「FAX対応でリモートワークできない」
「手入力と確認作業で1日が終わってしまう…」
社内でDXを推進していても、FAX業務だけが取り残されていることは多いです。そこで脱FAXがもたらすコスト削減などのメリットから、チェックリスト、成功事例、自社に最適なサービスの選び方までを、「取引先との兼ね合いで…」から一歩踏み出しましょう。
脱FAXとは?得られる3つのメリット
FAXは1980年代から日本のビジネス現場で重宝されてきた通信手段です。しかし、今では年間数百万円のコストと膨大な作業時間を費やしているケースも少なくありません。脱FAXとは、このアナログなFAX業務をクラウドサービスやメール、専用システムなどに置き換えることを指します。
インターネットFAXやクラウドFAXといったサービスを活用すれば、相手先には何の変更も求めることなく、FAX番号を残したまま業務をデジタル化できます。
1. 煩雑な手作業からの解放される
FAX業務には多くの手作業が潜んでいます。「機器まで移動する、紙を取り出す、デジタル化して関係各所に配布する、紙やインクを補充する」といった一連の作業だけでも、1件あたり平均5〜10分の時間を要するでしょう。脱FAXをすると20分程度が3分程度に短縮されます。
| 従来のFAX業務フロー | 脱FAX後の業務フロー |
|---|---|
| FAX機まで移動して受信確認(往復3分) | メールやチャットで受信通知を確認(10秒) |
| 内容確認と仕分け作業(2分) | PDFファイルをPC上で開いて内容確認(30秒) |
| 担当者への配布またはスキャン作業(5分) | ワンクリックで担当者に転送(5秒) |
| 返信が必要な場合は手書きまたは印刷して送信(10分) | 電子データのまま編集して返信(2分) |
月間500件のFAXを処理している企業の場合、月83時間もの作業時間を削減できる計算になります。さらに、受信したデータは自動的にクラウド上に保存されるため、過去の取引履歴を探す時間も大幅に短縮されます。
2. 用紙や通信費をコストカットできる
「FAXの維持費なんて大した金額ではない」と思われがちですが、実際に計算してみると数十万円のコストが浮かび上がります。
| 項目 | 月間費用 | 年間費用 |
|---|---|---|
| FAX用紙代 | 2,500円(A4用紙5,000枚) | 30,000円 |
| トナー・インク代 | 8,000円 | 96,000円 |
| 通信費(送信料) | 15,000円(30円×500件) | 180,000円 |
| FAX機リース料 | 5,000円 | 60,000円 |
| 保管スペース | 10,000円相当 | 120,000円 |
| 合計 | 40,500円 | 486,000円 |
これらの直接的なコストに加えて、FAX機の故障対応や用紙の補充作業といった見えないコストも存在します。一方、クラウドFAXサービスの月額料金は1,000〜5,000円程度。仮に月額3,000円のサービスを導入した場合、年間45万円のコスト削減が可能になる計算です。
3. 誤送信や紛失リスクを防ぐセキュリティ強化
FAXにまつわるセキュリティインシデントは、実は頻繁に発生しています。番号の押し間違いによる誤送信、受信トレイに放置された書類の紛失、第三者による盗み見などです。脱FAXをするとリスクは軽減されます。
| FAXのセキュリティリスク | 脱FAX後のセキュリティ対策 |
|---|---|
| 番号入力ミスによる誤送信が防げない | アドレス帳からの選択送信で誤送信を防止 |
| 受信トレイの書類は誰でも閲覧可能 | アクセス権限の設定で閲覧者を限定 |
| 送信完了の確実な確認が困難 | 送信ログと開封確認で確実な到達を把握 |
| 紙の紛失や劣化による情報消失 | 暗号化されたデータ保存で情報を保護 |
FAX業務のリスク度チェック
自社のFAX業務がどの程度リスクを抱えているか、以下のチェックリストで確認してみましょう。5つ以上当てはまる場合は、脱FAXの効果が特に高いでしょう。
| FAX業務 課題チェックリスト | リスクレベル(理由) |
|---|---|
| FAX送受信のために出社が必要 | 高(テレワーク不可、出社コスト発生) |
| 月間FAX処理件数が100件以上 | 中(処理工数の肥大化、業務圧迫) |
| FAX番号の手入力で送信している | 高(誤送信リスク、宛先確認の工数) |
| 受信FAXの仕分けに30分以上かかる | 中(対応遅延、確認漏れのリスク) |
| 過去のFAXを探すのに時間がかかる | 中(対応遅延、情報検索コストの増大) |
| FAX機の故障で業務が止まったことがある | 高(重要業務の停止、機会損失) |
