「Excelの需要予測モデルが限界」
「主力SKUが欠品する一方、過剰在庫もある……」
そこでAI需要予測でできることから、他社の導入事例、自社にに合わせた選び方、主要ツールの比較、よくある質問まで、需給担当者の判断軸を1つずつ紐解いていきましょう。
DXの事例や機能を1冊に、「DXまるわかりガイド」全67ページ
CONTENTS
AI需要予測とは?4つのポイント
AI需要予測とは、過去の販売実績や在庫データに加え、気象・カレンダー・販促といった外部要因をAIが取り込む仕組みです。日次や週次、SKU単位(最小の管理単位)で必要量を自動算出します。食品・製造・小売で導入が進む理由は、次の4つです。
1. 多変量データで予測精度を上げる
移動平均や指数平滑では捉えられない突発的な需要変動を、AIは複数のデータを組み合わせて予測します。
| 項目 | 従来の統計手法 | AI需要予測 |
|---|---|---|
| 使うデータ | 過去実績(1変量)中心 | 実績・気象・販促・カレンダー・SNSなどの多変量 |
| 予測モデル | 移動平均・指数平滑・季節指数 | 機械学習・深層学習・アンサンブル |
| 粒度 | 月次・カテゴリ単位が中心 | 日次・週次・SKUと拠点単位まで対応 |
2. 自動学習で属人化を解消する
需給計画はベテラン担当者の経験に頼りやすく、異動や退職で精度が一気に落ちる業務です。AIはモデルを自動で学習し直すため、担当者が変わっても予測の水準を保てます。
属人化を解消する仕組み
- 予測ロジックをAIが自動選択し、担当者のノウハウを標準化する
- 販売実績が更新されるたびモデルを自動再学習する
- 担当者の補正内容をログ化し、教育資料として再利用する
3. 過剰在庫と欠品を同時に減らす
過剰在庫と欠品が同時に起きるのは、カテゴリー単位で予測しているからです。これでは、SKUごとの需要のばらつきが平均に丸められてしまい、売れる品は足りず、売れない品は余ります。AIならSKUや拠点ごとに個別の予測値を出せます。日配品は短期、定番品は中期と、商品の性格に合わせて予測の期間も変えられます。
導入後に期待できる主な改善
- 欠品率低下による機会損失の抑制
- 廃棄と返品率削減による原価管理の改善
- 需給計画や発注業務の工数削減
予測データの粒度を上げると、在庫回転率と欠品率のバランスを取り直す余地が生まれ、経営指標と直結した改善が可能になります。
4. 操作性が高くて生産性が上がる
AI需要予測ツールは操作性が高いため、初めての人ですぐに扱えるようになります。以下の一般的な画面のデモです。
※ 画面とデータはデモ用であり、実際の製品とは異なります。
脱アナログから一元管理まで、
現場が変わった24社のリアルを公開
業種や機能ごとのDX成功事例を1冊に。自社に合うヒントがきっと見つかります。
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AI需要予測の導入事例3選
CASE1. 人が気付く前にAIが需給のリスクを知らせる形に

導入前の悩み
すべての商品に対して、需要や販売量の変化をとらえ、素早く生産計画に反映するのは至難の業。先を読むことが難しくなる中、生産と販売のギャップが生じることが多くなっていたのです。
取締役 生産・SCM本部長 小堀伴之様
導入後の変化
生産調整などアラート発生後のアクションがこれまで以上に素早くなり、市場ニーズの変化に迅速に対応することができる。過剰在庫や欠品リスクの低減につながります。
取締役 生産・SCM本部長 小堀伴之様
現場で起きた主な出来事
- SCM部の一本化により、倉庫・店舗など社内外の組織間の情報を緊密に結合・連動しやすくなった
- 以前はこれを人が分析・判断していたが、人が気付く前にAIがリスクを知らせてくれる
- 福岡工場で製造するインスタントラーメン商品では、需要予測から生産計画までの自動立案を先行運用し、成果を上げているという
※ ハウス食品株式会社「ハウス食品グループの挑戦 ~AIを活用した需要予測で『市場変動への迅速な対応』と『食品ロス削減』の二兎を追え!」2022年1月14日
CASE2. AIの自動発注を2店舗で試し、発注時間が約85%短縮

