「初めて経審を受けるときの準備は?」
「経審の点数アップのコツは?」
そこで、経審の基礎知識から仕組み、具体的な点数アップ方法、申請の流れ、日々の業務管理との関連性まで見ていきましょう。
DXの事例や機能を1冊に、「DXまるわかりガイド」全67ページ
CONTENTS
1分でわかる経営事項審査とは?
経営事項審査の目的
経営事項審査(経審)とは、建設業者の経営状況や技術力を国が定めた基準で数値化する審査制度です。建設業法第27条の23に基づく法定の制度で、「経営状況」「経営規模」「技術力」「その他の審査項目」の4分野で評価されます。
公共工事の入札に参加するための必須条件であり、公共工事を請け負う建設業者は必ず受ける必要があります。
経審を受けるメリット
経審には、公共工事の入札参加以外にも次のようなメリットがあります。
1. 会社の信用力が上がる
経審の結果は一般公開されるため、取引先や顧客が閲覧できます。高評価は経営基盤の安定を客観的に示す材料になります。
2. 民間工事の受注機会が広がる
民間でも、経審の受審や一定以上の点数を発注条件にする事業者があります。受審していること自体が新たな商談につながります。
3. 自社の経営状態を客観視できる
評価項目の確認を通じて、自社の強みと弱みが数値で見えてきます。点数アップの取り組みは、そのまま経営改善になります。
4. 融資審査で有利になる
金融機関は経審の結果を客観的な審査資料として活用します。公共工事という安定収益源の証明にもなり、資金調達の場面でプラスに働きます。
経審点数(P点)の計算シミュレーション
代表的な指標から経審点数(P点)を簡易的に試算してみましょう。本来、経審点数(P点)は国土交通省告示の評点テーブルで算出されます。そのため、正確な点数は所轄行政庁または専門家に確認することになります。
※ 実際の計算結果は条件によって異なる場合があります。本計算結果はあくまでも目安としてご利用ください。
経審の評価5項目の計算式
経審は、建設業許可の業種ごとに総合評定値(P点)で評価されます。P点は5つの評価指標を以下の式で算出します。
P点=(0.25×X1)+(0.15×X2)+(0.20×Y)+(0.25×Z)+(0.15×W)
各指標(X1・X2・Y・Z・W)の評価内容と評点範囲は次のとおりです。
| 評点 | 評価内容 | ウェイト | 評点範囲 | ポイント |
|---|---|---|---|---|
| X1 | 完成工事高 | 25% | 390~2,309点 | 企業規模を示す基本指標 |
| X2 | 自己資本額・平均利益額 | 15% | 454~2,280点 | 財務基盤の規模を評価 |
| Y | 経営状況 | 20% | 0~1,595点 | 財務の健全性を評価 |
| Z | 技術力 | 25% | 450~2,366点 | 技術職員数と元請実績 |
| W | その他審査項目(社会性など) | 15% | -1,995~2,074点 | 各種取り組み姿勢を評価 |
※ 2026年4月時点
X1(経営規模を示す指標)
X1は完成工事高を評価する指標です。業種別の2年平均または3年平均の完成工事高を、評点テーブルに当てはめて算出します。規模そのものを見る指標のため、売上が大きい会社ほど有利になる傾向があります。
X2(財務基盤を示す指標)
X2は自己資本額と平均利益額を評価する指標です。下記の式で算出し、自己資本額は2年平均にするかどうかを選択できます。
X2=(自己資本額+平均利益額)÷2
Y(財務健全性を示す指標)
Y点は会社の財務健全性、つまりつぶれにくい会社かどうかを評価する指標です。次の8項目から算出します。
Y点の審査項目
- 純支払利息比率
- 負債回転期間
- 売上高経常利益率
- 総資本売上総利益率
- 自己資本対固定資産比率
- 自己資本比率
- 営業キャッシュフロー
- 利益剰余金
Z(技術と実績を示す指標)
Z点は技術職員数と元請完成工事高を評価する指標です。技術職員は資格ランクが高いほど加点され、有資格者の確保が点数アップに直結します。
W(社会的取り組み姿勢を示す指標)
W点は、X・Y・Z以外の社会性等を評価する指標です。主な審査項目は次のとおりです。W点は業種に関係なく全社共通で評価されるため、点数アップが狙いやすい項目でもあります。
W点の審査項目
- 労働福祉の状況(社会保険加入、建退共、退職金制度、法定外労災など)
- 担い手の育成・確保(若年技術者の育成、CPD単位取得など)
- 営業年数
- 防災協定の締結の有無
- 法令遵守の状況
- 建設業経理の状況
- 建設機械の保有台数
- ISO・エコアクション21の登録の有無
- CCUSの活用状況
