「AIツールを導入したいけど、費用が…」
「AI補助金は種類が多くて、わからない」
そこでAI導入補助金の診断ツールから、補助金全7種の比較表、IT導入補助金に代わる「デジタル化・AI導入補助金」、おすすめの補助金や融資まで、お得になる補助金の申請方法を一緒に見てみましょう。
CONTENTS
AI導入補助金のおすすめ診断ツール
目的によって利用できる補助金が異なります。以下のチェックリストで最適な「補助金名、補助上限額、補助率、申請難易度」を確認してみましょう。
| 質問 | はい | いいえ |
|---|---|---|
| 既製のAIツールを導入したい 自社専用のシステム開発ではなく、市販のツールを使う |
||
| AIロボットや機器を導入したい 配膳ロボット、清掃ロボット、自動搬送機など |
||
| 新しい事業分野に挑戦したい 既存事業の改善ではなく、新規事業の立ち上げ |
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| 投資額は1億円を超える予定である 大規模なシステム構築や設備投資を計画している |
※ 実際の計算結果は条件によって異なる場合があります。本計算結果はあくまでも目安としてご利用ください。
AI導入補助金の全7種比較表
全体像を把握するために、AI導入に関する主要な7つの補助金と制度について、その特徴を比較表にまとめました。
| 名称 | 補助上限額 | 補助率 | 申請難易度 | 主な対象 | おすすめ対象者 |
|---|---|---|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金 | 450万円 | 1/2〜4/5 | ★☆☆ | SaaS・パッケージソフト導入 | 既製のAIツールを手軽に導入したい |
| ものづくり補助金 | 1億円 | 1/2〜2/3 | ★★★ | 独自AIシステム開発 | 自社専用のAIシステムを開発したい |
| 省力化投資補助金 | 1億円 | 1/2〜2/3 | ★★☆ | AI機器・省人化設備 | AIロボットで省人化を進めたい |
| 新規事業進出補助金 | 9,000万円 | 1/2〜2/3 | ★★★ | 新規事業・業態転換 | AIで新規事業に挑戦したい |
| 小規模事業者持続化補助金 | 200万円 | 2/3〜3/4 | ★☆☆ | 販路開拓・小規模AI活用 | 小規模なAI活用から始めたい |
| 事業承継・M&A補助金 | 800万円 | 1/2〜2/3 | ★★☆ | 事業承継時のAI投資 | 事業を引き継ぐときにAI化を進めたい |
| IT活用促進資金 | 7億2,000万円 | 融資 | ★★☆ | 大規模AI投資の資金調達 | 低金利で早めに資金を借りたい |
※ 2025年12月時点
重要な点は「補助額の高さ」と「申請難易度」は比例する傾向にあるということです。最大1億円の補助金は魅力的ですが、独自のシステム開発が必要でハードルも高くなります。一方で、既存のAIツールを活用したい場合は、★が少ない「デジタル化・AI導入補助金」などが狙い目です。
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)

従来の「IT導入補助金」が「デジタル化・AI導入補助金」へとリニューアルされました。生成AIツールやAIチャットボット、AI-OCRなど、幅広いAIサービスの導入に活用できる最も手軽な補助金です。
中小企業のAI導入率が約5%である現状を打破するため、国が後押しする仕組みの一環であり、経済産業省「令和7年度補正予算案の事業概要」では3,400億円が盛り込まれています。2025年12月時点の枠組みは以下の通りです。
| 枠組み | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 通常枠(A類型) | 150万円未満 | 1/2 |
| 通常枠(B類型) | 450万円以下 | 1/2 |
| インボイス枠 | 50万円以下 | 2/3〜4/5 |
| セキュリティ対策推進枠 | 100万円 | 1/2 |
| 複数社連携IT導入枠 | 最大3,000万円 | 変動 |
対象経費
- ソフトウェア購入費
- クラウド利用料(最大2年分)
- 導入関連費
対象企業
- 既存の業務効率化ツールを導入したい
- AIチャットボットで顧客対応を自動化したい
- AI-OCRで帳票入力を効率化したい
- 初めての補助金申請で、手軽に始めたい
公募スケジュールは、約1ヶ月に1度のペースで組まれています。例えば、2025年度第8次は公募締切日が2026年1月7日、交付決定日が2026年2月17日です。また、2025年12月時点ではIT導入補助金が継続中であり、AI導入補助金の申し込みは開始していません。
また、注意点としては、事前に登録されたITツールのみが補助対象となることです。導入したいAIツールが登録リストに含まれているか、事前に確認しましょう。申請はITベンダーと共同で進めるため、書類作成の負担が少ないことが特徴です。
IT導入補助金2025|独立行政法人中小企業基盤整備機構
※ 2025年12月時点
AI導入時に使える補助金5種
1. ものづくり補助金

