「ROIがよくわからない…何パーセントが正しい?」
ROIの基本的な意味から、計算シミュレーション、わかりやすい計算式、業界別の具体例まで、自信を持って決裁者を説得するための、論理的な計算方法を一緒に見てみましょう。
ROIとは?投資額に対する利益の割合
ROI(アールオーアイ)とは、投資に対してどれだけの利益を得られたかを示す指標です。正式名称は「Return on Investment(投資収益率)」で、投資の効率性をパーセンテージで表します。
ROI(%)= 利益 ÷ 投資額 × 100
標準的な考え方としては「0%が損益分岐点」であり、パーセントが高いほど投資効率が良いと判断できます。
| ROI | 意味 | 投資額100万円のときの利益の例 |
|---|---|---|
| 100% | 投資額と同額の利益が出ている | 100万円 |
| 0%より大きい | 投資額を回収できて、黒字である | 20万円 |
| 0% | 投資額の損益分岐点であり、利益がゼロである | 0円 |
| 0%より小さい | 投資額を回収できず、赤字である | -20万円 |
| -100% | 投資額がすべて損失になり、全損である | -100万円 |
例えば、100万円を投資して20万円の利益が出た場合、ROIは20%となります。
特に異なる施策を同じ基準で比較できるため、どの投資が最も効率的かを判断する際に役立ちます。「広告キャンペーンの効果測定」「新規事業の収益性評価」「システム導入の投資判断」など、どの業界でも使われている指標です。
ROIの計算シミュレーション
実際の投資額と利益を入力してみて、ROIを算出してみましょう。シンプルな「標準ROI」に加えて、「総所有コストROI」と「年平均成長率ROI」、さらに「投資回収期間」も計算できるようにしました。
※ 実際の計算結果は条件によって異なる場合があります。本計算結果はあくまでも目安としてご利用ください。
3種類あるROIのわかりやすい計算式
1. 標準ROI
最も基本的で広く使われるROIの計算方法です。投下した初期投資額に対して、どれだけの利益が直接生まれたかをシンプルに計算します。
ROI(%)= 利益 ÷ 投資額 × 100
利用シーンとしては「広告キャンペーン、短期施策、株式投資」など、運用コストを考慮しない、または利益額にすでに反映されている場合の効率性を測るのに適しています。
2. 総所有コスト(TCO)ROI
投資の定義を広げ、プロジェクトにかかる総所有コスト(TCO)で効率性を測る方法です。初期投資額だけでなく、システム運用費や保守費などの累計の運用コストも投資の一部とみなし、それに対してどれだけの純利益が上がったかを計算します。
累計の純利益 = (年間利益 - 年間運用コスト) × 運用年数 - 初期投資額
累計の総コスト = 初期投資額 + (年間運用コスト × 運用年数)
ROI(%)= 累計の純利益 ÷ 累計の総コスト × 100
利用シーンとしては「サーバー導入、SaaSの契約、設備投資」など、初期費用に加えて継続的なランニングコストが発生するプロジェクトの長期的な採算性を評価するのに適しています。
3. 年平均成長率(CAGR)ROI
投資期間が異なるプロジェクト同士を公平に比較するための計算方法です。期間の概念を取り入れ、もしその投資が複利で成長した場合、年利は何%になるかを計算します。これは年平均成長率(CAGR)とも呼ばれます。
ROI(%)= [(最終価値 ÷ 初期投資額) 1/運用年数 - 1] × 100
例えば「2年で30%のリターン」と「5年で60%のリターン」のどちらが効率的かを比較したい場合に使います。期間の異なる複数の投資案件を、共通の「年利」というモノサシで評価できます。
投資回収期間(Payback Period)
これはリターンの効率(%)ではなく、投資を回収するまでの時間(年)を測る指標です。投下した初期投資額を、将来得られる利益で全額回収し終えるまでに、どれくらいの期間がかかるかを示します。
投資回収期間 (年) = 初期投資額 ÷ 1年間の利益
プロジェクトの安全性やリスク評価に使われます。回収期間が短いほど、投資資金が早く手元に戻ることを意味し、リスクが低いと判断されます。
