脱Officeとは?マイクロソフト製品を切り替えた事例と導入手順

「どれが最新のファイルかわからない…」
「ライセンス更新料は安くならない?」

脱Officeとは、単にOfficeを別のツールに切り替えることではありません。コストを削減しながら生産性を改善し、企業の競争力を向上させる変革です。そこで具体的なコスト削減効果から、他社の成功事例、失敗しない導入ステップ、最適な代替ツールの選定ポイントまでを紐解いていきましょう。

脱Officeとは?実現できること

1. ライセンス費用の削減ができる

Microsoft Office 365のライセンス費用は、企業規模によっては年間数百万円から数千万円に達します。例えば、従業員100名の企業の場合、Office 365のBusiness Standardプランでは、1ユーザーあたり月額1,874円、年間約225万円のコストが発生します。

プラン月間年間
Office 365 Business Basic899円10,788円
Office 365 Business Standard1,874円22,488円
Office 365 Business Premium3,298円39,576円

※ 2025年10月時点

仮にMicrosoft Office Google Workspaceに切り替えると、それよりも割安になります。LibreOfficeのようなオープンソースソフトウェアを選択すれば、ライセンス費用は完全に無料となります。

2. 共同作業でチームの生産性が上がる

従来のOffice環境では、「最終版_修正版3_確定.docx」のような命名規則によって、ファイルのバージョン管理を複雑にしてきました。それがリアルタイム共同編集機能により、複数のメンバーが同時に1つのドキュメントを編集できるようになります。

項目Officeのみの作業新しい作業フロー
ファイル編集作業者のみ複数メンバーで同時編集
ファイル共有メールに添付して送信URL(リンク)を共有
バージョン管理ファイル名で管理自動で変更履歴を保存
レビュー個別に集計リアルタイムのコメント機能
修正版統合各メンバーが手作業で統合同時編集
データ保存手動保存が基本自動保存
アクセス場所社内の特定PCいつでも・どこでも
ファイル検索自分のPC内クラウドで本文も含めて検索
確認・承認最終版をメールで送り、承認待ち承認者がその場で確認・承認

3. セキュリティ強化と柔軟な働き方ができる

クラウドは「セキュリティが不安」という声をよく聞きますが、実際には適切に管理されたクラウドサービスのほうが、オンプレミス環境よりもセキュアであるケースが増えています。

クラウドサービスのセキュリティ強化

  • 多要素認証(MFA)による不正アクセス防止
  • 自動バックアップと災害復旧機能
  • 暗号化通信による情報漏洩対策
  • AIを活用した脅威検知システム
  • 細かな権限管理による内部統制強化

また、場所や時間に縛られない柔軟な働き方の実現できるでしょう。リモートワークが当たり前であるため、どこからでも安全にアクセスできる環境は、優秀な人材の獲得にも直結します。

脱Officeすべき診断チェックリスト

自社がどの程度Officeに依存しているか、客観的に把握することが脱Officeの第一歩です。以下のチェックリストで、現在の紙依存度を確認してみましょう。

診断項目 深刻度・理由
年間のOfficeライセンス費用が売上の0.5%以上を占めている (収益の圧迫・コスト最適化の余地大)
使用していないライセンスが全体の20%以上ある (明確な無駄コストの発生)
バージョンアップのたびに追加費用が発生している (予測しづらい突発的コスト)
IT予算の30%以上がOffice関連費用である (IT投資の硬直化・戦略的投資の不足)
ライセンス管理に専任者を配置している (過大な管理コスト、業務の非効率)
ファイルのバージョン管理で混乱が月1回以上発生する (手戻りの発生、ミスの誘発)
共同作業時にメールでのファイル送受信が日常的 (ファイルの先祖返り、修正漏れ)
最新ファイルの所在確認に10分以上かかることがある (業務の中断、生産性の低下)
リモートワーク時にVPN接続が必須となっている (接続の煩雑さ、通信速度の低下)
モバイル端末からの作業に制限がある (営業や現場の機動力低下)
ランサムウェア対策が不十分だと感じる (事業停止リスク、深刻なデータ被害)
データのバックアップが手動または不定期 (データ消失時の復旧不可リスク)
退職者のアカウント削除が遅れがち (不正アクセス、情報漏洩の温床)
外部共有の管理が困難 (機密情報の意図しない流出)
監査ログの取得・分析ができていない (問題発生時の原因究明が困難)
合計 0 点