製品やサービスの開発、生産プロセスの改善を目指す中小企業向けの大型補助金です。AIを活用した品質検査システムの構築、生産管理の自動化、新たなビジネスモデルの開発など、戦略的なAI活用に適しています。
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)との大きな違いは、オーダーメイドのAIシステム開発も対象となる点です。
| 枠組み | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 製品・サービス高付加価値化枠(DX類型) | 最大2,500万円 | 1/2(小規模は2/3) |
| 省力化(オーダーメイド)枠 | 最大8,000万円 | 1/2〜2/3 |
| 大幅賃上げ特例適用時 | 最大1億円 | 同上 |
対象経費
- 機械装置費
- システム構築費(外注費)
- クラウドサービス利用費
- 技術導入費
- 専門家経費
対象企業
- 自社専用のAIシステムをゼロから開発したい
- AI画像認識による品質検査システムを構築したい
- 独自の需要予測エンジンを開発したい
- 競合との差別化につながる高度なAI活用を目指している
公募スケジュールは、1~3ヶ月に1度のペースで組まれています。例えば、第22次は公募締切日が2026年1月30日、採択発表日が2026年4月下旬です。
また、採択を勝ち取るには単に「AIを導入します」では不十分であり、どのような技術的課題をどのようなアプローチで解決し、どれだけの付加価値を生むのかを論理的に説明する必要があります。
ものづくり補助金|全国中小企業団体中央会
※ 2025年12月時点
2. 省力化投資補助金

2025年度に本格稼働した制度です。人手不足を解消するために、AIやロボットの導入を強力に推進します。枠組みは「カタログ型」と「一般型」の2種類があります。
カタログ型は、中小企業庁が整備したカタログに掲載された製品を選ぶだけで申請できます。AI搭載の清掃ロボット、配膳ロボット、自動精算機などの導入に最適です。一般型は、カタログにない機械装置費、システム構築費、建物費・構築物費など、オーダーメイドの省力化投資を支援します。
| 枠組み | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|
| カタログ型 | 最大1,500万円 | 1/2 |
| 一般型 | 最大1億円 | 1/2〜2/3 |
対象経費
- 清掃ロボット
- 配膳ロボット
- 自動精算機
- 機械装置費
- システム構築費
- 建物費・構築物費
対象企業
- AIロボット(清掃・配膳・搬送)を導入したい
- 工場・倉庫の無人化・省人化を進めたい
- AI制御による自動化ラインを構築したい
公募スケジュールは、約1ヶ月に1度のペースで組まれています。例えば、第4次は公募締切日が2025年11月27日、採択発表日が2026年3月中旬です。
また、省力化投資補助金の一般型は「建物費」も対象となる点が、ものづくり補助金との大きな違いです。AI制御による無人倉庫の建設といった大規模プロジェクトも可能になります。
省力化投資補助金|中小企業省
※ 2025年12月時点
3. 新規事業進出補助金

