建設業の経営事項審査とは?2026年経審申請の流れから点数アップのコツまで

「初めて経審を受けたいがどんな準備が必要?」
「経審の点数をアップのコツを知りたい」

そこで、経審の基礎知識から仕組み、申請の流れ、具体的な点数アップ方法、さらには日々の業務管理との関連性まで見ていきましょう。

経営事項審査とは?基礎知識を解説

経営事項審査の定義と目的

経営事項審査(経審)とは、建設業法第27条の23に基づいて実施される法定の審査制度で、建設業者の「経営状況」「経営規模」「技術力」「その他の審査項目(社会性等)」を客観的に数値化して評価します。つまり、「この会社に安心して工事を任せられるか」を測るための指標です。

公共工事の入札参加資格にもなっているため、公共工事を請け負う建設業者は必ず受けなければなりません。

経審を受けるメリット

経審を受けることには、公共工事の入札参加以外にも以下のようなメリットがあります。

1. 会社の信用力向上

経審の結果は一般公開されるため、誰でも閲覧可能です。高い評点を獲得している会社は、それだけ経営基盤がしっかりしていると客観的に証明できます。

2. 民間工事の受注機会拡大

民間事業者の中には、経審を受けていること、または一定以上の経審点数を得ていることを発注条件にしているところもあります。経審を受けることで、ビジネスチャンスが広がる可能性があります。

3. 自社の経営状態の客観的把握

経審の評価項目を確認することで、自社の強みや弱みを客観的に把握できます。点数アップに向けた取り組みは、結果的に経営改善にもつながります。

4.金融機関からの融資に有利

金融機関にとっても客観的な審査資料として活用されます。公共工事という安定した収益源を持つ証明にもなるため、融資審査においてプラスに働く可能性があります。経審を受けていること、特に高い評点を獲得していることは、資金調達の面でも有利です。

経審の評価項目と仕組み

審査の対象となる5つの項目

経審は建設業許可の業種ごとに「総合評定値(P点)」で評価されます。P点は以下の5つの評価指標で算出されます。

評点評価内容ウェイト評点範囲ポイント
X1完成工事高25%390~2,309点企業規模を示す基本指標
X2自己資本額・平均利益額15%454~2,280点財務基盤の規模を評価
Y経営状況20%0~1,595点財務の健全性を評価
Z技術力25%450~2,366点技術職員数と元請実績
Wその他審査項目(社会性等)15%-1,995~2,074点各種取り組み姿勢を評価

「総合評定値(P点)」の計算式

P点 = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W

X1(経営規模を示す指標)

X1は、完成工事高を評価する項目です。事業規模を示す最も基本的な指標であり、P点全体の25%を占めます。業種別の2年平均または3年平均の完成工事高を評点テーブルに当てはめて算出します。

完成工事高は規模によるところが大きいため、大きな会社ほど有利になる傾向があります。

X2(財務基盤を示す指標)

X2は、自己資本額と平均利益額を評価する項目です。自己資本額(当期の実績)と平均利益額(営業利益+減価償却実施の2期平均)で算出します。

X2点の計算式

X2 = (自己資本額+平均利益額)÷2

自己資本額は2年平均するかしないかを選択できます。

Y(財務健全性を示す指標)

Y点は、会社の財務的な健全性を評価する項目です。つまり「つぶれにくい会社」かどうかを評価しています。審査項目は以下です。

Y点の審査項目

  • 純支払利息比率
  • 負債回転期間
  • 売上高経常利益率
  • 総資本売上総利益率
  • 自己資本対固定資産比率
  • 自己資本比率
  • 営業キャッシュフロー
  • 利益剰余金

Z(技術と実績を示す指標)

Z点は、技術職員数と元請完成工事高を評価する項目です。技術職員の資格ランクが高いほど加点されます。

W(社会的取り組み姿勢を示す指標)

W点は、X・Y・Z以外の社会性等を評価する項目です。主な審査項目は以下です。

W点の審査項目

  • 労働福祉の状況(社会保険加入、建退共、退職金制度、法定外労災など)
  • 担い手の育成・確保(若年技術者の育成、CPD単位取得など)
  • 営業年数
  • 防災協定の締結の有無
  • 法令遵守の状況
  • 建設業経理の状況
  • 建設機械の保有台数
  • ISO・エコアクション21の登録の有無
  • CCUSの活用状況
  • ワーク・ライフ・バランス(えるぼし・くるみん・ユースエール認定)