| 誤送信のヒヤリハットが月1回以上 | 高(情報漏洩、信用の失墜) |
| FAX関連の年間コストが50万円以上 | 中(コスト圧迫、DX化による削減余地) |
| 受信FAXを紙で印刷し、手渡しで配布している | 中(印刷コスト、紛失リスク、対応遅延) |
| 送信したFAXが届いたか電話で確認している | 小(双方の工数発生、非効率) |
脱FAXをした企業事例2選
CASE1. 設備工事におけるサンセキ株式会社の事例

住宅設備機器の卸売・施工を手掛けるサンセキ株式会社は、業務管理システムを導入し、FAXなどの非効率なプロセスをデジタル化しました。システムによる主な効果は次のとおりです。
| 特徴 | 活用方法 | 効果 |
|---|---|---|
| 見積書・発注書一括管理 | エクセル手入力からシステム管理へ移行 | FAX送信作業を完全撤廃 |
| クラウド統合管理 | iCloudの個別フォルダから統一システムへ | 書類検索時間を大幅削減 |
| 標準化された命名規則 | 全社統一のデータ管理ルールを確立 | 担当者不在時の業務継続性確保 |
| 発注プロセスの自動化 | 印刷・FAX送信から電子処理へ転換 | 発注にかかる作業工数を削減 |
ゼネコンやハウスメーカーなど多数の事業者との取引において、従来の印刷・FAX送信による発注処理を完全に電子化し、見積もりから発注まで一気通貫のデジタル管理を実現しました。
設備工事の事例
- エクセル手入力による見積書作成とFAXでの発注書送信を完全に廃止し、全プロセスをデジタル化
- 担当者ごとに異なっていた書類保存方法を統一し、誰でも必要な情報にアクセス可能な体制を構築
- 複雑な業務フローのシンプル化により、新入社員の定着率向上と残業時間削減を実現
- 請求・入金管理までのシステム統合により、経理部門を含めた全社的なペーパーレス化を推進
CASE2. 賃貸管理業における株式会社ユーミーClassの事例

湘南エリアで賃貸管理・建物管理を展開する株式会社ユーミーClassは、FAXなどの切り替えを含む業務プロセスの改善に取り組みました。具体的なシステムの活用方法は主に4つです。
| 特徴 | 活用方法 | 効果 |
|---|---|---|
| 電子帳簿保存法対応 | FAX枠での代用から正式な電子管理へ移行 | 法改正への完全対応を実現 |
| インボイス制度機能 | インボイス番号の自動反映システムを活用 | 請求書作成の手作業を削減 |
| リマインド機能 | 繁忙期の案件停滞を自動通知で管理 | 月530件の案件対応漏れを防止 |
| 進捗管理機能 | 全部署で案件状況をリアルタイム把握 | 短納期案件の処理速度が向上 |
大学寮の入退去に伴う原状回復工事など、2〜3日の短期間で対応が必要な繁忙期において、FAXなどに依存していた業務をデジタル化し、200名体制での効率的な案件処理を実現しました。
賃貸管理の事例
- 消費税記載をFAX枠で代用していた非効率な運用から、適切な帳票フォーマットでの電子管理へ完全移行
- 手作業での請求書作成からインボイス番号自動反映による電子化で、事務処理時間を大幅削減
- 11支店・3万戸管理体制において、FAXベースの情報共有から全社リアルタイム管理システムへ転換
- 複数請求機能の実装により、従来のFAX送信による個別処理から一括電子処理への移行を推進
脱FAXを始めるための3ステップ
STEP1. 現状の課題とコストを可視化する
脱FAXの第一歩は、現状を正確に把握することから始まります。「なんとなく非効率」という感覚的な理解では、経営層や現場の協力を得ることは困難でしょう。まず1週間、以下の項目を記録して、年間コストを算出してみましょう。
| 測定項目 | 記録方法 | 目標値の目安 |
|---|---|---|
| FAX送受信件数 | 正の字でカウント | – |
| 処理にかかった時間 | 開始・終了時刻を記録 | 1件5分以内 |
| 発生したトラブル | 内容と対処時間をメモ | 週1件以下 |
| 用紙・トナー使用量 | 補充時に枚数を確認 | – |
| 出社が必要だった回数 | FAXのみが理由の場合 | 週0回 |
次に、部門ごとの利用状況を調査します。営業部門は顧客とのやり取り、購買部門は発注業務、経理部門は請求書の処理など、それぞれ異なる使い方をしているはずです。
STEP2. 自社に合った脱FAXの方法を選ぶ
脱FAXには複数のアプローチがあり、企業規模や業務内容によって最適解は異なります。
| 導入タイプ | 特徴 | 導入期間 | 初期投資 | 最適な対象 |