ROIの業界別の具体例
業界1. 建設業のROI例
建設業は、主に効率化を利益として金銭換算するケースが多いです。以下の例では、BIMソフトウェアを導入することによって「年間利益1,500万円÷投資2,000万円=ROI75%」となりました。
| 投資例 | 利益例 |
| BIMソフトウェア導入 | 手戻り削減(材料費・追加工数削減) |
| ICT建機・ドローン測量 | 工期短縮(人件費・レンタル費削減) |
| 安全対策設備(現場監視カメラなど) | 安全性向上(事故による損失回避・保険料低減) |
業界2. 製造業のROI例
製造業も、主に自動化による生産性の向上を利益として金銭換算するケースが多いです。以下の例では、自動組立ライン導入によって「年間利益5,000万円÷投資1億円=ROI50%」となりました。
| 投資例 | 利益例 |
| 自動組立ライン導入 | 人件費の削減(工数削減) |
| 生産管理システム(MES)導入 | 不良率の低下(材料費・手直し工数の削減) |
| 工場のレイアウト変更 | 生産スピード向上(リードタイム短縮) |
業界3. IT・SaaSのROI例
IT・SaaSは売上増だけでなく、解約率の低下といった将来の収益を守る活動も、「利益」として評価するのが特徴です。以下の例では、カスタマーサクセス部門の機能開発によって「年間利益2,100万円÷投資3,000万円=ROI70%」となりました。
| 投資例 | 利益例 |
| カスタマーサクセス部門の機能開発 | 解約率(チャーンレート)の低下 |
| 新機能の研究開発費(R&D) | アップセル/クロスセル(MRR増加) |
| サーバー増強(インフラ費) | 顧客獲得コスト(CAC)の削減(機会損失の防止) |
業界4. マーケティングのROI例
施策によって生み出されたリターンを評価します。マーケティング分野では、売上に着目する「ROAS」と、利益に着目する「ROI」という2つの主要指標を、目的に応じて使い分けます。

ROASとは、投下した広告費に対して、どれだけの「売上」を生み出したかを測る指標です。主に広告のパフォーマンス測定に使われます。
例えば、Web広告キャンペーンに広告費100万円を投下し、その結果として売上が500万円得られた場合は、ROASは「500万円÷100万円×100=500%」となります。ROAS100%を超えると、投下した広告費を上回る売上が発生していることになります。
| 投資例 | ROAS | ROI |
|---|---|---|
| Web広告キャンペーン | キャンペーン経由の売上 | 売上総利益 |
| CRMツール導入 | 新規顧客獲得数×LTV(顧客生涯価値)の向上 | LTV増加分を利益として計算 |
| コンテンツ制作費 | ブランド認知度の向上 | 中長期的なROIへの貢献として評価 |
ROIの計算でミスするポイント
POINT1. 初期費用以外のコストの見落とす
初期費用だけでなく、社内人件費、運用保守費、システム連携費、組織変更に伴うコストも投資額に含める必要があります。実務では見積もりに10〜20%のバッファを設けることが重要です。
POINT2. 金額換算せずに利益を少なくする
売上増加だけでなく、コスト削減効果や生産性向上も金額換算して評価します。将来価値は5〜10%の割引率で現在価値に換算しなければ、ROIを過大評価する原因となります。
POINT3. 投資したあとの回収期間を見誤る
施策の性質に応じた期間設定が必要です。デジタル広告は3〜6ヶ月、システム投資は3〜5年、ブランディングは2〜3年が目安です。季節性を考慮し、最低1年間のサイクルで評価することが重要です。
ROIの計算をミスなしで効率的にする方法
BIツールを活用すれば、複数のデータソースを統合してROIを自動算出でき、リアルタイムで監視可能になります。さらにセグメント別分析や感度分析、競合比較などの多角的な視点で分析することで、改善ポイントを特定し、より精度の高い投資判断ができるようになります。

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