W点は業種に関係なく全社共通で評価されるため、点数アップが狙いやすい項目でもあります。

各評点は、700点が平均になるように設計されています。700点前後であれば平均的な建設業者、大規模な工事に参加するには1,000点以上が一つの目安です。

経審申請の流れ

経審申請の全体スケジュール

  1. 決算(審査基準日の確定)
  2. 決算変更届の提出
  3. 経営状況分析の申請
  4. 経営規模等評価申請・総合評定値請求
  5. 総合評定値通知書の受領

STEP1. 決算変更届の提出

決算変更届は、経審を受けるか否かに関わらず、すべての建設業許可業者に義務付けられています。決算日から4ヶ月以内に許可行政庁に提出が必要です。経審を受ける場合、工事経歴書や財務諸表は消費税抜きで作成しなければならないことに注意しましょう。消費税込みで作成すると申請のやり直しになります。

STEP2. 経営状況分析の申請

分析機関に財務諸表などを提出し、Y点(経営状況評点)を算出してもらいます。

登録経営状況分析機関は国土交通省のWEBサイトに一覧が載っています。どの機関に申請するかは自由です。分析手数料は機関によって異なりますが、概ね8,000円〜14,000円程度、申請後3日〜1週間程度で経営状況分析結果通知書が届きます

STEP3. 経営規模等評価申請・総合評定値請求

許可行政庁(都道府県または国土交通省)に経営規模等評価申請と総合評定値請求を行います。申請手数料は、1業種1万1,000円で、審査対象業種数を追加するごとに+2,500円です。

STEP4. 総合評定値通知書の受領

経営規模等評価申請から約1ヶ月後に、総合評定値通知書(結果のランク)が届きます。総合評定値通知書の有効期限は、審査基準日から1年7ヶ月です。公共工事を受注したい場合は、この期間内に入札参加資格の申請・受注を済ませましょう。継続して入札に参加するには、毎年経審を受ける必要があります。

経審の点数を上げる7つのコツ

1. W点を押さえる

経審点数アップで最も即効性があるのがW点対策です。特に以下の3点は、多くの会社で対応可能な加点項目です。

対策加点(W点)P点への影響
建退共(建設業退職金共済)の加入・履行+21点約+19点
退職一時金制度または企業年金制度の導入+21点約+19点
法定外労災保険への加入+21点約+19点

3つすべて対策すれば、P点は約60点アップします。売上高を1億円から2億円に倍増させてもP点は約20点しか上がらないことを考えると、この効果は大きいです。

2. 技術者の資格取得

Z点をアップさせるには、技術者の資格取得が効果的です。技術者の評価点は資格ランクによって異なります。

資格ランク評価点
一級技術者+監理技術者講習受講6点
一級技術者5点
基幹技能者3点
二級技術者2点
その他技術者1点

特に効果的なのが「監理技術者講習」の受講です。一級技術者が1日の講習を受講するだけで、評価点が5点から6点にアップします。ただし、有効期間は5年間なので、期限切れにならないよう管理が必要です。新たに資格保有者を採用する場合は、6ヶ月を超える雇用関係が必要な点にも注意しましょう。

3. 建設業経理士の取得

W点の審査対象である「建設業の経理の状況」では、建設業経理士の資格保有者数が評価されます。技術系の資格と異なり、事務職でも取得可能な点がメリットです。

資格評価係数
公認会計士・会計士補・税理士・1級建設業経理士1.0
2級建設業経理士0.4

経理部門で建設業経理士の資格取得を推進することで、W点アップが期待できます。

4. 完成工事高の選択

X1点の完成工事高は、2年平均または3年平均のどちらかを選択して申請できます。年度によって工事高に変動がある場合、有利な方を選ぶことで点数アップが可能です。例えば、直近3年間の完成工事高が以下のような場合、2年平均を選択した方が有利です。

  • 令和5年度:5,000万円
  • 令和4年度:4,000万円
  • 令和3年度:3,000万円

2年平均(5,000+4,000)÷2=4,500万円
3年平均(5,000+4,000+3,000)÷3=4,000万円

ただし、複数業種で経審を受ける場合、選択した平均年数はすべての業種に適用されます。業種ごとに都合の良い方を選ぶことはできないため、事前のシミュレーションが重要です。