スコア10~19点は危険度「中」で、部分的な移行から始めることで、大きな効果が期待できます。スコア20点以上は危険度「高」で、脱Officeによる改善効果が非常に高く、早急な検討をおすすめします。

脱Officeの企業事例3選

CASE1. 住宅設備機器卸売におけるサンセキ株式会社の事例

サンセキ株式会社
サンセキ株式会社

住宅設備機器の卸売と施工を手掛けるサンセキ株式会社は、業務管理システムを導入することで、従来のExcel中心の業務体制から脱却し、属人化していた業務プロセスの標準化と効率化を実現しました。これにより、複雑化していた業務フローをシンプルにし、社員の定着率向上と事業拡大の基盤を構築しています。

特徴活用方法効果
見積書一元管理Excel手入力からシステム化へ移行作成工数の大幅削減と標準化を実現
発注書統合処理FAX送信から電子化への転換印刷・送信作業の完全デジタル化
データ保存体系iCloud個別管理から統一システムへ命名規則統一で書類検索時間を削減
業務フロー可視化全工程をシステム上で管理属人化解消により引き継ぎが容易に

同社では、見積書作成から発注処理まで、従来Excel・印刷・FAXでしていた一連の業務をプロワンに集約することで、担当者不在時でも業務が停滞しない体制を確立しました。今後は経理部門も含めた請求・入金管理までシステム化を拡大し、売上や利益率などのデータ分析による経営判断の高度化を目指しています。

住宅設備機器卸売事業の変革事例

  • Excel手入力による見積書作成から完全システム化への移行により作業時間を削減
  • iCloud上の個別フォルダ管理から統一プラットフォームへの転換で情報共有を効率化
  • FAX送信していた発注業務の電子化により、印刷・送信の手間を完全排除
  • 業務フローのシンプル化により新入社員の早期戦力化と定着率向上を実現

プロワン「サンセキ株式会社」

CASE2. 電気・空調設備工事におけるSuemaru FT INNOVATORS株式会社の事例

Suemaru FT INNOVATORS
Suemaru FT INNOVATORS株式会社

電気・空調設備工事から空間デザイン・ITソリューションへと事業を拡大するSuemaru FT INNOVATORS株式会社は、業務管理システムの導入により、従来のExcel中心の属人的な管理体制から脱却し、案件管理から請求までの業務プロセスを統合システムへ移行することで、情報の一元化と業務の標準化を実現しました。

特徴活用方法効果
統合案件管理個別Excel管理から一元システムへ移行情報の連携不足を解消し業務効率化
見積もり作成機能Excel手作業から自動化システムへ転換作成時間短縮と精度向上を実現
請求・発注連携分散ファイルから統合プラットフォームへ発注漏れ・請求漏れの発生を防止
協力会社管理担当者別Excel管理から標準化システムへ約100社の協力会社情報を体系化

同社では、従来各担当者が個別のExcelファイルで管理していた案件・見積もり・請求・発注を業務管理システムに統合することで発注漏れや請求漏れといったミスを大幅に削減しました。千葉・東京・大阪の3拠点で展開する営業活動においても、情報共有の円滑化により組織全体の生産性向上を達成しています。

電気・空調設備工事事業の変革事例

  • 案件ごとに分散していたExcelファイルを廃止し、統合システムで全案件を一元管理
  • 見積もり・請求・発注の各Excel業務を連携システムへ移行し、データの整合性を確保
  • 担当者依存の属人的なExcel運用から脱却し、標準化された業務フローを確立
  • 売上の9割を占める協力会社管理をExcelからシステム化し、判断基準を平準化

プロワン「Suemaru FT INNOVATORS株式会社

CASE3. 清掃・維持管理における大芝水工株式会社の事例

大芝水工株式会社
大芝水工株式会社

創業40年以上の歴史を持つ大芝水工株式会社は、プロワンの導入により、紙・Excel・ホワイトボードを中心とした属人的な案件管理体制から脱却し、月100件超の案件を統合システムで一元管理することで、業務の標準化と情報共有の効率化を実現しました。