| クラウドFAXサービス | 既存のFAX番号をそのまま利用可能 | 1週間程度 | 5万円以下 | 中小企業や段階的導入に最適 |
| 複合機FAX連携 | 既存複合機をFAXの自動振り分けとOCR化 | 設定による | 変動型 | 複合機のリース契約がある |
| 業務管理システム連携 | 基幹システムと直接データ連携 | 3〜6ヶ月 | 100万円〜 | 大量処理が必要な企業向け |
| EDI移行型 | 取引先と協力して標準化 | 6ヶ月〜1年 | 200万円〜 | 業界全体での取り組みが必要 |
| 完全デジタル型 | FAX自体を廃止しWebやメールに移行 | 1年以上 | 変動型 | 新規事業や若い顧客層向け |
多くの企業にとって現実的なのは、クラウドFAX受信サービスから始めることでしょう。取引先に変更を強いることなく、自社の業務だけを効率化できます。その後、効果を確認しながら段階的に他の方法へ移行していくことが有効です。
STEP3. 社内を巻き込み計画的に導入する
かなり優れたシステムでも、現場に受け入れられなければ失敗に終わります。脱FAXを成功させるには「現場には作業負担の軽減」「経営層には数値化した効果」を訴求して、全社的な協力体制の構築が不可欠です。
準備期間(1カ月目)
- プロジェクトチーム結成(各部門から1名選出)
- 現状調査と要件定義
- サービス選定と契約
試験導入(2カ月目)
- パイロット部門での運用開始
- 操作研修の実施(1回2時間×3回)
- 問題点の洗い出しと改善
本格展開(3カ月目)
- 全部門への展開
- 取引先への案内(FAX番号は変更なし)
- 効果測定とフィードバック
特に注意すべきは、ITリテラシーの差への配慮です。「PDFって何?」というレベルの人もいるかもしれません。また、導入初期には必ず混乱が生じて、「前の方が良かった」という声も出ます。ただし3ヶ月後には「もうFAXはいらない」となりますので、淡々と進めていきましょう。
脱FAXにおすすめのFAX代替サービス
クラウドFAXサービスの主要5社を比較
クラウドFAXはインターネット経由でFAXの送受信するサービスです。受信したFAXはPDFファイルとしてメールに転送されたり、Web画面で確認したりできます。月額1,000円程度から利用可能で、最も手軽に始められる選択肢といえるでしょう。
| サービス名 | 月額料金 | 1枚あたりの送信料金 | 1枚あたりの受信料金 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| eFax | 1,980円 | 11円(150枚まで無料) | 11円(150枚まで無料) | 世界1200万人が利用する定番サービス |
| MOVFAX | 1,078円〜 | 2.2円 | 1.1円(1,000枚まで無料) | 国産サービスで日本語サポート充実 |
| 秒速FAX | 798円〜(送信のみ) | 7円 | 854円〜(受信のみ) | 送信特化型と受信特化型を選択可能 |
| メッセージプラス | 1,045円 | 16円 | 無制限 | 留守番電話機能付きで050番号も取得可 |
| FAX.PLUS | 7.99ドル〜 | 0.1ドル(100枚まで無料) | 0.1ドル(100枚まで無料) | 多言語対応でグローバル企業向け |
最終的な選定では、以下の3つの質問に答えることで方向性が見えてくるでしょう。
クラウドFAXサービスの選び方
- 100枚未満なら基本料金重視、1000枚以上なら従量課金重視
- ITに詳しい担当者がいるなら機能重視、いないならサポート重視
- 他システムとの連携を考えているならAPI対応を重視
一気通貫型のおすすめ業務管理システム

根本から解決するには業務プロセス全体をデジタル化し、情報を一元管理することが重要です。特に営業から施工、保守まで一連の業務を扱う組織では、プロワンのような一気通貫型の業務管理システムが効果的です。
| 詳細 | 内容 |
| 情報の一元化 | 顧客情報、案件進捗、原価データなどが一つのシステムに集約され、誰でも必要な情報にアクセス可能 |
| 業務プロセスの標準化 | 見積もりから請求までの業務フローがシステム化され、個人の判断に依存しない運用が実現 |
| 履歴管理の徹底 | すべての対応履歴や変更履歴が自動記録され、引き継ぎが円滑に |
| リアルタイムな情報共有 | 現場と事務所の情報格差を解消し、組織全体での迅速な意思決定を支援 |
プロワンの導入により、事務作業を30%削減し、二重入力や転記作業から解放された企業も多数存在します。さらに、紙やExcel、FAXによる非効率な管理から脱却することで、データドリブンな経営判断が可能になり、利益率を向上させた事例も報告されています。
