「MTTRの計算式は?」
「平均的な稼働率を正確に算出したい」
そこで、MTTRと稼働率の関係から、計算シミュレーション、現場で起きやすい数値ズレの防ぎ方、Excelなどで集計を仕組み化する方法まで、順に整理していきましょう。
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MTTRとは?かんたん解説
1. MTTRとは平均修復時間のこと
MTTRは「Mean Time To Repair」の略で、日本語では「平均修復時間」と訳されます。設備やシステムが故障してから復旧するまでにかかった時間の平均値を指し、保全活動の速度と質を測るうえで欠かせない指標です。
1点注意しておきたいのが、MTTRには実は2つの解釈が存在するという点です。
| 意味 | 詳細 |
|---|---|
| Mean Time To Repair(平均修復時間) | 故障した機器を修理して動作可能な状態に戻すまでの時間であり、製造業の設備保全で最も一般的に使われる定義 |
| Mean Time To Recovery(平均復旧時間) | システムが障害から完全に復旧し、サービスが再開されるまでの時間であり、IT運用やSREの文脈で多く用いられる |
現場では「Repair」と「Recovery」が区別されずに使われるケースが大半です。MTTRを運用する際には、どの定義を採用しているのかチーム内で明確にしておきましょう。
2. MTBFやMTTFとの違い
よく混同される指標にMTBFとMTTFがありますが、MTBFは「どれだけ長く動き続けるか」、MTTFは「壊れたときにどれだけ早く直せるか」を示す数値です。
| 名称 | 意味 | 詳細 |
|---|---|---|
| MTBF | Mean Time Between Failures(平均故障間隔) | ある故障から次の故障までの平均間隔で、修復可能な機器が対象 |
| MTTF | Mean Time To Failure(平均故障発生時間) | 稼働開始から最初の故障までの平均時間で、修復不可の機器が対象 |
修復できる設備にはMTTRとMTBFの両方を使って稼働率を算出します。また、MTTFは使い捨てセンサーのように交換前提の部品に用います。
3. MTTRが重要視される3つの理由
MTTRが保全・運用の現場で重視されるのには、大きく3つの理由があります。
1. ダウンタイムコストの定量化
MTTRで故障1回あたりのダウンタイムが定量化できるため、単位時間あたりの損失コストを掛ければ損失額も算出できる。設備投資の費用対効果を経営層に示す根拠になる。
2. 稼働率の算出
MTBFと組み合わせて稼働率を計算する。例えば「稼働率99.9%以上(年間ダウンタイム約8.76時間以内)」といった目標を掲げている現場では、MTTRの短縮が目標達成に直接貢献できる。
3. 文書化が求められる指標
ISO/IEC 20000やITILではインシデント管理のKPIとしてMTTRが広く用いられ、監査でも計測方法を問われるため、定義と算出プロセスの整備が必要である。
MTTRの計算シミュレーション
MTTR(平均修復時間)を計算できるようにしました。MTBF(平均故障間隔)と組み合わせて稼働率も算出できます。
MTTRの計算式
1. 基本の計算式
MTTRの計算式そのものはシンプルです。総修復時間を故障回数で割って求めます。
MTTR = 総修復時間 ÷ 修復回数
2. 製造ラインにおける計算例
よくある製造ラインを想定し、実際にMTTRを算出してみましょう。
| 故障発生日時 | 復旧完了日時 | 総修復時間(ダウンタイム) |
|---|---|---|
| 4月3日 午前9時00分 | 4月3日 午前11時30分 | 2時間30分 |
| 4月10日 午後1時00分 | 4月10日 午後5時00分 | 4時間00分 |
| 4月18日 午前10時00分 | 4月18日 午後1時30分 | 3時間30分 |
| 4月25日 午後3時00分 | 4月25日 午後6時30分 | 3時間30分 |
4月は4回故障が発生しており、総ダウンタイムは13.5時間でした。MTTRは約3時間23分かかっています。仮にMTTRの目標を2時間以内に設定しているなら、1件あたり平均1時間23分の短縮が求められます。
総ダウンタイム = 2.5 + 4.0 + 3.5 + 3.5 = 13.5時間
MTTR = 13.5時間 ÷ 4件 = 約3時間23分
また、MTTRには、定期メンテナンスのような計画的に停止させた時間は含めません。MTTRはあくまで予期しない故障に対する復旧パフォーマンスを測る指標であり、意図的な停止は計測対象外です。
3. MTTRとMTBFで稼働率を求める
稼働率の算出式は以下のとおりです。
MTBF = 総稼働時間 ÷ 総故障回数
稼働率(%) = MTBF ÷ (MTBF + MTTR) × 100
例えば、月の総稼働時間が「1日8時間×稼働日数20日=160時間」とすると、先ほどの例では総ダウンタイムは「13.5時間」でしたので、実際に動いていた時間は「160ー13.5=146.5時間」と計算できます。これを元にMTBFと稼働率を計算します。