特徴活用方法効果
カレンダー案件管理紙・ホワイトボードから電子カレンダーへ移行視覚的な状況把握で抜け漏れを防止
見積もり書デジタル化個別Excel管理から統合システムへ転換検索時間短縮と作成効率の向上
定期案件自動管理手作業登録から自動化システムへ移行毎月の登録作業時間を大幅削減
顧客情報一元化フォルダ分散管理からデータベース化作業履歴の即座確認が可能に

同社では、従来1人の担当者の頭の中だけで管理していた月100件超の案件を、プロワンによるシステム化で全社員が共有できる体制に転換し、繁忙期には月150件の案件にも対応可能となりました。6年前の月20件から大幅に成長した事業規模においても、システム導入により安定的な業務運営を実現しています。

清掃・維持管理事業の変革事例

  • 紙への手書きと修正テープでの日程管理から、ドラッグ&ドロップでの電子管理へ移行
  • ホワイトボード・Excel・チャットツールの分散管理から統合プラットフォームへ一元化
  • 個別LINEでの現場割り当て連絡から、システム上での自動共有体制へ転換
  • Excel個別ファイルでの見積もり管理から、データベース化による検索可能な仕組みへ変革

プロワン「大芝水工株式会社」

脱Officeを成功させる3ステップ

STEP1. 現状課題の可視化する

最初に現状課題を分析しましょう。特に「①ライセンス使用状況、②機能別利用頻度、③ファイル共有にかかる時間、④トラブル件数、⑤生産性低下率」はよく問題視されます。例えば、②機能別利用頻度であれば、アンケートやログ分析に把握できるでしょう。

次にそのデータを使ってSMARTをベースして、目標を設定します。

SMART目標例
Specific(具体的)単なる「コスト削減」ではなく「年間ライセンス費用を50%削減」とする
Measurable(測定可能)単なる「効率化」ではなく「文書作成時間を30%短縮」とする
Achievable(達成可能)現実的な目標値を設定する
Relevant(関連性)企業の経営戦略と整合性を持たせる
Time-bound(期限)明確に「1年以内に達成」など期限を区切る

STEP2. 最適なツールの選定する

ツールは単純な機能比較ではなく、自社の業務特性を加味した判断が必要です。評価項目では「①導入コスト、②学習コスト、③共同作業機能」あたりはどの企業も重視します。さらに「④オフライン対応、⑤カスタマイズ性、⑥サポート体制」を考慮することもあります。

試験導入では、5~10名などのパイロットチームで1ヶ月程度「タスク完了時間の変化、エラー発生率、ユーザー満足度」などを検証しましょう。このときの振り返りではITリテラシーの高い若手社員だけでなく、ベテラン社員の改善要望も取り入れることで、全社展開時の課題を事前に把握できます。

STEP3. 全社展開と効果測定のサイクル

試験導入の結果を踏まえ、いよいよ全社展開へと進みます。ここで重要なことは、一気に切り替えるのではなく、段階的に移行することです。例えば「1~2ヶ月目はメール・カレンダー・ビデオ会議の移行」「3~4ヶ月目は文書作成と表計算ツールの移行」「5~6ヶ月目は専門的なツール・マクロの移行」とします。

各フェーズでは、以下の支援体制を整備すると、社内の反発が少ないです。

サポート体制の構築

  • ヘルプデスクの設置(最初の3ヶ月は常駐、その後は随時対応)
  • FAQドキュメントの整備と定期更新
  • 部門別研修の実施(各部門の業務に特化した内容)
  • チャンピオンユーザー制度(各部門に1~2名の推進役を配置)

このあとも定性的なフィードバックを収集し、現場の声を聞くことで「数字には表れない改善点」や「新たな活用方法が発見される」ことも多いです。

脱Officeにおすすめの代替サービス

多くの企業で採用実績があり、高い効果が実証されている代替サービスの比較表です。

評価項目導入コスト学習コスト共同作業オフライン対応カスタマイズ性サポート体制
Google Workspace優秀可能充実
LibreOffice限定的完全対応コミュニティ
Notion優秀限定的標準