実証での1日の発注作業時間
約85%短縮
導入前の悩み
ヤオコーが従来採用していた自動発注システムは、イレギュラーな需要変動や棚割システムには対応しておらず、熟練担当者が一定の時間をかけて発注業務を行っていました。
株式会社ヤオコー
導入後の変化
店舗ごとの棚割システムと連係させることにより、特売や商品入替も考慮した発注量を提示できるため、在庫および納品量の削減と適正化を実現しました。これにより、店舗での品出し作業が軽減されるなど、売場における業務効率化にも貢献しています。
株式会社ヤオコー
現場で起きた主な出来事
- ヤオコーでの自動化率は従来システムの約65%から約98%に向上し、発注業務の負担を低減することが可能となった
- 各店舗で毎朝、システムにより推奨された発注量を確認するのみで発注作業が完了できる
※ 株式会社ヤオコー「ヤオコーが、日立、オプティマムアーキテクトとの協創により、需要予測に基づく自動発注システムを全店で稼働」2023年2月21日
CASE3. 新商品の需要予測をAIで再現できるか試した

導入前の悩み
現在、食品や飲料メーカーにおける商品の需要予測の多くは、デマンドプランナーの属人的な知見やノウハウに基づいて行われます。しかし、既存品に比べると新商品の需要予測は誤差率が高く、欠品や過剰在庫の発生可能性が高くなります。
アサヒ飲料株式会社
導入後の変化
その結果、類似度ランキングトップ10では過去、人によって選択された商品の7割程度を再現すると同時に、デマンドプランナーが考慮しているものの、データ化できていない要素を明確化できました。
アサヒ飲料株式会社
現場で起きた主な出来事
- 商品別では、発売5週間前時点で3~4割、発売翌日時点では4割の商品で、AI予測が現行オペレーションの予測精度を上回った
※ アサヒ飲料株式会社「NEC、AIによる新商品需要予測と予測精度マネジメントによる収益拡大に向けた戦略立案高度化の実証実験をアサヒ飲料と実施」2023年12月20日
AI需要予測システムの選び方
STEP1. 基幹システムとのデータ連携の可否
AI需要予測は単体で動きません。販売管理・在庫管理・生産管理といった基幹システムから、実績を自動で取り込む必要があります。「APIやSFTPで自動連携できる」か「CSVを毎回手で書き出す」という違いだけでも、年間工数で数百時間に及びます。
データ連携の確認ポイント
- 販売実績や在庫データを取り込む方式
- 予測結果を生産計画や発注システムへ戻す方式
- マスター変更(新しいSKU追加、廃番)を反映する頻度と方法
- データ更新の失敗時の検知とリカバリー手順
STEP2. 予測精度の実績とPoC提供の有無
ベンダー資料に載っているMAPE(平均絶対誤差率)の改善率は、代表事例の値であることが多く、自社で再現できるとは限りません。PoC(試験導入)で自社の実績を流し、目標KPIにどこまで届くかを確かめます。
予測精度の確認ポイント
- 自社と似た業種・SKU規模の導入事例が公開されているか
- PoCの期間・費用・データ提供範囲が明示されているか
- 現行のExcel予測と同じ条件で精度を比べられるか
- MAPE・WMAPE・在庫金額など評価KPIを先に合意できるか
- 予測が外れた要因を担当者が確認できるか
STEP3. 自社データ量・粒度との適合
AI需要予測は学習データの量と質が精度を決めます。過去2〜3年分、日次・週次、SKU×拠点粒度のデータが揃っているかを事前に棚卸しします。
1. 最低限必要なデータ
販売実績(過去2〜3年分、SKU×日次または週次)、商品マスタ、拠点マスタ、販促・特売履歴といった4点が揃わないと、AIモデルは十分な精度を出しません。
2. 精度を伸ばす外部データ
気象データ、カレンダー(祝日・イベント)、経済指標、SNSトレンドなどを、ツール側で自動取得できるか、API連携が必要かをベンダーに確認します。
3. データが不足する場合の対処
新商品や短期実績しかないSKUは、類似商品の実績を代替学習させる「転移学習」に対応したツールを選ぶと、立ち上がりが早くなります。
STEP4. 現場担当者が納得して扱えるか
予測が外れたとき、どの要因がどれだけ効いたかを見られる仕組みは、選定の必須条件です。営業や生産部門に説明する場面の多いBtoBでは、「なぜこの数字か」を語れないと現場は納得しません。
説明性のチェックポイント
- 予測値に対する要因分解(気象・販促・トレンドの寄与度)を可視化できるか
- 過去の予測と実績の乖離が大きかった商品を、自動でリストアップできるか
- 担当者が手で補正した数値を、システムが保持して学習に使えるか
需給計画の担当者は、統計や機械学習の専門家ではありません。予測の確認、補正、承認までを迷わず操作できる画面かどうかも、トライアルで確かめましょう。
汎用型AI需要予測ツール
業種を問わず、CSVを流し込むだけで予測モデルを構築できるSaaS群です。中小〜中堅企業のPoCから本番運用まで幅広く対応し、AI人材が不足していても導入を進められます。
Prediction One

