「承認待ちで2日経った…」
「ハンコのために出社しないと」
ハンコが非効率とわかっていても、手間を考えると廃止できない人も多いです。そこで脱ハンコのメリットから、依存度チェック、3つの成功事例、失敗しない導入の3ステップ、おすすめツールまで、脱ハンコのロードマップを見ていきましょう。
DXの事例や機能を1冊に、「DXまるわかりガイド」全67ページ
脱ハンコはなぜ?3つのメリット
脱ハンコとは、紙の書類に物理的な印鑑を押すという従来の承認プロセスを、電子署名や電子印鑑などのデジタル技術に置き換える取り組みを指します。
政府が2020年に打ち出した「書面・押印・対面原則の撤廃」により、行政手続きの99.4%で押印が廃止されました(※1)。この流れを受けて、民間企業でも急速に脱ハンコが進んでおり、2022年1月には電子契約を利用している企業が69.7%に増えています(※2)。
ただし、一部の企業では「何となく電子化すれば良い」という漠然とした理解にとどまっていることも実情です。脱ハンコで実現できる業務改善は、大きく分けて3つの領域に及びます。
| 領域 | ハンコの課題 | 脱ハンコの効果 |
|---|---|---|
| 1. 承認スピードの向上 | 承認待ちで3~5日の遅延 | リアルタイムでの承認完了 |
| 2. リモートワークの実現 | 出社必須の承認作業 | 場所を選ばない業務遂行 |
| 3. 直接的なコストの削減 | 印刷、郵送、保管コスト | 年間数十万~数百万円の削減 |
※1 内閣府「第二章 国の押印見直しに係る取組」
※2 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書 2022」
メリット1. 承認スピードの向上
従来の紙ベースの承認プロセスでは、書類が各承認者の手元に届くまでに平均1~2営業日かかっていました。部長が出張中なら1週間待ち、役員の承認となればさらに時間を要するという状況は、多くの企業で日常的に発生しています。
脱ハンコを実現すると、承認プロセスが最短数分で完了するようになります。電子決裁システムを導入した企業の調査では、承認完了までの平均時間が従来の120時間から8時間に短縮されたケースが報告されています。
メリット2. リモートワークの実現
「テレワークを推進したいが、結局ハンコのために週1回は出社している」という声は、今でも一部の企業から聞かれます。総務省の調査によれば、テレワーク実施企業の「押印・書類処理」を理由に完全在宅勤務を実現できていないという結果も出ています。
脱ハンコは、このようなハンコ出社を完全になくし、真の意味でのリモートワークを可能にします。電子契約システムやクラウド型ワークフローシステムを導入することで、以下のような波及効果が生まれます。
リモートワークの波及効果
- 地理的制約なく全国から人材採用が可能になる
- 通勤時間ゼロでワークライフバランスが向上する
- 従業員満足度が向上し、離職率が低下する
- 災害時でも業務継続が強化される
- 固定席を減るためにオフィスコストの削減される
メリット3. 直接的なコストの削減
コスト面でも大幅な改善が見込めます。具体的な削減項目を見てみましょう。
コストの具体的な削減例
- 印刷費用(A4用紙1枚約2円×年間10万枚=20万円)
- インク・トナー代(年間約20万円)
- 郵送費(速達・書留含め年間約50万円)
- 印鑑購入・管理費(年間約6万円)
- 書類保管スペース賃料(月2万円×12ヶ月=24万円)
これらを合計すると、中小企業でも年間120万円以上のコスト削減が可能です。さらに、承認待ちによる機会損失や押印のための移動時間、書類を探す時間といった見えないコストを含めると、その経済効果は計り知れません。
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脱ハンコすべきかチェックリスト
自社がどの程度紙に依存しているか、客観的に把握することが脱紙の第一歩です。以下のチェックリストで、現在の紙依存度を確認してみましょう。スコア11~15点は危険度「中」、スコア16点以上は危険度「高」です。
自社の契約業務がどの程度アナログ手法に依存しているかを診断します
※ 実際の状況は条件によって異なる場合があります。本診断結果はあくまでも目安としてご利用ください。
紙の承認プロセスを電子化した事例2選
CASE1. プラント工事における佐々木プラントの事例

北海道から全国へ事業展開する株式会社佐々木プラントは、業務管理システムを導入し、ハンコや紙書類に頼った承認フローをデジタルに切り替えました。このシステムの特徴は以下のとおりです。
| 特徴 | 活用方法 | 効果 |
|---|---|---|
| 電子完成報告書 | 現場でお客様の電子サインを取得 | 紙の持参忘れによる現場への再訪問がなくなった |
| 図面のクラウド管理 | 図面データをシステム上で共有・閲覧 | 事務所に図面を取りに行く往復がなくなった |
| モバイルでの承認 | 携帯端末から書類の作成と承認が可能 | 出張先でも書類作成と決裁が完結した |
大阪営業所を含む全国拠点で、完成報告書の紙持参忘れによる現場への再訪問がゼロになり、移動時間と交通費が大きく減りました。図面も紙での受け渡しが不要になり、現場スタッフが本来の作業に集中できるようになりました。
プラント工事での具体的な変化
- 紙を忘れて現場に戻る必要がなくなり、1件あたりの移動時間と交通費が大きく減った
- 見積書から請求書まで同じフォーマットになり、書き直しや転記の手間がなくなった
- LINEで共有していた資料が案件ごとに整理され、必要な書類をすぐ見つけられるようになった
CASE2. 消防設備工事における真弓興業の事例