- ワーク・ライフ・バランス(えるぼし・くるみん・ユースエール認定)
以上の各評点を合わせて、平均700点になるように設計されています。そのため、平均的な建設業者であれば700点前後、大規模な工事に参加するには1,000点以上が一つの目安です。
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経審の点数を上げる7つのコツ
1. W点を押さえる
経審点数アップで最も即効性が高いのがW点対策です。なかでも次の3つは多くの会社で対応可能な加点項目であり、3つすべて対策すれば、P点は約60点アップします。売上を1億円から2億円に倍増させてもP点は約20点しか伸びないことを考えると、この効果の大きさがわかります。
| 対策 | 加点(W点) | P点への影響 |
|---|---|---|
| 建退共(建設業退職金共済)の加入・履行 | +15点 | 約+19点 |
| 退職一時金制度または企業年金制度の導入 | +15点 | 約+19点 |
| 法定外労災保険への加入 | +15点 | 約+19点 |
※ 2026年4月時点
2. 技術者の資格を取得する
Z点をアップさせるには、技術者の資格取得が効果的です。技術者の評価点は資格ランクによって異なります。特に効果的なのが「監理技術者講習」の受講です。一級技術者が1日の講習を受けるだけで、評価点が5点から6点にアップします。
| 資格ランク | 評価点 |
|---|---|
| 一級技術者+監理技術者講習受講 | 6点 |
| 一級技術者 | 5点 |
| 基幹技能者 | 3点 |
| 二級技術者 | 2点 |
| その他技術者 | 1点 |
※ 2026年4月時点
ただし、有効期間は5年なので、期限切れには注意が必要です。新たに資格保有者を採用する場合は、6か月超の雇用関係が必要な点も押さえておきましょう。
3. 建設業経理士を取得する
W点の審査項目「建設業の経理の状況」では、建設業経理士の資格保有者数が評価されます。技術系の資格と違い、事務職でも取得できるのが大きなメリットです。経理部門で建設業経理士の取得を推進すれば、W点アップが狙えます。
| 資格 | 評価係数 |
|---|---|
| 公認会計士 | 1.0 |
| 会計士補 | 1.0 |
| 税理士 | 1.0 |
| 1級建設業経理士 | 1.0 |
| 2級建設業経理士 | 0.4 |
※ 2026年4月時点
4. 完成工事高を選択する
X1点の完成工事高は、2年平均と3年平均のどちらかを選んで申請できます。年度によって工事高に変動がある場合、有利なほうを選ぶだけで点数アップが可能です。
例えば、直近3年間の完成工事高が「令和5年度=5,000万円」「令和4年度=4,000万円」「令和3年度=3,000万円」のような場合、2年平均の4,500万円 ほうが3年平均の4,000万円より金額が増えるため、2年平均を選んだほうが有利です。
(5,000万円+4,000万円)÷2年=4,500万円
ただし、複数業種で経審を受ける場合は、選択した平均年数がすべての業種に適用されます。業種ごとに使い分けることはできないため、事前のシミュレーションが欠かせません。
5. 完成工事高の業種間振替を活用する
X1点を上げる手段として、「完成工事高の業種間振替」という制度があります。特定の専門工事の実績を、関連する別の業種に合算して申請できる仕組みです。例えば、とび・舗装工事の完成工事高を土木一式工事に振り替えれば、土木一式の工事高が増えて点数アップにつながります。
一式工事への振替例
| 振替先 | 振替元 |
|---|---|
| 土木一式工事 | とび・土工、石、鋼構造物、舗装、しゅんせつ、塗装、水道施設、解体 |
| 建築一式工事 | 大工、左官、とび・土工、石、屋根、タイル・れんが・ブロック |
専門工事間の振替例
| 相互振替① | 相互振替② |
|---|---|
| とび・土工 | 石、舗装、造園、さく井、解体 |
| 板金 | 屋根 |
振替可能な業種は国や自治体ごとに細かい決まりがあるため、事前確認が必要です。また、振替元の業種では経審を受けられなくなる点にも注意してください。例えば舗装工事の売上をすべて土木一式に合算すると、その年は舗装工事単独での申請ができません。
6. 財務体質を改善する
Y点は会社の財務健全性を示す指標で、向上には中長期的な経営改善が必要です。
| 改善策 | 詳細 |
|---|---|
| 自己資本比率の向上 | 借入金の繰上返済、支払利息も減らす |
| 利益率の向上 | 受注単価の見直し、原価管理を徹底する |
| 不要な資産の処分 | 遊休資産を売却して固定資産を減らす |
