り替えるのではなく、「次は隣の現場」「次はこの機能」と段階を踏むことで、現場の混乱を抑えられます。
4. 振り返りでの定着促進
月1回程度、振り返り会を開催し現場の声を集めます。運用ルールの整備や「使われない機能は外す」など、現場が使いやすいようにブラッシュアップすることで、定着を促します。
STEP4. DX化を若手採用につなげる
STEP1〜3で進めたDXの取り組みは、そのまま若手採用を有利に進める武器になります。
求人原稿や会社説明会では、「現場アプリで報告業務を効率化している」「ペーパーレス化を進めている」といった具体的な取り組みを語りましょう。抽象的な「アットホームな職場」という言葉より、デジタル化の実態を伝えるほうが、若手の目には魅力的に映り、他社との差別化につながります。
建設業を敬遠する若手が口にする「3K」のイメージや、「紙とFAXのアナログな職場」という印象は、DXによって変えられます。
職人不足の対策に使えるツール5選
1. 見積管理・原価管理システム

属人化していた見積判断と原価把握を、AIや業務テンプレートで支援するツールです。ベテランが不在でも適正な見積価格を出せるようになり、若手社員が見積業務を担える環境を整えます。
| サービス名 | 月額料金(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| どっと原価 | 13,000円〜 | 建築業特化で見積や実行予算、原価、支払管理を一元化。他社会計ソフト連携やExcel帳票の流用が可能 |
| 工事台帳アシストAI | 要問い合わせ | 建設業特化のAI原価管理ツール。台帳作成と原価分析を自動化し、手入力を0にする |
| 工事ロイド | 要問い合わせ | 協力会社の見積もりをもとに自社見積もりを作成できる。転記作業をなくし、適正価格も自動査定 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年5月時点
2. 施工管理・現場管理DX

施工管理のデジタル化は職人管理対策の入り口として有効です。案件・工程・写真・図面・原価管理をスマホで一元化することで、少ない人数で多くの現場を回せるようになります。
| サービス名 | 月額料金(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| プロワン | 要問い合わせ | 建築・設備工事・リフォームなどの現場業務に特化したオールインワンシステム。営業から施工・保守まで一気通貫で管理可能 |
| CONOC | 9,800円〜 | 建設業特化のDXツール。AI見積機能で見積もり作成時間を最大70%削減できる |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年5月時点
3. 現場アプリ・写真共有

撮った写真をスマホで整理・共有し、報告書や台帳の作成まで現場で完結できるツールです。現場と事務所を往復する時間がなくなり、職人の直行直帰や複数現場の同時管理が可能になります。
| サービス名 | 月額料金(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| 蔵衛門カメラ | 0円~ | 電子小黒板が使える無料の工事写真用アプリ。改ざん検知機能により公共工事にも対応 |
| Photoruction | 要問い合わせ | AIを搭載し、撮影した写真は自動で整理、図面に紐づけて管理できる。大手ゼネコンの利用実績が豊富 |
| ミライ工事 | 1名あたり2,750円~ | 報告書の撮影から編集までスマホで完結できる。シンプルな操作性で使いやすい |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年5月時点
4. 教育・技術継承支援サービス

ベテランの作業をスマホで撮影し、字幕や手順を自動生成してマニュアル化するツールです。「見て覚える」文化が残る現場でも、若手が自分のペースで学べるようになり、技術継承を支援します。
| サービス名 | 月額料金(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| tebiki | 要問い合わせ | スマホで撮影し音声認識で字幕を自動生成。100か国語の翻訳に対応し、スキルマップと連動し、教育から評価までを一元管理できる |
| VideoStep | 60,000円~ | PowerPoint感覚で簡単に作成・更新できる。AIで20か国語に自動翻訳、習熟度の可視化も可能 |
| Dive | 10,000円~ | AIが撮影動画を手順ごとに自動分割し、説明文を付け手順書を作成。150カ国語以上の自動翻訳 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年5月時点
5. 採用管理システム

応募者管理・面接設定・資格管理までをまかなう採用管理システムです。建設業特有の現場見学・資格確認のフローを組み込みやすく、慢性的な技能者採用の遅れや辞退ロスを減らす効果が期待できます。
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年5月時点
職人不足の対策でよくある質問
── ITに詳しい人がいなくてもツールは導入できる?
導入可能です。むしろ近年の建設業向けクラウドツールは、ITに不慣れな現場を前提に設計されています。選定時はツールの機能の多さではなく、次の3つのポイントで判断します。
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 操作画面 | シンプルな画面で操作が簡単か。専門用語が並んでいないか |
| 導入サポート | 初期設定の代行や、電話・チャットでの問い合わせ窓口があるか |
| 無料トライアル | 本契約の前に、現場の職人が実際に触って試せる期間があるか |
まずは無料トライアルで、パソコンが苦手な社員に操作してもらい、使用感を確認します。導入時の設定だけ提供元のサポートに任せてしまえば、IT担当者を置かなくても運用は回ります。
── 求人媒体以外で、職人にリーチする方法はある?
一般的な求人媒体だけに頼らず、複数のチャネルを組み合わせることで、出会える人材の幅が広がります。特にSNS発信は、若年層へのアプローチで効果を発揮します。求人票のスペックよりも、現場の空気感が伝わる30秒の動画のほうが響くケースも少なくありません。
| チャネル | 特徴 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 建設業特化のマッチングアプリ | 仕事を探す職人が登録している | 採用サイトにいない層に直接アプローチできる |
| 工業高校・職業訓練校との連携 | 卒業生の就職先として認知を広げる | 中長期で毎年1〜2名の安定採用が見込める |
| SNSでの施工事例発信 | InstagramやYouTubeで現場を発信 | かっこいい会社という印象が応募動機に直結 |
── 外国人材の活用をしたい
外国人材を受け入れるルートは、大きく分けて技能実習制度と特定技能ビザの2つです。それぞれの特徴は次のとおりです。どちらのルートを選ぶ場合も、住居・行政手続きといった生活支援体制を整え、自動翻訳に対応した動画マニュアルツールの活用など、受け入れ前に教育制度の多言語化も必須です。
1. 技能実習
監理団体を通じて受け入れるルート。手続きの多くを監理団体が代行してくれるため、自社の事務負担を抑えやすいのが特徴です。また、技能実習制度は、2027年4月から「育成就労制度」へと段階的に移行します。
2. 特定技能
企業が直接雇用するルート。日本語試験(JLPT N4以上など)と技能試験の合格が要件となり、即戦力としての受け入れが見込めます。