既存事業から新分野への転換や事業の多角化を支援します。AIを活用した新規事業の立ち上げ、ビジネスモデルの抜本的な転換など、企業の大胆な挑戦を後押ししてくれるでしょう。
AI活用シナリオ例としては、「印刷業が、生成AIを活用したデジタルマーケティング支援事業に参入する」や「タクシー会社が、AI配車システムを自社開発し、SaaS事業として外販する」などがあります。
| 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|
| 最大6,000万〜9,000万円 | 1/2〜2/3 |
対象経費
- 機械装置費
- システム構築費
- 建物費
- 広告宣伝費
- 研修費
対象企業
- AIを核とした新規事業に挑戦したい
- 従来型ビジネスからAI活用サービスへ転換したい
- 異業種への参入を検討している
公募スケジュールは、約3ヶ月に1度のペースで組まれています。例えば、第2次は公募締切日が2025年12月19日、採択発表日が2026年3月下旬です。
補助額が大きい分、審査も厳格です。市場分析、競合分析、収支計画など、新規事業の成功可能性を多角的に検証した資料の提出が求められます。
新規事業進出補助金|独立行政法人中小企業基盤整備機構
※ 2025年12月時点
4. 小規模事業者持続化補助金

従業員20名以下(サービス業は5名以下)の小規模事業者が、販路開拓や業務効率化に取り組む際に使える補助金です。比較的小規模なAI活用に適しています。
| 枠組み | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 50万円 | 2/3〜3/4 |
| 賃金引上げ枠 | 200万円 | 2/3〜3/4 |
| 卒業枠 | 200万円 | 2/3 |
| 後継者支援枠 | 200万円 | 2/3 |
| 創業枠 | 200万円 | 2/3 |
対象経費
- 機械装置費
- システム構築費
- 建物費
- 広告宣伝費
- 研修費
対象企業
- 店舗でのAI接客ツールを導入したい
- AIを活用したWebマーケティングに取り組みたい
- 小規模なAI活用から始めてみたい
公募スケジュールは、5~6ヶ月に1度のペースで組まれています。例えば、第19回は公募締切日が2026年6月予定、採択発表日が未定です。
小規模事業者持続化補助金|全国商工会連合会
※ 2025年12月時点
5. 事業承継・M&A補助金

事業承継やM&Aを契機とした新しい取り組みを支援する補助金で、そのタイミングであればAI導入も支援対象になります。
| 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|
| 最大800万円程度 | 1/2〜2/3 |
対象企業
- 事業承継を機にAI導入で業務を刷新したい
- M&A後の統合過程でシステムをAI化したい
公募スケジュールは、約2ヶ月に1度のペースで組まれています。例えば、第13次は公募締切日が2025年11月28日、採択発表日が順次公開です。
事業承継・M&A補助金
※ 2025年12月時点
AI導入時に使える融資1種
1. IT活用促進資金

