「電気工事は種類が多く、最新の歩掛表を知りたい」
「電気工事の正しい積算方法を知りたい…」
そこで、国交省の積算基準による計算式から、具体的なシミュレーション、見落としがちな高所や狭所の補正係数まで、適正な見積もりの作り方を1つずつ見ていきましょう。
電気工事の歩掛(ぶがかり)とは?
電気工事の歩掛とは「電気工事を完了させるために必要な人数」を数値化したものです。歩掛は以下のような国土交通省の基準が信頼性が高く、多くの企業が見積作成のベースにしています。
| 作業内容 | 単位 | 歩掛 |
| 硬質ビニル電線管(16) | 1m | 0.042 |
| フロア内コネクタ | 1個 | 0.054 |
| LED照明器具(ダウンライト埋込形) | 1個 | 0.209 |
※ 国土交通省「公共建築工事標準単価積算基準(令和7年12月改定) 第3編電気設備工事」
この歩掛を使って、その工事全体に費やす延べ人数である人工(にんく)を算出します。例えば「電線管100m×歩掛0.042=4.2人工」かかるという意味です。
歩掛は2パターン使い分ける
歩掛は「1単位あたりの人数」と「1人が1日でできる作業量」の2つの意味が存在します。例えば、LED照明は1台あたり「歩掛0.1」で設置できるとき、50台分なら「50台×歩掛0.1=5.0人工」になります。これは先ほどと同じです。
一方、LED照明は1人あたり「1日10台」設置できるとき、50台分なら「50台÷10台=5.0人工」と計算します。
| 歩掛の定義 | 使用シーン | 計算式 | 50台設置の例 |
|---|---|---|---|
| 1単位あたりの人数 | 国交省基準など | 数量×歩掛=人工 | 50台×0.1歩掛=5.0人工 |
| 1人が1日でできる作業量 | 現場の経験則など | 数量÷歩掛=人工 | 50台÷10台=5.0人工 |
このように「作業効率のものさし」である歩掛を正しく適用することで、人工を精度高く見積もることが可能です。
電気工事の歩掛の計算シミュレーション
電気工事の見積もり精度を高めるには、代表的な工事内容に基づいた歩掛を正確に算出してみましょう。ここでは簡易的な計算シミュレーションを通じて、直接電気工事における歩掛の算出プロセスを試せます。
※ 国土交通省「公共建築工事標準単価積算基準(令和7年12月改定) 第3編電気設備工事」
電気工事の歩掛の内訳2例
例1. 電線管敷設工事の人工算出例
電線管の敷設工事は、電気工事の基本であり、建物の種類や配管ルートによって施工条件が大きく変わります。公共建築工事標準単価積算基準では、電線管の種類(合成樹脂管・金属管など)、管径、敷設方法(露出・隠蔽)ごとに歩掛が定められています。
例えば、VE管(硬質塩化ビニル電線管)φ28mmを露出配管で敷設するケースを考えてみましょう。
| 項目 | 内容 | 算出ポイント |
| 管種・サイズ | VE菅φ28mm | 「28」は管の呼び径を指し、このサイズが重量や施工難易度を決定するため、適用する歩掛の基準となる |
| 設計長(L) | 150m | 図面から算出された正味の敷設距離 |
| 材料投入量 | 157.5m | 施工延長(150m)に対し、切断ロスや接続部の余長を考慮した係数1.05を乗じて算出する |
| 標準歩掛 | 約35m/人・日 | 公共建築工事標準単価積算基準に定められた、1日あたりの標準的な施工能力 |
| 必要人工 | 4.3人工 | 設計長(150m)÷標準歩掛(35m/人・日) で求められる。材料ロス分は労務費には含めず、正味の施工延長で原則計算する |
実務においては、この基本人工に対し、現場の状況に応じた補正を行います。例えば、天井高4m以上の高所作業では高所係数(1.2〜1.3)を乗じるほか、既存設備が密集する改修現場では施工効率の低下(30〜40%)を織り込む必要があります。
例2. ケーブル配線工事の人工算出例
ケーブル配線工事の人工算出は、敷設するケーブルの種類、芯数、断面積、配線環境(管内配線やラック配線など)によって作業能率が大きく異なるため、適切な歩掛の選定が重要です。
以下に、CVTケーブル(3心 6sq)を電線管内に配線する際のシミュレーションをまとめます。
| 項目 | 設定内容 | 算出ポイント |
| ケーブル仕様 | CVT 3心 6sq | ケーブルの太さや硬さは取り回しの負荷に直結するため、サイズに応じた歩掛を適用する |
| 配線延長 | 200m | 実引込距離(盤内の余長などを含む)を基準とする |
| 標準歩掛 | 約80m/人・日 | 1mあたりの必要工数として算出する場合もあるが、ここでは1日あたりの施工能力を基準に用いる |
| 必要人工 | 2.5人工 | 配線延長(200m)÷標準歩掛(80m/人・日)により、基本となる労務量を算出する |
引込補助や端末処理、ケーブル特性による補正等の付帯作業を考慮し、現場実態に即したトータルな人工算出が不可欠です。
電気工事の歩掛でミスするポイント
1. 施工条件による補正係数の適用が漏れる
基準歩掛は標準的な環境を前提としているため、現場の負荷を数値化した「補正係数」の乗算が必須となります。代表的な補正係数を以下の表にまとめました。
| 施工条件 | 補正係数の目安 | 適用場面 |
|---|---|---|
| 高所作業(4~6m) | 1.2~1.3 | 高天井の商業施設、工場 |
| 高所作業(6m以上) | 1.3~1.5 | 体育館、倉庫など |
| 狭所作業 | 1.1~1.3 | 天井裏、ピット内、機械室 |
| 改修工事(既存設備あり) | 1.2~1.5 | リニューアル、増設工事 |
| 小運搬(搬入経路が狭い) | 1.05~1.2 | エレベーターなし、階段のみ |
| 養生・片付け | 1.05~1.1 | 居ながら工事、精密機器のある現場 |
補正後の人工数は「人工数×高所係数×狭所係数×改修係数×…」のように、かけあわせて求めます。結果的に2倍以上になることもあり、この差を見落とすと赤字に直結するでしょう。
2. 高所や狭所における効率低下を軽視する
脚立の移動や安全帯の着脱、無理な作業姿勢による「目に見えないロス」を考慮せず基準値のまま計上すると、実際の人工が1.3~1.5倍に膨らみ、大きな収支の乖離を招く原因となります。
3. 撤去や搬入などの付帯労務を過小評価する
改修における撤去作業の分離積算や、エレベーターがない現場での搬入、清掃や養生の手間をサービスとせず、明示的に項目立てして計上することが適正な利益確保の鍵となります。
電気工事の歩掛を効率的に計算する方法
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