ソニーネットワークコミュニケーションズが提供する国産のノーコードAI予測分析ツール。CSVを読み込ませるだけで需要予測・離反予測・売上予測などをGUIで実行できて、DX初心者でも扱いやすい設計です。デスクトップ版とクラウド版があり、無料トライアルも用意されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| サービス名 | Prediction One |
| 料金 | 要問い合わせ(30日間の無料トライアルあり) |
| おすすめ企業 | AI人材が不足している中小〜中堅企業、まずはスモールスタートで需要予測を試したい企業 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
UMWELT

TRYETINGが提供するノーコードAIクラウド。需要予測・在庫管理・生産計画などをアルゴリズムのブロック組み合わせで自動化できます。日付・品番・数量など3列のCSVがあれば需要予測を開始できて、RPA機能によるデータ前処理まで一気通貫で対応しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| サービス名 | UMWELT |
| 料金 | 要問い合わせ(定額制) |
| おすすめ企業 | 複数拠点と多品目を扱う製造業・小売業、需要予測と業務自動化をまとめて実現したい企業 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
Forecast Pro

米Business Forecast Systems社製の需要予測パッケージ(日立ソリューションズ東日本が日本代理店)。ARIMA・指数平滑・Crostonなど複数の統計モデルを自動比較する「エキスパートセレクション」で候補モデルを提示し、担当者がロジックを理解しながら精度を追い込めます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| サービス名 | Forecast Pro |
| 料金 | 1名あたり199ドル〜(年間契約) |
| おすすめ企業 | 需給計画の専任担当者がいる中堅〜大手製造業、S&OP会議で予測根拠の説明が求められる企業 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
簡単らくらく需要予測One
キヤノンITソリューションズが提供する、需給計画・SCM統合ソリューションです。自社のSCMコンサル知見を組み込み、需要予測に加え生産計画・在庫最適化・PSI計画までワンパッケージで提供します。

株式会社チェスが提供するWindows向けの需要予測ソフト。統計解析・時系列解析・ディープラーニングを含む複数のアルゴリズムを内蔵し、AIや統計の専門家がいなくても過去の売上や仕入実績から需要予測を実施できます。大手ECサイトで購入でき、買い切りで扱えます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| サービス名 | 簡単らくらく需要予測One |
| 料金 | 32,780円 |
| おすすめ企業 | 中小企業や個人事業主、まずはローカルPCで需要予測を試したい企業 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
業種特化型AI需要予測ツール
特定業界のSCM業務に最適化されたパッケージです。データ設計と業務フローが業界標準に沿っており、立ち上がりが速いのが特徴。流通・小売・製造それぞれの現場感覚に合わせて選べます。
sinops-CLOUD