加えて、経費を可能な限り「原価」ではなく「一般管理費」に計上し、売上総利益率を上げるなど、決算書の作成で工夫できる余地もあります。
7. CCUS・えるぼし・くるみん認定・ISOなどを取得する
近年の経審改正で、次の取り組みが新たな加点対象となりました。特にCCUSは国があらゆる工事での完全実施を目指しているため、今後さらに加点が拡大する可能性があります。早めの登録が、将来的な点数アップにつながります。
| カテゴリ | 取り組み内容 | 加点 |
|---|---|---|
| CCUS(建設キャリアアップシステム) | 元請のすべての公共工事で活用 | +10点 |
| CCUS(建設キャリアアップシステム) | 元請の民間工事含む全ての工事で活用 | +15点 |
| ワーク・ライフ・バランス認定 | えるぼし認定(3段階目以上) | +5点 |
| ワーク・ライフ・バランス認定 | くるみん認定 | +5点 |
| ワーク・ライフ・バランス認定 | ユースエール認定 | +5点 |
| ISO・エコアクション21 | ISO9001登録 | +5点 |
| ISO・エコアクション21 | ISO14001登録 | +5点 |
| ISO・エコアクション21 | エコアクション21認証 | +3点 |
ワーク・ライフ・バランス認定は複数の認定がある場合、最も配点の高い1つのみが評価対象です。ISO14001とエコアクション21も重複加点されません。また、2026年7月1日施行の改正で、ワーク・ライフ・バランス認定の指標が段階別の評価に変わります。
経営事項審査の2026年の改正内容
1. 建設技能者を大切にする企業の自主宣言の加点(令和8年7月1日施行予定)
今回の改正で、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」(職人いきいき宣言)が新たな加点対象になります。ポータルサイトでの申請受付は2025年12月12日から始まっています。
自主宣言の取組項目
- 労務費の確保・賃金の支払い
- CCUS(建設キャリアアップシステム)の活用
- 宣言企業との取引優先
W点で+5点の加点が見込まれています。加点を受けるには、「審査基準日が宣言日以降であり、宣言書と誓約書が提出されていること」が条件となる予定です。
2. 社会保険未加入に関する減点項目の削除(令和8年7月1日施行予定)
2020年10月施行の建設業法にて、建設業許可の取得・更新要件に社会保険への加入が追加されました。許可の更新期間は5年なので、2025年10月以降に許可を保有する業者は、すでに社会保険加入が前提となっています。こうした背景から、経審の社会保険未加入による減点項目は削除される予定です。
3. CCUSの配点見直し(令和8年7月1日施行予定)
自主宣言制度の導入にあわせて、CCUSの配点も見直しされます。CCUSと自主宣言をセットで取り組むことで、最大15点の加点を維持できる設計です。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| CCUSの活用(最大) | +15点 | +10点 |
| 自主宣言 | – | +5点 |
| 合計(最大) | +15点 | +15点 |
経審申請するまでの4ステップ
STEP1. 決算変更届の提出
決算変更届は経審の有無に関わらず、すべての建設業許可業者に義務付けられた手続きです。決算日から4カ月以内に許可行政庁へ提出します。経審を受ける場合は、工事経歴書や財務諸表を消費税抜きで作成する必要があります。消費税込みで作成すると申請のやり直しになるため注意してください。
STEP2. 経営状況分析の申請
登録経営状況分析機関に財務諸表などを提出し、Y点(経営状況評点)を算出してもらいます。登録経営状況分析機関一覧は国土交通省に掲載されており、どの機関に申請するかは自由です。手数料は機関により異なりますが8,000〜14,000円程度で、申請後3日〜1週間で結果通知書が届きます。
STEP3. 経営規模等評価申請・総合評定値請求
許可行政庁(都道府県または国土交通省)に経営規模等評価申請と総合評定値請求を行います。これがX1・X2・Z・W点を算出するための申請です。申請手数料は1業種につき11,000円で、審査対象業種を追加するごとに+2,500円加算されます。
STEP4. 総合評定値通知書の受領
経営規模等評価申請から約1ヶ月後に、総合評定値通知が届きます。通知書の有効期限は審査基準日から1年7ヶ月です。公共工事を受注したい場合は、この期間内に入札参加資格の申請・受注を済ませる必要があります。継続して入札に参加するには、毎年経審を受け続けなければなりません。
経審に関するよくある質問
── 経審にかかる費用は?