5. 完成工事高の業種間振替の活用

X1点の点数アップの手段として「完成工事高の業種間振替」という制度があります。これは、特定の専門工事の実績を、関連する別の業種に合算して申請するテクニックです。例えば、とび・舗装工事の完成工事高を土木一式工事に振り替えることで、土木一式工事の完成工事高が増え、点数アップが期待できます。

一式工事への振替例

  • 土木一式工事 ← とび・土工、石、鋼構造物、舗装、しゅんせつ、塗装、水道施設、解体
  • 建築一式工事←大工、左官、とび・土工、石、屋根、タイル・れんが・ブロック

専門工事間の振替例

  • とび・土工 ⇔ 石、舗装、造園、さく井、解体
  • 板金 ⇔ 屋根

振替可能な業種は国や自治体によって細かな決まりがあるため確認が必要です。

また、注意点として、振替元の業種では経審を受けることができなくなります。振替は例えば「舗装工事」の売上を、すべて「土木一式工事」の売上として合算するという手続きです。舗装工事としての実績はゼロとして扱われるため、その年は舗装工事単独での申請はできません。

6. 財務体質の改善

Y点は会社の財務健全性を示す指標であり、向上には中長期的な経営改善が必要です。

改善策詳細
自己資本比率の向上借入金の繰上返済、支払利息も減らす
利益率の向上受注単価の見直し、原価管理を徹底する
不要な資産の処分遊休資産を売却して固定資産を減らす

また、経費は可能な限り「原価」ではなく「一般管理費」に計上し、売上総利益率を上げるなど、決算書の作成においても工夫が可能です。

7. CCUS・ISO・えるぼし/くるみん認定の取得

近年の経審改正で、以下の取り組みが新たな加点対象となっています。

カテゴリ取り組み内容加点
CCUS(建設キャリアアップシステム)全ての公共工事で活用
民間工事含む全ての工事で活用
+10点
+15点
ワーク・ライフ・バランス認定えるぼし認定(3段階目以上)
くるみん認定
ユースエール認定
+5点
+5点
+5点
ISO・エコアクション21ISO9001登録
ISO14001登録
エコアクション21認証
+5点
+5点
+3点

特にCCUSは国があらゆる工事における完全実施を目指しており、今後加点が拡大される可能性があります。

2026年の経審改正情報

1.「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」の加点(令和8年7月1日施行予定)

2026年7月1日施行予定の改正では、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」(愛称:職人いきいき宣言)が新たな加点対象となります。ポータルサイトでの申請受付は2025年12月12日から開始されています。

自主宣言の取組項目

  • 労務費の確保・賃金の支払い
  • CCUS(建設キャリアアップシステム)の活用
  • 宣言企業との取引優先

W点で+5点の加点が見込まれています。加点を受けるには、「審査基準日が宣言日以降であり、宣言書と誓約書が提出されていること」が条件となる予定です。

2. 社会保険未加入に関する減点項目の削除(令和8年7月1日施行予定)

2020年10月の建設業法改正により、建設業許可の取得・更新要件に社会保険への加入が追加されました。建設業許可の更新期間は5年であるため、2025年10月以降に建設業許可を保有している業者は、社会保険加入要件を当然に満たしていることになります。

このため、経審における社会保険未加入の減点項目が削除される見込みです。

3. CCUSの配点見直し(令和8年7月1日施行予定)

自主宣言制度の導入に伴い、CCUSの配点も見直される予定です。

項目改正前改正後
CCUSの活用(最大)+15点+10点
自主宣言+5点
合計(最大)+15点+15点

CCUSと自主宣言をセットで考えることで、最大15点の加点を維持できます。

経審でよくある失敗と注意点

1. 消費税の税抜・税込の間違い

経審を受ける場合、工事経歴書・財務諸表・工事施工金額はすべて消費税抜きで作成する必要があります。消費税込みで作成すると、申請のやり直しになります。なお、インボイス登録事業者は消費税課税事業者となるため、必ず税抜金額での申請が必要です。

2. 工事経歴書と契約書の不一致

経審の際には、工事経歴書に記載された工事実績のうち、金額の大きい上位3件について、契約書等で確認が行われます。例えば以下のような不整合があると、受付不可)となり、修正後に再度提出が必要になります。

