諸経費とは?工事見積書の内訳17項目と計算シミュレーション

「直接工事費の15%が諸経費?」
「諸経費の内訳がよくわからない…」

諸経費は直接工事費の8〜25%程度を意識して、見積書に記載するケースが多いですが、この幅の広さこそが細かいズレを生む要因になっています。そこで諸経費の意味から、内訳、わかりやすい計算式、簡単にできる計算シミュレーション、よくある質問までを理解していきましょう。

諸経費とは?工事に必要な間接的な費用

工事費の見積書を見ると、多くの場合「直接工事費」と「諸経費」という項目に分かれています。直接工事費は材料費や職人さんの労務費など、実際の工事や事業に必要な直接的な費用のことです。

工事費 = 直接工事費 + 諸経費

一方、「諸経費」とは工事や事業を進める上で必要となる間接的な費用のことで、「現場経費」と「一般管理費」から構成されています。

諸経費 = 現場経費 + 一般管理費

現場経費

  • 工事現場を適切に運営・管理するために必要な費用
  • 現場監督の人件費、仮設事務所や仮設トイレの設置・維持費、安全管理費、品質管理費、現場の光熱費や通信費など
  • その工事が行われている間だけ発生する、現場固有の経費

一般管理費

  • 建設会社を企業として維持・運営していくために必要な費用
  • 本社スタッフ(営業・経理・総務など)の給与、役員報酬、本社の家賃や光熱費、広告宣伝費、企業の利益など
  • 工事の有無に関わらず会社が存続する限り発生し続ける経費

工事見積書の諸経費の内訳17項目

現場経費7項目

現場経費とは、その工事現場を運営するために必要となる費用です。 あまり細分化しすぎず、次の7項目程度にまとまります。現場経費は主に「直接工事費×現場経費率」で計算されることが多いです。

項目説明現場経費率
労務管理費現場監督や現場事務員の人件費、手当3.0〜6.0%
品質管理費材料試験費、品質検査費、工事写真の管理費0.5〜1.5%
安全管理費安全設備、保護具、安全教育、警備員費用1.0〜2.5%
通信交通費現場の電話やネット代、担当者の交通費0.5〜1.5%
事務用品費現場事務所で使う文房具、コピー代など0.5〜1.0%
近隣対策費近隣への挨拶状、騒音・振動測定費、補償費0.2〜1.0%
その他経費廃棄物処理費、工事保険料、雑費など1.0〜3.0%

現場経費率を合計すると、工事の規模によって直接工事費の6〜16%前後に収まります。また、一般的な民間の見積書において、「仮設費」を現場経費に含める場合は2〜5%を加算します。

一般管理費10項目

一般管理費とは、建設会社の本社機能を維持・運営するために必要となる経費です。 こちらも細分化しすぎずに、次の10項目程度にまとまります。一般管理費は主に「工事原価(直接工事費+共通仮設費+現場管理費)×一般管理費率」で計算されます。

項目説明一般管理費率
役員報酬取締役など、役員の報酬0.5〜2.0%
従業員給与手当本社の経理・総務・営業など管理部門の人件費2.0〜4.0%
福利厚生費本社スタッフの社会保険料(会社負担分)など1.0〜2.0%
地代家賃本社や支店のオフィスの賃料、駐車場代0.5〜1.5%
水道光熱費本社や支店の電気・水道・ガス代0.2〜0.5%
通信交通費本社の電話・ネット代、営業車両の維持費、出張費0.3〜1.0%
広告宣伝費会社のWebサイト維持費、広告出稿費など0.3〜1.5%
減価償却費本社のPC、什器、車両などの資産価値の減少分0.5〜1.5%
租税公課会社にかかる固定資産税、印紙税、自動車税など0.2〜0.8%
利益会社の事業継続、将来の投資のための利益0.0〜5.0%

一般管理費の費用の目安を算出すると、工事原価の5〜14%前後になります。

また、これらのパーセンテージはあくまで一般的な目安です。工事の規模、工期、地域、施工条件によって大きく変動します。例えば、工期が短い工事や小規模な工事ほど、比率は高くなる傾向があります。

工事見積書の諸経費の計算シミュレーション

実際の工事見積書の諸経費を正確に把握するためには、具体的な数値を用いたシミュレーションを試してみましょう

諸経費・工事費計算
万円
現場経費(目安)
一般管理費(目安)
諸経費 合計(目安)
工事費 合計(目安)