主な費用は以下3つです。業種数が多いほど手数料も高くなります。
| 改善策 | 詳細 |
|---|---|
| 経営状況分析手数料 | 8,000〜14,000円 |
| 経営規模等評価申請手数料 | 11,000円+(2,500円×業種数) |
| 行政書士報酬 | 10万〜15万円 |
── 経審申請は自分でできる?
可能ですが、申請書類の作成や裏付け資料の準備には専門知識と時間が必要です。以下の場合は行政書士に依頼することをおすすめします。毎年の経審に慣れてきたら、自社で対応しましょう。
行政書士への依頼がおすすめのケース
- 初めて経審を受ける
- 本業に集中したい
- 再提出やミスのリスクは排除したい
── 決算後にできる経審対策は?
経審の評価は「審査基準日時点」の状況で判断されるため、決算期を過ぎてから当年度の経審に反映させることはできません。
ただし、次年度の経審に向けた準備は決算後すぐに始められます。建退共の加入手続き、CCUS導入、各種認定の申請などは準備期間が必要なため、早く動くほど有利です。年間を通じた計画的な取り組みが、翌期の点数を左右します。
── 複数の業種で経審を受ける際の注意点は?
以下の3点に注意が必要です。
1. 建設業許可を取得していること
経審は建設業許可を受けている業種でのみ申請ができます。例えば「土木」と「舗装」の2業種で経審を受けたい場合、両方の建設業許可を取得していなければなりません。
2. 完成工事高を業種ごとに区分
会社全体の売上をまとめて申請するのではなく、「この工事は土木」「この工事は舗装」と、完成工事高を業種ごとに分けて計上する必要があります。区分が曖昧だと、虚偽申請を疑われる原因になりかねません。
3. 技術職員は1人につき最大2業種まで
経審でカウントできるのは1人につき最大2業種までと決められています。例えば土木・舗装・水道の3業種で経審を受けたい場合、1人の技術者を3業種すべての加点に使うことはできません。
── 経審でよくある失敗は?
1. 消費税の税抜・税込の間違い
経審を受ける場合、工事経歴書・財務諸表・工事施工金額はすべて消費税抜きで作成する必要があります。消費税込みで作成すると申請のやり直しになります。また、インボイス登録事業者は消費税課税事業者にあたるため、必ず税抜金額で申請してください。
2. 工事経歴書と契約書の不一致
経審では、工事経歴書に記載された実績のうち金額の大きい上位3件について、契約書等で確認が行われます。次のような不整合があると受付不可となり、修正後の再提出が必要です。
不整合の例
- 工事経歴書と契約書の金額が一致しない
- 工事名や工期が異なる
- 裏付け資料が用意できない
3. 審査基準日までに加入・認定が間に合わない
W点の加点項目は、審査基準日(決算日)時点で加入・認定されている必要があります。決算月の直前に慌てて対応しても間に合わないケースが多いため、年間を通じた計画的な準備が欠かせません。また、審査で指摘・差し戻しが発生すると、企業は次のようなリスクを抱えます。
| リスク | 内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 入札の機会損失 | 書類の記載ミスや添付漏れにより、本審査で指摘・差戻しが発生 | 公共工事の入札参加資格の申請期限に間に合わなくなる可能性 |
| 1年間のペナルティ状態 | 経審は年1回のみのため、申請ミスによる低評価が次回まで続く | 翌年まで不利なランクで戦わなければならない。 |
── 経審の点数はどこで確認できる?
経審の結果(総合評定値通知書)は、一般財団法人建設業情報管理センター(CIIC)の「経営事項審査結果公表システム」で誰でも閲覧できます。自社だけでなく、競合他社の点数や内訳も確認可能なため、入札ライバルの実力把握や、自社の強化ポイントを見つけるベンチマークとして活用できます。