創業60年以上の歴史を持つ真弓興業株式会社は、案件管理システムを使って、紙の回覧や押印に頼っていた承認フローをデジタルに切り替えました。具体的なシステムの活用方法は主に3つです。
| 特徴 | 活用方法 | 効果 |
|---|---|---|
| 電子承認 | 紙の回覧と承認をデジタル化 | 承認にかかる時間が短くなった |
| リアルタイム通知 | 書類や承認状況をすぐに通知 | 部署間の連携ミスがなくなった |
| 書類のまとめて保存 | 案件ごとに写真と書類を集約保存 | 過去の承認書類をすぐに探せるようになった |
大阪本社と東京支社を含む全拠点で、部長承認にかかっていた時間と手間が大きく減り、営業部・メンテナンス部・購買部の75名がいつでも最新の承認状況を確認できるようになりました。
消防設備工事での具体的な変化
- 営業からメンテナンス部への承認依頼がシステム上でつながり、部門間のやりとりが早くなった
- 緊急対応時でも承認権限者の所在をすぐ確認でき、その場で意思決定できるようになった
- 承認済み書類がシステムに残るので紛失するリスクがなくなり、監査や確認にも対応できた
押印を廃止するまでの3ステップ
STEP1. 対象業務の洗い出しと目標設定
脱ハンコの第一歩は、現状把握です。すべての押印業務を1度に電子化するのではなく、現場の状況を組みとり、優先度を付けてから進めます。
現状把握の手順
- 1ヶ月間の「押印記録シート」を作成します。
- 各部署で「書類の種類、月間の処理件数、承認にかかる平均時間、法的要件の有無、取引先の対応可否」といった記録を取ります。
- 押印記録シートをもとに、優先度を付けます。
優先度は稟議申請のように「難度が低い×承認数が多い」を最優先としましょう。毎月の申請数が数百ありながら切り替えは簡単なため、インパクトが大きいです。次に契約書のように「難度が高い×承認数が少ない」は段階的に切り替えていきます。
| 承認数が多い | 承認数が少ない | |
|---|---|---|
| 難度が低い | 〇最優先(稟議申請など) | △後回し(採用書類など) |
| 難度が高い | △段階的(契約書など) | ✕対象外 |
目標設定をするときは「承認時間を○%短縮する」「コストを年間○万円削減する」とします。このような明確な目標があることで、導入後の効果測定も容易になります。
STEP2. 法的要件の確認と社内規定整備
脱ハンコで最も慎重になるべきは、法的な有効性の確保です。2001年に施行された「電子署名法」により、電子署名も法的に有効となりましたが、すべての書類が対象となるわけではありません。
以下の書類は紙での作成が法律で義務付けられているため、現時点では電子化できません。
紙で作成する書類
- 事業用定期借地権設定契約書
- 任意後見契約書
- 訪問販売等で交付する書面(一部)
次に電子化可能な書類でも、電子署名法の要件を満たす必要があります。
電子署名法の要件
- 署名者が本人であることの証明
- 署名後に内容が変更されていない非改ざん性の確保
そのため、多くの企業では電子認証局が発行する電子証明書を利用しています。特に重要なのは、取引先への説明資料の準備です。法的根拠や安全性について、わかりやすく説明できる資料を用意しておくことで、スムーズな移行が可能になります。
STEP3. 関係部署への説明と合意形成
最後のステップは、社内外のステークホルダーとの合意形成です。どんなに優れたシステムを導入しても、使う人の理解と協力がなければ成功しません。部署別に説明会を実施し、それぞれの立場に応じたメリットを強調します。
| 部門 | 説明する例 |
|---|---|
| 営業部 | 契約スピードアップによる成約率向上 |
| 経理部 | 請求書処理の効率化と残業削減 |
| 総務部 | 書類保管スペースの削減 |
| 管理職 | どこからでも承認可能な利便性 |
説明会では実際のデモンストレーションをして、操作の簡単さを体感してもらうことが重要です。また、移行期間中は紙と電子の併用期間を設け、段階的に電子化率を高めていく方法が効果的です。取引先向けには無料トライアル期間を設けて、実際に使ってもらうことで利便性を実感できます。
脱ハンコができるおすすめ3サービス
サービス1. 中小企業向けの電子契約システム
従業員50名以下の中小企業にとって、高額な初期投資は大きな負担となります。そこで重視すべきは、月額料金の安さと導入の手軽さです。
料金重視のときのチェック項目
- 初期費用0円
- 月額1万円以下の基本料金
- 従量課金制(使った分だけ支払い)
- 無料トライアル期間あり
- 日本語サポート充実
例えば「マネーフォワードクラウド契約」は法人向けが月額料金2,728円から利用できます。また、中小企業の場合、まず社内文書から電子化を始めることをおすすめします。社内文書なら取引先との調整が不要で、効果もすぐに実感できます。
※ 2026年4月時点
サービス2. 中堅・大企業向けの電子契約システム
中堅・大企業では、すでに基幹システムやCRM、ERPなどが稼働しているケースが大半です。このような企業では、既存システムとの連携の充実度が最重要ポイントとなります。
既存システムとの連携で重視する機能
- 基幹システムから受発注データを自動で取り込める
- CRMの顧客情報と契約情報を一元管理できる
- 会計システムとの連携して、請求書データの自動転記できる
- ワークフローシステムとの連携して、承認フローの自動化できる
- 文書管理システムとの連携して、契約書を自動保管できる
例えば「クラウドサイン」や「freeeサイン」は統合型の法務サービスであり、システム連携はもちろん、一括送信機能やテンプレート機能も備わっています。また、セキュリティ面では「ISO27001認証取得、IPアドレス制限機能、二要素認証対応、監査ログの長期保管」の要件を満たすことが必須です。
※ 2026年4月時点
サービス3. 全業務をつなぐオールインワンシステム

プロワンは、営業、現場、経営に必要な全機能を1つのプラットフォームで提供し、紙、Excel、メールでの情報共有から脱却することで、一気通貫のデータ連携を実現します。