不整合の例

  • 工事経歴書と契約書の金額が一致しない
  • 工事名や工期が異なる
  • 裏付け資料が用意できない

3. 審査基準日までに加入・認定が間に合わない

W点の加点項目は、審査基準日(決算日)時点で加入・認定されている必要があります。決算月の直前になって慌てて対応しようとしても間に合わないことが多いため、年間を通じた計画的な対応が求められます。

経審対策におすすめの業務管理システム

経審の書類作成において、数字のズレや不整合は命取りです。審査で指摘・差し戻しが発生すると、企業は次のようなリスクを抱えることになります。

リスク内容影響
入札の機会損失書類の記載ミスや添付漏れにより、本審査で指摘・差戻しが発生公共工事の入札参加資格の申請期限に間に合わなくなる可能性
1年間のペナルティ状態経審は年1回のみのため、申請ミスによる低評価が次回まで続く翌年まで不利なランクで戦わなければならない。

経審の点数アップやスムーズな申請手続きには、日々の業務データを正確に蓄積し、管理する仕組みが欠かせません。

建設業に特化した業務管理システムのプロワン

業務管理ができる「プロワン」

プロワンは建設業に特化した業務管理システムです。営業から施工、保守、請求、入金までの一連の業務プロセスを1つのプラットフォームで管理できます。

機能利用シーン
工事台帳・原価管理工事ごとの収支がリアルタイムで把握でき、完成工事高の集計も容易
顧客・案件管理案件情報が一元管理されているため、工事経歴書の作成がスムーズ
請求・入金管理キャッシュフローの見える化により、財務状況の改善につなげられる

経審対策に苦労する原因は、情報がバラバラで見えない状態にあることです。日常業務で自然とデータが蓄積される仕組みを作れば、経審準備の負担を大きく減らせます。

経審に関するよくある質問

── 経審にかかる費用は?

主な費用は以下3つです。

経審にかかる主な費用

  • 経営状況分析手数料(8,000円〜14,000円程度)
  • 経営規模等評価申請手数料(1万1,000円+2,500円×業種数)
  • 行政書士報酬(依頼する場合。一式で10万〜15万円程度)

業種数が多いほど手数料も高くなります。

── 経審の申請を自分でできる?

可能ですが、申請書類の作成や裏付け資料の準備には専門知識と時間が必要です。以下の場合は行政書士に依頼することをおすすめします。

行政書士への依頼がおすすめのケース

  • 初めて経審を受ける
  • 本業に集中したい
  • 再提出やミスのリスクは排除したい

毎年の経審に慣れてきたら、自社で対応する会社もあります。

── 決算後にできる経審対策は?

経審の評価は「審査基準日(決算日)時点」の状況で判断されます。決算期を過ぎてからでは、その年度の経審に反映させることはできません。ただし、次年度の経審に向けて今から準備を始めることは非常に有効です。年間を通じた計画的な取り組みが重要です。

── 複数の業種で経審を受ける際の注意点は?

以下の3点に注意が必要です。

1. 建設業許可を取得していること

経審は建設業許可を受けている業種でのみ申請ができます。例えば「土木」と「舗装」の2業種で経審を受けたい場合、両方の建設業許可を取得していなければなりません。

2. 完成工事高を業種ごとに区分

会社全体の売上をまとめて申請するのではなく、「この工事は土木」「この工事は舗装」と、完成工事高を業種ごとに分けて計上する必要があります。区分が曖昧だと、虚偽申請を疑われる原因になりかねません。

3. 技術職員は「1人につき最大2業種まで」

経審でカウントできるのは1人につき最大2業種までと決められています。例えば土木・舗装・水道の3業種で経審を受けたい場合、1人の技術者を3業種すべての加点に使うことはできません。

── 経審の点数はどこで確認できる?

経審の結果(総合評定値通知書)は、一般財団法人建設業情報管理センター(CIIC)の「経営事項審査結果公表システム」で誰でも閲覧できます。自社だけでなく、競合他社の点数や内訳も確認可能なため、ベンチマークとして活用できます。

中野貴利人

株式会社ミツモアのマーケティング本部SaaSビジネス部所属。現場向けの業務支援システム「プロワン」のAIコンテンツマーケティングを担当。建設、設備工事、ビルメンテナンス、リフォームなど、現場業界に向けたお役立ち情報を制作。著書5冊。

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