※ 実際の計算結果は条件によって異なる場合があります。本計算結果はあくまでも目安としてご利用ください。

諸経費のわかりやすい計算式と相場例

工事諸経費の計算は複雑に見えますが、基本的な計算式を理解すれば、誰でも概算値を算出できるようになります。

重要なポイントは、工事規模が大きくなるほど諸経費率は低下する傾向にあることです。これは規模の経済が働くためで、大規模工事では管理業務の効率化が図れるからです。

項目計算式小規模(500万円未満)中規模 (500〜2,000万円)大規模(2,000万円以上)
直接工事費(A)-400.0万円1,000.0万円3,000.0万円
現場経費率6〜16%前後12.0%10.0%8.0%
現場経費(B)A×現場経費率48.0万円100.0万円240.0万円
一般管理費率5〜14%前後10.0%8.0%6.0%
一般管理費(C)(A+B)×一般管理費率44.8万円88.0万円194.4万円
諸経費B+C92.8万円188.0万円434.4万円
総工事費A+B+C492.8万円1,188.0万円3,434.4万円
諸経費率(B+C)÷A23.2%18.8%14.5%

実際の計算では、建設業法に基づく積算基準を参考にしながら、工事の特性を考慮する必要があります。特殊な工法を用いる場合や、工期が長期にわたる場合には、標準的な率に対して1.2~1.5倍程度の補正を加えることもあります。

諸経費の見積もりでミスしやすい2点

1. 工事規模を無視して「相場」を判断する

「諸経費は15%が相場」といった情報だけで、見積書の妥当性を判断してしまうのはリスクが高いです。

諸経費率は工事規模によって大きく変動します。400万円の小規模工事では23%であっても、3,000万円の大規模工事になると14.5%に低下します。小規模工事の見積書を見て「相場の15%より高い」と判断するのは、合理的な根拠を見落とすミスとなります。

工事規模を踏まえて相場を判断する手順

  1. まず、自身の工事規模(直接工事費)が、自社の「小・中・大」のどれに近いかを確認します。
  2. その上で、見積書の諸経費が、先ほどのシミュレーションのレンジから大きく乖離していないかを確認してみましょう。
  3. もし乖離している場合は、その理由(工事の難易度、都心部での施工、特殊な工法など)について合理的な説明が必要です。

2. 追加工事発生時の「諸経費の扱い」を確認しない

契約時に見落としがちですが、最終的な総額に大きく影響するポイントです。当初の見積書の諸経費率にのみ注目し、工事途中での変更・追加工事の際のルールを決めておかないと、トラブルになりがちです。

例えば、10万円の小さな追加工事が発生しただけで、自動的に18.8%の諸経費が上乗せされるのか、あるいはそれ以上の率を請求されるのか、取り決めがなければ交渉が難航します。

追加工事の扱いを確認する手順

  1. 契約前に「変更・追加工事が発生した場合、諸経費はどのように算定されるか」と必ず確認します。
  2. 追加工事の金額に対しても「当初と同じ諸経費率が適用するか」「それとも追加工事の管理費は別途協議するか」を決める。

諸経費の計算と管理を効率化する方法

諸経費の「一式」表示は、発注者にとって不信感の原因となります。 その一因には、建設業者側が工事ごとの正確な原価や経費をリアルタイムに把握しきれていない、という管理体制の課題があります。Excelや手作業での管理では、どうしても見積もりの精度に限界が生じるでしょう。

発注者と受注者双方が納得できる透明性の高い見積もりは、現場の状況を正確に反映した業務管理システムから生まれます。

プロワン
業務管理システム「プロワン」

プロワンは、建設・設備工事・リフォーム・ビルメンテナンスなどの短・中期工事に特化した業務管理システムです。営業から施工・保守、請求・収支までの工程を1つのプラットフォームでつなぎ、現場起点のデータをリアルタイムに経営判断へ還元します。

中野貴利人

株式会社ミツモア マーケティング本部所属。業務管理システム「プロワン」のコンテンツマーケティングを担当。建設、設備工事、ビルメンテナンス、リフォームなど、現場業界に向けたお役立ち情報を制作中。著書5冊。

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