MTBF = 146.5時間 ÷ 4件 = 36.625時間
稼働率 = 36.625 ÷ (36.625 + 3.375) × 100 = 91.6%
仮に稼働率の目標を99%以上に設定しているなら、差は7.4%もあります。MTTRの短縮だけでは届かず、故障そのものの頻度を下げる予防保全の強化も欠かせないことが、数値ではっきり見えるようになります。
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MTTRの計算がズレるポイント
1. 検知・対応・復旧時刻のずれる
MTTRの算出で最も多いズレは、計測の始点と終点が担当者間で統一されていないことです。
ある担当者はアラートが鳴った時刻を始点とし、別の担当者は現場に着いて作業を始めた時刻を始点にしていることがあります。終点にしても、機械が再稼働した時刻なのか、品質確認まで終えた時刻なのか、こうしたルールが曖昧なまま運用されている現場も少なくありません。
| 計測ポイント | 推奨する定義 |
|---|---|
| 始点(故障発生) | 監視システムのアラート発報時刻、または現場担当者が異常を報告した時刻のうち早いほう |
| 終点(復旧完了) | 設備が正常稼働を再開し、品質チェックが完了した時刻 |
この計測基準をあらかじめ社内で決めておけば、担当者ごとの解釈の違いを最小限に抑えられます。
2. 待機時間の扱いが異なる
もう1つよくあるズレが、部品の調達待ちや専門業者の到着待ちといった待機時間の扱いです。MTTRの計測範囲は、通常3つのフェーズに分かれます。
| フェーズ | 内容 | 修復時間に含めるか |
|---|---|---|
| 検知・通知 | アラートや目視で異常を検知し、担当者に連絡が届くまでの時間 | 含める |
| 診断・対応 | 原因の特定、部品の手配、修理作業など復旧活動にかかる時間 | 含める |
| 待機・ロジスティクス | 交換部品の到着待ちや専門技術者の移動にかかる時間 | 組織のルールによる |
3番目の待機時間をMTTRに含めるかどうかは、組織のポリシー次第です。待機時間を含めれば、生産ラインやユーザーが体感するダウンタイムを正確に反映できます。一方で除外すれば、保全チームの技術力そのものを評価しやすくなります。
IEC61703(国際規格)では待機時間を含む総ダウンタイムベースの定義が採用されていますが、社内レポートでは純粋な作業時間だけを計測している現場も珍しくありません。大切なのは、どちらの定義を採るかを統一し、文書に残しておくことです。
3. 計画停止を混同する
定期メンテナンスや年次点検のために計画的に停止した時間をMTTRの計算に含めてしまうと、値が不当に大きくなります。
MTTRはあくまで「計画外の故障」に限定して計算する指標です。月次レポートを作成する際には、障害記録に「計画停止 / 計画外停止」のフラグを付けておき、集計時に計画停止を除外するフィルタをかける運用を徹底しましょう。
MTTRの計算を効率的にする方法
1. MTTR計算ができるExcelテンプレートを使う
MTTRの算出をExcelで自動化するなら、障害記録を統一フォーマットで記録することが出発点です。
| 項目名 | 入力例 | 備考 |
|---|---|---|
| 障害ID | INC-2025-001 | 連番で自動採番 |
| 発生日 | 2025/06/15 | 日付形式で統一 |
| 設備名・システム名 | プレス機A-03 | ドロップダウンリストで選択式にすると表記ブレを防止できる |
| 故障検知時刻 | 09:15 | アラート発報 or 異常確認の時刻 |
| 対応開始時刻 | 09:30 | 担当者が修理に着手した時刻 |
| 復旧完了時刻 | 11:45 | 正常稼働を確認した時刻 |
| ダウンタイム(時間) | 2.5 | (復旧完了時刻 − 故障検知時刻)×24 で自動計算 |
| 故障原因分類 | 機械的故障 | 機械的故障・電気的故障・ソフトウェア・人的要因 ・その他 |
| 対応者 | 山田太郎 | 必須 |
| 計画外/計画停止 | 計画外 | MTTRの集計時に「計画外」のみフィルタ |
2. 設備保全管理システムで自動集計する
Excelはすぐに始められる反面、入力漏れや記録タイミングのばらつきが避けられません。月の障害件数が10件を超えるような現場なら、設備保全管理システム(CMMS)への移行を検討すべきです。CMMSは、設備台帳の管理、作業指示の発行・管理、部品在庫管理、保全履歴を一元的に記録できます。
CMMSのメリット
- 作業指示を「開始」したタイミングと「完了」したタイミングがシステム上に自動記録
- 蓄積されたデータからMTTR、MTBF、稼働率などを自動計算し、ダッシュボードに表示
- どの設備のMTTRが悪化しているか、どの故障原因分類が多いかといった分析機能
まずExcelの記録フォーマットを整え、件数が増えた段階でツールを導入しましょう。この順番で進めれば、現場の混乱を抑えながら計測の精度を上げられます。