1. 共同作業の最適解であるGoogle Workspace

Google Workspace

Google Workspaceは、世界で30億人以上が利用するGoogleのクラウドサービスを企業向けに最適化したソリューションです。特に共同作業においては、他の追随を許さない完成度を誇ります。

アプリ名詳細
GmailAIによるスパムフィルタで99.9%の精度
Google Drive容量無制限プランあり(Business Plus以上)
Google DocsGoogle Workspace版のWord
Google SheetsGoogle Workspace版のExcel
Google SlidesGoogle Workspace版のPowerPoint
Google Meet最大500名まで参加可能なビデオ会議
Google ChatSlackの代わりとなるビジネスチャット

最大の強みは、すべての機能がシームレスに連携することです。例えば、Gmailで受信した添付ファイルをワンクリックでDriveに保存し、そのままDocsで編集を開始できます。この統合性により、作業の流れが途切れることなく、生産性が大幅に向上します。

導入企業の声として、「Microsoft Officeからの移行は想像以上にスムーズだった」という評価が多く聞かれます。互換性も年々向上しており、複雑なマクロを使用していない限り、ほとんどのファイルは問題なく移行できます。

プラン別の金額比較表は次の通りです。

プランOffice 365Google Business
Basic / Starter899円800円
Standard1,874円1,600円
Premium / Plus3,298円2,500円

※ 2025年10月

2. 無料の高互換性で人気のLibreOffice

LibreOffice

LibreOfficeは、完全無料で商用利用も可能なオープンソースのオフィススイートです。The Document Foundationが開発を主導し、世界中のボランティア開発者によって日々改良が続けられています。

構成アプリケーション別のMicrosoft Officeとの互換性は、次の通りです。

アプリ名詳細
Writer(Word互換性)があり、.docx形式の読み書きに対応
Calc(Excel互換)ピボットテーブルやマクロ(Basic)に対応
Impress(PowerPoint互換)プレゼンテーション作成
Draw(Visio代替)図形描画とフローチャート作成
Base(Access互換)データベース管理
Math数式エディタ

LibreOfficeの最大の魅力は、ライセンス費用が一切かからないことです。10人のスタートアップでも、1,000人規模の企業でも、同じように無料で利用できます。さらに、オープンソースであるため、必要に応じてカスタマイズすることも可能です。

ただし、クラウド機能は標準では含まれていないため、NextcloudownCloudといったプライベートクラウドソリューションとの組み合わせが推奨されます。

3. 情報集約とタスク管理を1つになるNotion

Notion

Notionドキュメント作成、データベース、タスク管理、Wikiなど、業務に必要な機能を1つのプラットフォームに統合した革新的なツールです。

Notionが解決する課題

  • 情報の分散(各ツールに情報が散在する問題)
  • コンテキストスイッチング(ツール間の切り替えによる集中力の低下)
  • 知識の属人化(個人のローカルPCに重要情報が埋もれる)
  • プロジェクト管理の複雑化(ガントチャートとドキュメントが別管理)

Notionの真価は、すべての情報を関連付けて管理できる点にあります。例えば、プロジェクトの進捗管理ページから、関連する議事録、参考資料、タスクリストにシームレスにアクセスできます。これにより、情報を探す時間が劇的に削減され、本来の業務に集中できるようになります。

料金体系も柔軟で、個人利用は無料、チーム利用でも1ユーザーあたり月額8ドル(約1,200円)からと、Microsoft Officeと比較して非常にリーズナブルです。

サービス4. 現場仕事の効率を圧倒的に変えるシステム

プロワン
脱Office「プロワン」

プロワンは、営業・現場・経営に必要な全機能を1つのプラットフォームで提供し、Excel、Word、メールでの情報共有から脱却することで、一気通貫のデータ連携を実現します。

中野貴利人

株式会社ミツモア マーケティング本部所属。業務管理システム「プロワン」のコンテンツマーケティングを担当。建設、設備工事、ビルメンテナンス、リフォームなど、現場業界に向けたお役立ち情報を制作中。著書5冊。

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