補助金ではありませんが、日本政策金融公庫によるAI活用のための有利な条件で融資を受けられる制度です。補助金だけではカバーしきれない大規模な資金調達が必要な場合に有効です。
| 枠組み | 補助上限額 |
|---|---|
| 直接貸付 | 最大7億2,000万円 |
| 代理貸付 | 最大1億2,000万円 |
対象経費
- AIツール・ITツール
- システム構築費
- ロボット導入費
対象企業
- 補助金の上限を超える大規模なAI投資を計画している
- 補助金申請のタイミングが合わず、先に資金調達したい
- 複数年にわたるAI導入プロジェクトの資金を確保したい
IT活用促進資金|日本政策金融公庫
AI導入補助金の申請時にやることリスト
STEP1. 情報を集めて、補助金を選ぶ
導入目的と規模に応じて最適な補助金を選びましょう。
- 各補助金の公募要領を中小企業庁公式サイトからダウンロードする
- 申請要件、対象経費、審査基準を詳細に確認する
- 対象外経費の項目を特に確認する
- 導入したいAIツール・サービスを選定する
- IT導入補助金の場合、登録ベンダーリストで対象ツールか確認する
- 自治体独自の補助金制度も確認(東京都など上乗せ支援あり)する
STEP2. 事業計画を策定し、書類を準備する
事業計画書で最も重要なのは、現状の課題と「AI導入による解決策」の論理的なつながりです。例えば「対応時間○時間削減」や「コスト○%削減」のように具体的な数値で改善効果を示しましょう。
- 現状の課題とAI導入による解決策を明確にする
- 定量的な改善効果を試算する
- 決算書(直近2期分)を準備する
- 履歴事項全部証明書(3ヶ月以内)を取得する
- 納税証明書を取得する
- 見積書を複数社(3社以上推奨)から取得する
- 導入スケジュール表を作成する
- 費用対効果の試算表を作成する
- 賃上げ計画(補助率優遇の要件)を策定する
STEP3. 申請をして、採択されるまで待つ
注意点としては、交付決定前に発注や契約した経費は補助対象外です。補助金は原則として後払いであり、つなぎ融資の検討する方法もあります。
- GビズIDプライムアカウントを取得する(発行に1〜2週間かかる)
- 電子申請システム(jGrants)で申請書を提出する
- 採択通知を受け取る
- 交付申請を提出する(採択から1ヶ月以内)
- 交付決定通知を受け取ってから事業を開始する
- 領収書・納品書などの証憑類を確実に保管する
- 実績報告を提出する
- 補助金の入金を確認する
AI導入補助金でよくある質問
──どんなAIツールが補助対象?
各制度の目的に合致し、生産性向上に寄与するものであれば幅広く認められています。
主な対象AIツール
- 生成AI活用ツール(業務効率化ツール)
- AIライティングアシスタント
- AI画像認識(品質検査、外観検査)
- AI-OCR(手書き文字や帳票をデータ化)
- 音声認識AI(議事録自動作成、コールセンター支援)
- AIチャットボット(顧客対応の自動化)
- AI搭載CRM(顧客行動分析、営業支援)
- 需要予測AI(在庫最適化、発注自動化)
──申請すれば必ず採択される?
残念ながら、申請すれば必ず採択されるわけではありません。各補助金には採択率があり、競争的に審査されます。
| 補助金名 | 平均採択率 | 採択のポイント |
|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金 | 約50〜60% | ITベンダーとの連携、具体的な導入計画 |
| ものづくり補助金 | 約40〜50% | 革新性の明確化、収益計画の妥当性 |
| 新規事業進出補助金 | 約30〜40% | 市場分析の深さ、事業の実現可能性 |
採択率を高めるためには、技術面の革新性と事業化面の妥当性、政策面での加点要素をバランスよく盛り込む必要があります。不採択となった場合でも、多くの補助金は年に複数回の公募があり、不採択理由を改善すれば、次回の採択可能性は高まります。
──申請代行は利用したほうがいい?
自社の状況と補助金の難易度を考慮して判断しましょう。
申請代行を利用すべきケース
- 初めての補助金申請で、何から手を付けていいかわからない
- 申請書作成に充てる時間が確保できない
- 高額な補助金(ものづくり補助金、新規事業進出補助金)を狙っている
- 過去に不採択となり、専門的なアドバイスが欲しい
逆に申請代行が不要なケースは「補助金申請は、ITベンダーがサポートしてくれる」や「補助金額が小さく、代行費用の費用対効果が見合わない」場合です。また、申請代行の費用は、成功報酬型で補助金額の15〜20%が一般的です。
──複数の補助金を組み合わせられる?
はい、段階的に複数の補助金を活用する戦略は有効です。
- デジタル化・AI導入補助金で基盤となるAIツールを導入する
- 効果を確認した上で、ものづくり補助金で本格的なシステム構築に着手する
国の補助金と自治体の上乗せ支援を組み合わせることで、自己負担をさらに軽減できる場合があります。例えば、東京都港区では、ものづくり補助金の自己負担分に対して最大100万円の上乗せ補助ができます。
──補助金を活用しないリスクは?
補助金を活用せずAI導入を先送りすることには、競合との生産性格差の拡大するリスクがあります。例えば「AI-OCRを導入した企業はデータ入力コストを月40万円削減」や「需要予測AIで在庫管理コストを月25万円削減」といった事例の通りです。
AI導入企業が低価格で製品やサービスを提供できる中で、自社が価格競争で不利になることは問題になります。
