「人工代の正しい計算方法がわからない…」
プロジェクト原価の60%近くを占める人工代。その算出方法が曖昧なままでは、会社の利益を損ないかねません。計算ツールから、すぐに使えるExcelテンプレート、基本となる計算式、陥りがちな3つのミスまで、人工計算の不安を解消する知識を網羅しました。
CONTENTS
人工代(にんくだい)の計算ツール
現場の人工代を職種別に計算できるようにしました。
職種別にあらかじめ入力されている数値は、国土交通省の公共工事設計労務単価(2025年3月版)と同じ数値を使用していますので、参考値としてお使いください。
※ 国土交通省「令和7年3月から適用する公共工事設計労務単価について」
※ 実際の計算結果は条件によって異なる場合があります。本計算結果はあくまでも目安としてご利用ください。
人工代が計算できるExcelテンプレート
現場管理費率の計算がExcelやスプレッドシートで簡単にできるテンプレートを用意しました。無料でダウンロードできて、すぐに使えます。

※ 実際の計算結果は条件によって異なる場合があります。Excelテンプレートはあくまでも目安としてご利用ください。
人工代・人工単価のわかりやすい計算式
人工代の計算方法
人工代の計算式は、数値を当てはめるだけで算出できます。最も基本的な計算式は次のとおりです。
人工代 = 人工単価 × 人数 × 日数
人工単価は各社で差がありますが、全国平均値(2025年3月時点)の次の通りです。
職種 | 全国平均値 | 2024年度比 |
特殊作業員 | 27,035円 | + 5.6 % |
普通作業員 | 22,938円 | + 5.3 % |
軽作業員 | 18,137円 | + 6.8 % |
とび工 | 29,748円 | + 4.8 % |
鉄筋工 | 30,071円 | + 5.9 % |
運転手(特殊) | 28,092円 | + 5.0 % |
運転手(一般) | 24,605円 | + 5.4 % |
型わく工 | 30,214円 | + 5.1 % |
大工 | 29,019円 | + 6.3 % |
左官 | 29,351円 | + 6.8 % |
交通誘導警備員A | 17,931円 | + 5.7 % |
交通誘導警備員B | 15,752円 | + 5.7 % |
※ 国土交通省「令和7年3月から適用する公共工事設計労務単価について」
人工単価の計算方法
自社で人工単価を計算するには、単純に給与を日数で割るのではなく、直接費、法定福利費、間接費を用いて算出します。
人工単価 = (直接費 + 法定福利費 + 間接費) ÷ 月間稼働日数 × 利益率
直接費は基本給、残業代、各種手当などです。法定福利費は会社が負担する健康保険、厚生年金、雇用保険などの社会保険料で、給与の15〜20%に相当することが多いです。間接費は人件費や事務所の賃料、水道光熱費などの按分であり、直接費の20〜50%を見込むケースが多いです。
例えば、大工1人の人工単価は「直接費45万円 + 社会保険料6万円 + 間接費9万円」で月60万円になりました。
項目 | 金額 | 計算式 |
---|---|---|
直接費 | 450,000円 | 基本給40万円+手当て5万円など |
社会保険料 | 60,000円 | 基本給×15% |
間接費 | 90,000円 | 直接費×20% |
合計 | 600,000円 | – |
月間20日稼働、利益率10%とすると、1人日の人工単価は「60万円 ÷ 20日間 × 110% = 33,000円」になります。
人工代の計算で陥りがちな3つのミス
1. 稼働率を100%で計算してしまう
人工代計算で最も陥りやすいミスが、すべての作業者の稼働率を100%で見積もってしまうことです。実際の現場やプロジェクトでは、会議への参加、報告書の作成、他工程との調整など、メインタスク以外の業務が必ず発生します。
実務における適正な稼働率の目安は、次の通りです。
現場仕事の職人や監督の稼働率
- 専任職人は80〜85%として、残りは準備、片付け、安全活動にする
- 応援職人は30〜50%のように、現場ごとに配分する
- 現場監督は20〜30%であり、管理業務が主体になる
プロジェクトメンバーの稼働率
- 専任メンバーは80〜85%として、残りは会議、教育、事務作業とする
- 兼任メンバーは30〜50%のように、プロジェクトごとに配分する
- 管理職は20〜30%であり、マネジメント業務が主体になる
2. 間接費や諸経費を見落としている
人工代の計算において、直接的な人件費だけを計上して間接費を見落とすケースも非常に多いです。1人あたりにかかるコストは、日当だけではありません。
見落としがちな間接費には、現場仕事の場合は「事務所の設置費、工具・重機のリース料、仮設電気・水道費、安全装備費、技能講習費用」などが含まれます。これらを適切に按分して人工代に反映させないと、実際のコストを20〜30%も過小評価してしまう可能性があります。
また、工事特有の経費も忘れてはいけません。資材運搬費、産業廃棄物処理費、特殊工具のレンタル料など、工事ごとに発生する変動費も人工代計算に組み込む必要があります。
3. スキルと単価設定が合っていない
3つ目の重要なポイントは、作業者のスキルレベルと人工単価の不一致です。新卒1年目と10年目のベテランでは、生産性に大きな差があります。スキルレベルに応じた適正な単価設定の例を見てみましょう。
スキルレベル | 経験年数 | 日額単価の目安 | 生産性指数 |
---|---|---|---|
ジュニア(見習い) | 1〜3年 | 20,000〜30,000円 | 0.6 |
ミドル(一人前) | 3〜7年 | 30,000〜45,000円 | 1.0 |
シニア(ベテラン) | 7年以上 | 45,000〜60,000円 | 1.5 |
エキスパート(職長) | 10年以上 | 60,000円〜 | 2.0 |
※ 生産性指数はミドルレベルの作業者を1.0とした場合の作業効率の目安
単価設定を誤ると、プロジェクトの収益性に直接的な影響を与えます。高スキル人材を低単価で見積もれば赤字リスクが高まり、逆に低スキル人材を高単価で見積もれば受注競争力を失います。
人工代計算を効率化するツール
Excelは人工代計算で広く使われますが、企業規模が大きくなると限界が生じます。最大の問題はデータの一元管理が難しい点です。部署ごとにファイルが乱立すると最新版の特定が困難になるでしょう。
同時編集ができないため作業に待ち時間が発生し、変更履歴や承認記録の管理も不十分で内部統制上の課題があります。さらに、ファイルは容易にコピーや外部送信が可能なため、機密情報である人件費データが漏洩するリスクも常に存在します。
Excel管理の限界を克服するために、プロジェクト管理ツールの導入を検討する企業が増えています。結果「リアルタイムでデータ共有、複数の担当者が同時に工数入力、在宅勤務や出張先からもアクセス、自動集計・分析、ワークフロー機能による申請・承認」が実現できます。

プロワンは、建設・設備工事・リフォーム・ビルメンテナンスなどの短・中期工事に特化した業務管理システムです。営業から施工・保守、請求・収支までの工程を1つのプラットフォームでつなぎ、現場起点のデータをリアルタイムに経営判断へ還元します。