株式会社シノプスが提供する、需要予測型自動発注のクラウドサービス。日配品など賞味期限の短い商品にも対応し、AIで「何を・いつ・どれだけ」必要かを高精度に予測します。需要予測ソフト市場でNo.1シェアです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| サービス名 | sinops-CLOUD |
| 料金 | 要問い合わせ(1店舗・1機能からのスモールスタート導入が可能) |
| おすすめ企業 | スーパー・ドラッグストア・食品小売など。店舗発注業務の属人化と食品ロスに悩む流通企業 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
FULL KAITEN

フルカイテン株式会社が提供する、在庫を利益に変える分析クラウド。ECや店舗、倉庫の販売・在庫データからAIが全SKUの消化スピードを予測し、売上から粗利までのキャッシュフローの最大化を支援します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| サービス名 | FULL KAITEN |
| 料金 | 要問い合わせ |
| おすすめ企業 | ECと実店舗を併用するアパレル、雑貨、スポーツ用品などSKU数の多い小売企業 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
FOREMAST

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| サービス名 | FOREMAST |
| 料金 | 要問い合わせ(プロジェクト規模に応じた個別見積り) |
| おすすめ企業 | 需要予測だけでなく生産・在庫・S&OPまで統合したい中堅〜大手製造業 |
※ 月額料金は一般的なプランにおける価格設定
※ 2026年9月時点
AI需要予測でよくある4つの質問
── 初期費用や月額料金の相場は?
ノーコード型は月額数万円から、業種特化型SaaSは月額20万〜50万円が目安です。ただし提供形態で費用の幅が大きく、正確な金額は問い合わせて見積もりを取るのが基本です。
| タイプ | 初期費用 | 月額費用 |
| ノーコードツール | 0〜30万円 | 数万円〜20万円 |
| 業種特化型SaaS | 50万〜100万円 | 20万〜50万円 |
── どのくらいの過去データがあれば導入できる?
SKU×日次または週次で、過去2〜3年分の販売実績があれば精度を出しやすくなります。実績が足りなくても、販売管理システムからCSVを出せて、商品・拠点マスタが整っていれば、PoCから始められます。
| データの状態 | 導入可否 | 推奨アクション |
| 過去2〜3年分・日次 | そのまま導入可能 | 気象・販促データを追加して精度向上を狙う |
| 過去1年・週次 | 限定的に導入可能 | 季節性の再現に注意し、外部データで補完 |
| 過去半年未満・新商品 | 単独では困難 | 類似商品の実績を使う転移学習型ツールを検討 |
── 導入から本番稼働までどのくらいかかる?
ツールの規模と連携範囲で変わりますが、標準的な流れは次の5段階です。
標準的な導入スケジュール
- 要件定義・データ棚卸し(2〜4週間)
- 一部SKU・拠点で精度検証(1〜3カ月)
- 基幹システムとのAPI・CSV連携構築(1〜2カ月)
- 現場トレーニング・並行運用(1カ月)
- 本番稼働・全社展開(3〜6カ月かけて段階拡張)
ノーコード型なら、立ち上げまでの期間はこれより短く済むことが多いです。
── 導入に失敗するケースはどんなパターン?
AI需要予測でうまくいかない原因は、ツールの性能ではなく組織側の準備不足であることがほとんどです。
失敗を避けるためのポイント
- マスタ整備・データクレンジングを先に済ませ、汚れたデータで学習させない
- KPI(在庫金額・欠品率・MAPE)を先に合意し、効果測定の物差しを固定する
- 営業・生産・物流の現場を巻き込み、予測結果を業務に反映する仕組みを作る
- 1拠点・一部SKUでスモールスタートし、成功体験を作ってから全社に広げる
- ベテラン担当者の補正ノウハウをAIに学習させる運用ルールを決めておく
うまくいく企業は、「AIツールを入れること」をゴールにしていません。「予測結果を発注や生産計画にどう反映するか」という業務の流れから設計しています。ツール選びと同じだけ、社内の運用設計に時間をかけましょう。